エピソード7「2つ目の剣と3つ目の銃」
「||」・・・通信での会話
「」・・・肉声での会話
{}・・・モジュールの発言
()・・・登場人物の主観的感情・思考
を頭の片隅に入れてお読みください。
「さてR1まだ立てるよな」
二振りの剣を持ったレイトがこちらを向く。その姿が頼もしくて笑いながら立ち上がる。
「うん。むしろ置いてっちゃうよ。」
RM.No3の力を扱う敵の方を見る。「敵についての情報は持ってる?」
「銃撃が実弾とレーザーの2種持っていて、どちらも着弾と同時に爆発させる事が可能ってことくらいかな」
レイトは剣を構えながら返事をする。
「うんうん、上出来だね。あとは連射の限界が10回までってことかな?2秒程度インターバルが入ったらその限りではないけど。」
微妙な顔になったレイトが聞いてくる。
「結局どうやって攻略するんだ?っと」
相手からの銃撃を回避する。
(そう、このままいってもジリ貧。私に決定打はない。だからレイトに決めてもらうことになる。でも…くっ)
銃撃がどんどん激しさを増す。距離を取りつつ考える。
(これじゃあ近づけない、私が前に出て盾になっても1秒ちょいが限界。それじゃあ、攻撃は届かない。)
「R1!」
こちらにレイトがやって来る。
「奴のレーザー攻撃を防いでくれ」
レイトがそう頼んでくる。
(どうするつもりなんだろ?)
私の心を見たかのようにNo2が喋り始める。
{2:まずアイツはレーザーを撃ったあとに実弾による連射を行う。そして2秒ほどのインターバルがあってまた同じ攻撃を繰り返す。}
「もしかしてインターバルを叩くつもり?」
「あぁ、ってかそれしか方法がないでしょ。」
「そうなんだけど、どうやって近づくのよ?」
「レーザーを躱して実弾を全部R1に防いでもらったらあとは俺が。」
「えっ、すごく不安。というか普通に逃げられない?」
{2:どんくさいあいつじゃ、ゼロ様と私からは逃げらんないわよ}
「えぇ~」
と抗議の声を上げるも
{1:やってみるしかないでしょう。合図はそちらに任せます。ほら、そ…ちらで準備しましょうか。}
ガーディワンが
移動しながら文句をガーディワンに伝える。
(ちょっと、今アレ言いかけたでしょ。気を付けてよ)
所変わってソウスケたちは…
「ぐぅっ!」
なんとか受け止めるもその重さに体が浮く、そこに追撃かけようとしてくるが、軽い銃撃とともに相手が下る。
「ICC、所詮はレゾナンスモジュール頼りの組織か…」
展開状態のレゾナンスモジュールによく似たアーマーを着た相手は装備している片刃剣とバックルを軽く振りながら半ば他人事のように呟いた。
暴走体、インテリストは他の隊員に任せている。こいつの相手を出来るのは俺達だけ…。
(…いや、こいつに対応できるのはICCでも、あいつだけだなこりゃ)
頭に浮かぶのはファーストナンバーに適合した年下のあいつだ。
相手は火力と機動力の両立全て高い次元で確立されている。まるでレゾナンスモジュールのように。そして
「本部聞こえます?こちらユウミ、応答してください。本部!」
ジャミングによる妨害能力。厄介極まりない相手だ。
幸いこのジャミングでインテリストは活動休止になっている。
「貴様、何者だ!」
詰問するが、相手は意に介せずこちらに向かってくる。
(速いっ!)
愛剣で受け止めたと思った瞬間2撃目が飛んでくる。受け止めた姿勢から立て直す時間がない。このままでは直撃する。直後銃の炸裂音が連続して聞こえる。それは相手の剣にすべて当たり、わずかに軌道をそらす。生まれたそのわずかな隙間を使い避ける。
剣を切り返したがあっさりと避けられる。
距離をとった奴は自然体で片足立ちになるが、隙が全く見えない。
「なぁ、あんたらは彼ら、インテリストが何故暴れているのか知っているか?」
突然そんなことを尋ねられる。
インテリストが暴走する理由…。旧型AIロボットはエラーやジャミングによるものだ。そしてインテリストも同様なのが今の定説だ。
(もしかして暴走体とインテリストは暴走する理由が違うのか?)
