1.写真撮影
「なにその衣装?」
慎二くんはどこかの国の将校の格好をして来た。テールコートで固めて来ると思っていたのに軍服は意外過ぎる。それにそんな服はここの貸衣装にはないはずだ。
「これは学生時代に趣味で作った服だよ。結婚式にはこれを着るつもりで10年前に作った。」
ソウデスカ。
10年前ならまだ付き合っていない時期だ。そんな趣味があったなんて知らなかった。作家という、インドアイメージがある仕事をしているのに、がっしりした細マッチョ体形を維持するためにジム通いしていたのにはそんな秘密があったのね。10年前の衣装が全く問題なく着られるなんて凄いことだ。
私は・・・ムリデス。
学生時代の制服なんてとても着られない。着たらぴちぴちである。
お胸やお尻が成長してよりセクシーになったってことにしておこう。うん。
着付け師の人にウエディングドレスを着せて貰い、ヘアメイク。
一見高そうに見えるティアラを付けて貰う。銀製で、宝石に見える石はすべてクリスタルガラスだそうだ。
綺麗なカットで、キラキラ感は半端ない。写真なら本物に見えるかもしれない。
ティアラに本物の宝石がついていたら、恐ろしくて首が固まってしまうところなので、分相応か、ちょっと贅沢かってところで良かったと思う。
私の準備に時間がかかったため、慎二くんはステージにスーツケースを持ち込んで、自分のを椅子に、私のを机にしてパソコンで何かしながら待っていた。
私がそこに案内されて指定の場所に立つ。慎二くんはパソコンを機内持ち込みバッグにしまい、スーツケースを私たちの背後に置いた。
「すみません、このままだとスーツケースが写ってしまいますがよろしいのですか?」
写真館の人が慎二くんにそういうと、
「構いません。手元にないと不安なので、このままでお願いします。」
噓だ。面倒なだけだ。いざとなれば編集で消すつもりだ。
うそじゃなければ何が不安なんだろう。何か変なものでも入っているのかな?
そうか、私へのサプライズプレゼントが入っているに違いない。そういうことにしておこう。
「じゃあ撮ります。この花を見て下さい。」
眩しすぎるフラッシュだと思った次の瞬間、周りが別世界に変わっていた。