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大災害

大陸を平定してから10年のうちにこの王国は平和になった。平和になり過ぎたのかもしれません。人々は迫り来る不安に全く気づくことはなく、危機に対しては鈍感と言わざるを得ない。それはそうだろう。まさか未曾有の大災害がこんなにも自然に日常に溶け込んでくるとは誰が予想出来たであろう。


先日の誘拐された国民達を保護してからの1週間で国民の約7割が謎の病に侵されてしまったのである。高熱と倦怠感があり、まるで煮詰めたインフルエンザの様な症状が延々と続いていく。この病気の特徴は咳が止まらなくなるということである。飛沫感染による圧倒的な感染速度が過去類を見ないほどの凶暴性を秘めていると専門家は分析している。布で口を覆うくらいの不十分な対応策しかなく、この謎の病に対する特効薬を見つける事に国王軍は躍起になっていた。


兵士『国王様!ダメです!!効果的な薬は見つけることができません!国王軍にも病は伝染しており、壊滅的な状況です。』


国王『諦めてはならん!!私が何とかする!!捕まっていた者達の話では北の悪魔が関わっている可能性が高い。焦るな、、何か方法があるはずだ、、』


王妃『あなた、、もうアレしかないんじゃないでしょうか?』


国王『ダメだ!まだこの病は治る可能性があるはず!アレを使わずとも方法があるはずだ!』


王妃『いえ!国王!状況は刻一刻と悪化しています!死亡者こそ出ていませんが、そうなってからでは遅いのです!どうかお願いします!私にいかせてください!子供達に不安を与えたくないのです!』


国王『ダメだ!!それはもう許されないことなのだ!』


王妃『アナタは優しい人ですね。でももう私の心は決まっているのです。私をこの10年愛してくれて、平和を与えてくれてありがとうございました。』


その瞬間、フッと霧の様に王妃の姿が消えたのです。


国王が唖然としている間に王宮を竜巻が襲います。急に現れた国中を覆い尽くすほどの激しい竜巻に、多くの国民がパニックに陥ってしまった。しかし、それは一瞬の嵐。嵐が過ぎた後に残ったのは呆然とする国民と燦々と降り注ぐ太陽。


王妃『ただいま帰りました。勝手なことをしてしまい申し訳ありませんでした。しかし、これは、東の魔女である私の使命なのでございます。』


ばたりと倒れた王妃の顔には正気はなく、荒い息遣いだけが彼女の生死を判断出来る材料であった。


レイ大臣『国王、、まさか、、』


国王『そうだよレイ君。あの時の東の魔女が姿を変えたのが王妃だったのさ。そして彼女は竜巻になり国中の病を吸い取り、我が身一つに引き受けてしまったのだ。きっと病に罹ってしまった子供達、国民達を守りたかったのだろう。私に力が無かったばかりに。』


うなだれる国王からは大粒の涙と鼻水、ぐちゃぐちゃになった顔だが、その瞳には一つの決意が宿っていた。


国王『レイ君。すまない。俺は彼女の命を繋ぎ止める為に身体の自由を捨てるよ。そういう契約を今した。まだ王子達は小さい。レイ君が2人の成長を助けてくれないか?』


レイ『何言ってるんですか。アナタはいつも勝手です。だからこそ大臣として私が支えないといけないとついてきたのです。』


一瞬の静寂の後2人の笑い声が響く。


国王『レイ君!ほなぼちぼち行ってくるわ!いつも感謝してるぜ!』


レイ『ふふ、、後はまかせてシャ・チョウはやることをやってくれよ!』


若き日の2人の様な軽やかな空気が包んだ後、国王は光に包まれて倒れた。


第三話完

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