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第38話 遊撃艦隊


 旧皇都惑星出雲においてクーデター(はんらん)勢力が一掃されたことをうけ、瑞穂皇国は諸外国に対し、クーデター(はんらん)勢力からの版図の完全回復を宣言した。それに伴い、クーデター政権が大華連邦に割譲した無人星系について、割譲無効を宣言している。これは裏を返せば、休戦協定の破棄を大華連邦に通告したことになる。


 もちろん、大華連邦からは何の反応もないばかりか、思惑通りではあるがついに当該星系、ワンセブン命名によればガトウ星系の第2惑星の第一ラグランジュ点L1に大型人工惑星型基地の建造を開始した。


 小惑星に偽装した超空間通信用の中継ポイント介して、ガトウ星系に配備した極秘の広域探査システムが探知した輸送艦隊の到着情報を得た遊撃艦隊各艦が、URASIMA(ウラシマ)から出撃していった。わがほうの給兵艦は遊撃艦隊がガトウ星系での襲撃の合間、大華連邦の周辺部で通商破壊作戦を継続して行えるよう、物資を満載し指定の会合点で待機している予定だ。



 これまでの、長期間にわたる大華連邦周辺部への通商破壊戦で十分な実戦経験を積んだ遊撃艦隊だが、いわば、通り魔的に弱い者いじめをしていただけなので、大規模な輸送艦隊を襲撃した場合、小口径砲しか持たない遊撃艦隊の対応がどういったものになるか若干心配だった。



 最初から大華連邦の基地建造を大規模に妨害して建造を断念されては仕込みが無駄になるので、遊撃艦隊へは、基地への補給を終えた輸送艦隊の空船を襲うよう指示を出していたのだが、襲撃を繰り返すたびに遊撃艦隊は無傷で離脱を果たしていった。遊撃艦隊への心配は、ワンセブンが太鼓判を押した通り、ただの杞憂きゆうだったようだ。



 ガトウ星系から本国に帰還する輸送艦隊に対し遊撃艦隊が襲撃をおこなう合間には、大華連邦周辺部に対して通商破壊戦を継続していたため、大華連邦の船腹せんぷく事情は急速に悪化していった。その結果、大華連邦の民間を含めた宇宙船輸送力の余裕はマイナス5パーセントを切ってしまい、ワンセブンの予測通り大華連邦周辺部の一部の星系では民生品だけでなく食糧事情がひっ迫し始めた。こういった情報はもちろんワンセブンによる通信傍受から得られたものだ。



 そのような状況の中、ガトウ星系での基地建造開始から2カ月が経過した。


 2カ月間の建造工事の末、大華連邦のガトウ星系人工惑星基地の6割がたが完成した。この段階でも基地機能は最低限だが発揮できるため、基地要員が配置され、星系固有の警備艦隊も二線級ではあるが配備されたようだ。


 今後基地の8割がたが完成すれば、主力艦を擁する本格艦隊の基地として機能することが可能となるため、基地建造は多少の障害では中止することなく継続していくのだろう。


 そろそろ、本格的な補給阻止に軸足を移す時期が来た。


 ここからは、できるだけ補給艦隊をたたき続けるわけだが、遊撃艦隊では打ち漏らしが出るため、何割か届けられる物資によって基地も徐々に整備されて行くはずだ。最終的には、基地を完成させて、主力艦隊が回航して来たら俺の率いる第1艦隊が出張って、一網打尽にしてしまう算段だ。この作戦が成功すれば、大華連邦は、すべての主力艦を一時的に失うことになり、こと軍事力にかけては列強とは言えなくなる。そうすると、どうなるか? もちろん他の列強、特にスラビア共和国に周辺部を蚕食さんしょくされていくわけだ。当然だが、蚕食さんしょくが進めば国の維持も困難になる。




「敵の補給艦隊の襲撃にまた遊撃艦隊が出撃していったか」


『予想通りではありますが、大華連邦がガトウ基地の建造のため、大規模輸送を行ってくれたおかげで、遊撃艦隊が活躍できました。

 一連の遊撃艦隊の活動により、大華連邦では軍の宇宙船輸送力が著しく低下したため、民間宇宙船の徴用を始めたようです。この措置により、周辺星系はこれまで民生品不足程度で済んでいましたが、深刻な(・・・)食糧難に陥る星系が多数・・発生することは確実です。物資不足、特に食料不足は社会不安をあおり、社会不安は容易に反政府運動に発展しますのでもう一押しです』


『大華連邦とスラビア共和国との境界星域に対するスラビアからの圧力はこれから先さらに強化されるでしょう。スラビア共和国の主力艦隊が両国の境界星域方面に集結中との確定情報も得ています』


『弱った敵から順に徹底的に叩き潰す。作戦の基本を徹底していきましょう』


 ワンセブンは簡単に言えばただのAIのはずなのだが、語り口がいま人気のビデオ時代劇に出てくる悪代官をそそのかす御用商人のようだ。俺自身は悪代官のつもりはないがな。




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