7.異世界定番、手押しポンプ
文官がブラントンから12名やって来た。慎二くんの鑑定によれば、問題ない人達だそうだ。やっぱりブラントン伯爵は信頼できる人ね。彼らは出向扱いなんだろうから、いずれ自分の意志で転籍してくれるとうれしいね。2人妻子を連れて来た人がいたけど、狙い目なんじゃないかしら。
徴税長以下徴税官と、やって来た文官の前で慎二くんは言った。
『戸籍を見直したい。戸籍が古く、最新のものになっていないように思える。皆に戸籍の再調査を望む。』
何人かの徴税官の顔が青ざめた。あの人たちはきっとそれを利用して私腹を肥やしていたのね、わかります。でも、慎二くんはそれを不問にするつもりよ、これからはダメだけどね。
『これは女王陛下、いや、今の立場では公爵か、そのお望みである。』
もー。命令元は私、慎二くんはそれを伝える者、って言うスタンスは崩さないのね。
シナリオ書いているのは慎二くんよ、私はただ微笑んでいるだけ。お笑いコンビのネタ書いている人より、踊らされている人の方が上に見えるってのと同じ感じね、違うから。
『あわせて、この近辺にいる金属職人を招集したい。金属、工作に係る者は全てだ。』
「職人集めるって、なに考えているの?」
私が尋ねると、慎二くんは笑いながら言った。
「異世界物の定番。手押しポンプ。」
はぁ?
「井戸の手押しポンプは、俺たちの世界でも結構近世になってからなんだよ。それでやっぱりここにはない。これを普及させるだけで、労務工数は削減できる。」
「それはわかったけど、作らせるならちゃんとした図面がいると思う。どうするの?」
「PCがあること、忘れた?」
PCがあることは知っている。慎二くんは結構使っていた。私が持って来た太陽光発電のバッテリーが役立っているのも知っている。でも。
「知っているよ、でもネットにつながらないじゃない。情報は取れないよ。」
「あのさぁ、俺はプロの作家だよ。ネットの情報は利用するけど鵜呑みにはしない。このPCにはそれなりの資料が情報として残っている。ネットの情報は本当だけれど本当じゃないっていう、要は信頼するには今一つって思っているから、裏付けのための資料を持っているの。」
なんだそれ、いまいち理解できない。そんな私の表情を見て、
「わからないかな。出典が明らかな情報じゃないと、小説には使えないってこと。クレーム対策とも言う。」
やっぱりわからないので、わかったふりをしてこの場を治めることにした。なにしろ手押しポンプが発明されるのね。ふー。
登場人物
ブラントンからの文官 :12人




