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橋を渡るときにはね…

作者: 各務 史

『そろそろ油断している巽を怖がらせよう!夏のホラースペシャル2025!』に投稿した作品です

 日の暮れかけたバイト帰り、珍しく近道することにした。

今日は疲れた。身体はそうでもないけど、神経疲れたわ。

 人間色々、よって、お客さんにも色々いる。分かってる。

けど、やっぱり、理不尽な言い掛かりは心がすり減る。

並んだ順番通りに対応していても、いきなり意味の分からない理由をまくし立てて、

割り込んでくる客もいるし、レジの使い方が分からなくてキレる客もいる。

年齢確認が気に入らないとか がなる客もいるけど、知らん!そんなこと!

バイトに言うな、バイトに。

 そんなくだらないことが重なっただけで、ぐったりする自分も軟弱だけど。

 雑木林を抜けていく。普段、近道と知っていてもこの道は選ばない。

夏の真っ昼間は木陰が涼しいらしいけど、もうすぐ真っ暗になるだろう時間帯に

街灯が極端に少ない道を行くのはかなり勇気が要る。

かなり暗さが増した中、甲高く鳥が鳴く。不吉な警戒音に聞こえてゾッとなる。

ゆらゆら手が誘っているように見えるのは、葉っぱが風に揺れているだけ!

と、手招きする幽霊の噂を否定して歩く。

知らず足早になって、靴の下パキパキと小枝が折れる音が静かな林に響く。

 後悔と共に怯えながらも何も起こらず無事大通りまで辿り着いた。

 ここまで来れば、もう安心と思ったのに

数分前から身体のダルさが尋常じゃなくなっていた。

足下が覚束なくて、フラフラと真っ直ぐ歩けない。

危ないと思っても、修正がきかない。

小さな川の上に架かる橋の欄干に縋るようにして歩く。

中程まで来たところで、虫が肩に止まった気がして、反射的に払うと

「チッ!」と舌打ちが聞こえた。

 声は橋の下から聞こえて来た気がして、思わず橋から覗き込んだ。

小さいとは言え、腰くらいまでは深さがあるはずの川なのに

女が水面に立って忌々しそうにこちらを睨んでいた。

はっきりとした敵意を感じる目に全身が粟立つ。

(どう見ても、あれは人じゃない…)

オレはすぐに目をそらして、後ずさった。

 そう言えば、霊感の強い(らしい)友だちが言ってた。

何か連れてきちゃったなと思ったら、川の上で肩を祓うといいよ、と。

偶然とは言え、どうやらオレは霊を祓ったのだろう。

脱兎のごとく逃げ出す背中に女の声が追いかけてくる。

「木の下で誘ってやったのに、何故来ない?この世は疲れるばかりだろう?」

高らかな女の笑い声は遠ざかっていかない。

オレは焦り始めていた。


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