そんなことを考えていると、
「知らないわよ」
ユウミが答えた。
「どんな理由があろうと誰かの幸せを壊していいにはならない。」
ユウミが冷たく返答した。それはそうだコイツは旦那を暴走のせいで亡くしている。
それに暴走はインテリストにとっても不本意だろう。
ユウミの言葉を聞いた奴は嬉しそうにそしてシニカルに奴は笑う。
「そうだな、何の理由もなく命が奪われるなんておかしいよな。そうインテリストってだけで迫害されてた連中が反撃するのも許されないわけだ。」
とんでもない一言そして凄まじい圧とともに一歩踏み出してくる。
「高エネルギー反応?!」
「なんてエネルギーだっ!」
奴の攻撃に身構える。
次の瞬間、奴は剣を下ろしていた。
まるでインコムで通信しているように
「撤退?……分かったよ。」
(逃がすか!)
「ちっ」
急いで攻撃を仕掛けると苦々しい舌打ちをしながら奴は地面を斬りつけ、土煙がおきる。奴がいた場所を斬るがそこにはもう何もなかった。隊員はまだ暴走体と戦闘している。インテリストが気がつく前に一応捕縛しておくか、とそちらに向かっていると
「|こ…あ…ほん…ゆ…けたい…ユウミ隊長応答してください。|」
インコムから声が聞こえ通信が回復したことを俺達に教えた。
「こちらユウミ。現在暴走体と交戦中。アンノーンと交戦しましたが、逃られました。」
「|分かりました。被害状況は?|」
「4番隊は負傷者14名3番隊は負傷者0です。」
「|回収部隊がそちらに向かっています、負傷者はこちらに任せて、作戦をそのまま続行してください。|」
「了解だが待ってくれ、無力化したインテリストをそちらに受け渡したい」
彼らに拘束装置を取り付けながら会話に慌てて割り込む。
「|了解しました。そちらは別働隊を向かわせます。|」
通信を切り上げた俺たちは、インテリストの監視を数名に命じ、いまだ暴れ続ける暴走隊の集団に突入した。
「|レイト、準備が終わったわ。相手に向かって走って|」
息を整えながら待ち望んていた報告を受け取る。
「オッケー、3カウントで出る。」
深呼吸で息を整えつつ、心のなかで数える。
(3.2.1.ゼロ!)
物陰から飛び出し、スラスターを使用しながら全力で近づく。
こちらを視認した相手は素早く迎撃態勢に入る。残り15m。
相手が引き金を引くそこからレーザーが放たれる、少し遅れて実弾も発射される。それを見ても減速せず相手への接近を続ける。残り10m。
「集中防御:ナラキアスシールド」
俺の目の前に光の盾が出現する。盾にレーザーが当たる。…レーザーは貫通しなかった。盾はそのまま砕けた。残り7m。
残りの実弾が迫る。
「お前の剣信じるぜ、ナンバーツー。」
剣を軽く握りなおした俺は銃弾を切り伏せる。残り6.5m。距離が近づくにつれ銃弾の密度は濃くなる。どうやらレーザーを放つより弾幕を浴びせるほうが勝機があると考えたらしい。残り6m。
残り6m。そこで俺の足は止まる。
(これ以上は近づけない!)
反応速度の限界、下がってももうチャンスはない、ここで決めないと。
頭に浮かんではまとまらず消えていく思考は徐々に焦りを生み出している。
相手は体力知らずでこちらはただでさえ連戦で疲弊している。剣を振り続ける腕も疲れてきた。
投げやりな思考で片方の剣を相手に投げる。しかし、いともたやすく撃ち落される。
再生成まではこの弾幕を防ぎきれない。
(くそっ!)
そのとき
{2:はぁ、あまり使わせたくなかったけど。しょうがないか。ゼロ様のしもべ、
私とゼロ様ののボイスコマンドを言いなさい。}
{0:背に腹は代えられないか…。}
ナンバーツー伝わってきたボイスコマンド。それは…
-非接触-
我々の考察では、レゾナンスモジュールにあるインフィニットフロウよりもたらされる膨大なエネルギーは身体をエネルギー路として利用している。だからレゾナンスドライバーたちは身体能力が一般人に比べ大きく上昇していると考えている。
体の中を膨大なエネルギーが廻れば当然身体が耐えることはできない。そのため通常時は大きな負担がかからないようセーフティがかかっている。ボイスコマンドでならそれを瞬間瞬間で解除することができる。そして強力なボイスコマンドであればあるほどセーフティ解除の時間は長くなる。(レゾナンスモジュール研究記録No223レポートより抜粋)。
何を言いたいかというと「彼が発動したのはナンバーツーとナンバーゼロの合体ボイスコマンド」であるということだ。自分をこの世から切り離し、あらゆる事象を無視し敵を貫く必殺の刃…相手からしたら…下手をしたら…「自分も」。
「非接触!」
そう叫んだ瞬間世界がどこか遠くに飛んでいく、「1秒」彼がそう知覚する時間がとても長く感じられた。相手から放たれた銃弾はまるで止まってしまったかのようにその速度を落とす、それらを躱し距離を詰める。残り4m。相手は銃を狂ったように乱射している、まるで恐ろしい速度で化け物が距離を詰めてくるかのように、だが彼にはその姿は見えない。この戦いを終わらせるため、只々相手との距離を縮める。残り1.5m。相手の近くはまるで隙間のない弾幕の嵐だった。彼はそれらを迂回し敵の背後に回り込むそして背中を動力ケーブルごと軽く切りつけた。そして彼の時間は正しく流れ始めた。
自分のボイスコマンドによりレーザーを防ぐも実弾の嵐に阻まれたレイトはその足を止める。あろうことか剣を投げて手薄になる始末。相手はとどめを刺すようにさらに乱射する。
「何やってんのよもうっ!」
ボイスコマンドの反動の苦痛でうずくまっていた私はすぐに動こうするが体は言うことを聞かない。
(動かなきゃ、レイトが!動いて、動いてよ!)
