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恋風のとき ― 精霊たちの約束 ―

作者: ごはん
掲載日:2025/07/10

春の風が通り抜ける並木道。

少女と少年は並んで歩いていた。


前よりもずっと軽い足取り。

けれどその先には、また新しい分かれ道が見えてきていた。


「進むって、やっぱり少し怖いね」

「うん。でも、怖くても、ひとりじゃないなら…きっと行ける気がする」


ふたりが言葉を交わしたそのときだった。

風がふっと変わる。


まるで何かが、そっと舞い降りたような――静かな気配。


そのとき、彼らの耳に届いたのは、誰かの声だった。


「険しい道も、共に歩むんだ」

「私たちが、いつもそばにいるからさ」


ふたりは顔を見合わせた。

けれど、周囲に誰もいない。

でも、なぜか不思議と心があたたかくなった。


「今、聞こえたよね?」

「うん。たぶん…精霊、かな」


すると、春風に乗って、小さな光がひとつ、ふたりの目の前に現れた。

それは人の形をしているようで、していないようで――

でも確かに、そこに“存在”していた。


「私たちは“音の精霊”。君たちの想いと、音楽の中の願いから生まれた存在だよ」


その声は、心の奥に直接響いた。


「あなたたちが一歩踏み出すたびに、

 私たちはそばにいて、そっと風を吹かせてたの。気づいてた?」


少女は赤いレインコートのすそを見た。

いつもどこかで風に揺れていたその布が、今日もそっと揺れていた。


「これから、険しい道がまた来るかもしれない。

 けれど忘れないで。君たちのそばには、たくさんの“見えない力”があるってことを」


少年がつぶやくように言った。

「その見えない力って、歌だったり、風だったり、誰かの祈りだったり…」


「そう、それが“倍々”になって、君たちを支えてるんだ」


精霊の言葉に、ふたりは思わず笑った。


春の空に、音のような風が吹き抜ける。

それはまるで、目に見えない「がんばれ」を届けてくれているようだった。


ふたりは手を取り合った。

そしてまた、歩き出す。


険しくても、光がなくても――

風は、いつも彼らのそばにいた。

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