痛みに耐え何とか立ち上がると、レイトは敵の後ろで剣を振りぬいていた。
「きゃーーー!」
その後に凄まじい衝撃とともにあたりが揺れた。
それが収まると第一都市跡の半分が土砂と化していた。
痛みが治まりつつあった私はレイトに近づく。
「やりすぎよレイト!」
流石にあの相手に対してぶつけるには過剰火力だ。被害が大きすぎる。
しかし彼は何も反応しない。
「レイト?」
彼は突然剣を落とすと力無く倒れこみそうになる。慌てて支えるも、そこでやっと気づく。なんでもっと早く気付かなかったのだろう。彼の全身から伝う血の匂いに。
「|本部、こちらユウミ。ミッションコンプリート|」
ユウミが報告したのとほぼ同時に。
「|こちら2番隊。適合者が目標を二体とも撃破!うぉっ!|」
爆音とともにそんな通信が聞こえてきた。
「|あぁーこちら2番隊第一都市跡の西半分が消滅…|」
「こちらでも確認できたわ」
シオンは人工衛星の映像によってその状況を確認した。私は適合者に通信をつなぐ。
「R1・R2…」
何事ですか?そう続けようとするも。
「|シオンさん!レイトが!レイトが血まみれで。レイトが、レイトが死んじゃう!|」
まるで泣きじゃくる子供のような涙声でR1が伝えた情報は束の間勝利の余韻を吹き飛ばすには十分だった。
to be continue…?
レイト(17)・・・レゾナンスモジュール「ナンバーゼロ」”ゼロクス”の適合者。民間インテリスト対策母体「ICC」の物資補給の予備役。レゾナンスモジュールの適合者としてICCに協力する。
レゾナンスモジュール「ナンバーゼロ」・・・インテリスト対策用に古代遺物を使用し制作されたゼロ型、レイトが初めての適合者。意思を持った機械でレイトを弟のように接する。ずれた発言を結構言う。”ゼロクス”の愛称で呼ばれる。
ソウカ(22)・・・ICCの第1部隊の隊員。R1の補佐を主に行っている(本人談)。
レイトのことを弟のように思っている。後方で避難者の保護やけが人の治療などを行う。レイトから好意を寄せられているが気づいていない。
シオン(28)・・・ICCの社長。レゾナンスモジュールナンバーゼロ”ゼロクス”の開発者...。冷たい言い方をすることがあるので誤解されやすい。
ヨウセイ(24)・・・レイトの保護者その2。セントラルキャンパスを卒業した優秀な人物。レイトに勉強を教えているまたソウカへの恋愛相談も請け負っている。元教師志望。
ユウミ(32)・・・ICC第3部隊隊長。いたずらっ子の猫を思わせるオトナな感じの女性。その実かなり肝っ玉な性格。インテリストの暴走で夫を亡くしその後第4部隊の隊長のソウスケと結婚するも離婚している。
ソウスケ(35)・・・ICC第4部隊隊長。豪快な性格で女遊びが激しく(これが原因でユウミと離婚)美女に弱い。細かいことは苦手であり部下と共に前線に出向く直情タイプ。今でもユウミの事を愛している。
R1・・・緑のアーマーと大型の盾「アインズシールド」を持つ適合者。5年前レイトの母親代わりのロボットを破壊した(らしい)。バイザーで目元が見えない。
レゾナンスモジュール「ファーストナンバー」・・・R1と行動を共にするレゾナンスモジュール。R1からは”ガーディワン”と呼ばれている。紳士的な口調が特徴。