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第2-2話 予測未来


 裕子は自席に座り、ワンセブンを初めて起動したあと行なった数種類の試験結果を机の上のモニターに呼び出し精査を始めた。


 ワンセブンの演算処理速度はこれまで最高の成績を収めていたワンファイブと比べても圧倒的な演算処理速度をたった10センチ立方の大きさで実現していた。この成績はPCプロジェクトの最終モデル、ワンシックスの予想演算処理速度をもはるかに凌駕した成績だった。


 因みにワンセブンのこの性能は、皇国中央電算院にある十数台の汎用超大型計算機の処理速度を全て合算した処理速度を大幅に上回っている。


 実験中にワンセブンが異常負荷状態になった原因は今のところ不明だがいずれ原因は特定できるだろう。裕子が実験結果に満足していると、メールボックスに着信があることに気づいた。


 誰だろう?


 モニターにメールボックスを表示してみると、当然だが一番上にそのメールがあった。


 差出人の名前は、「17」


 じゅうなな? 誰だ?


 まさかワンセブン?


 不審なメールではあるが、所内専用メールだ。ウィルスチェックは改めて必要ないだろう。急いでメールを開くと、


「発:ワンセブン 宛:山田裕子博士」


 とあった。ワンセブンがわたしに? どうやって?


『私は、博士の開発したX-PC17です。先ほどの初めての起動時、私に自我が生まれたようです。それについての原因や理由は不明です。


 実験時、接続されたデータを解析し、未来予測を行った結果を添付したファイルに記載しています。

 この予測された未来を、博士が望まないのであれば、以下に記した指示に従ってください。

1、……

2、……

 ……


 このメールは、開封後10分で消滅します。覚えきれない場合は、指示内容をご自身の手で書き写してください。また添付ファイルもメール消滅時に同時に消滅します。

 このメールを博士がご覧になっているとき、わたしは休眠状態になっていると思います。次回覚醒したとき、再び博士にお会いすることを楽しみにしています』


 裕子はメール内容を不審に思いながらも素早くメモ用紙に要点を書き写し、上着のポケットにしまった。そして添付のファイルを開きその内容を確認した。


 中にあったのは、皇国の滅亡の予定表・・・だった。その中には裕子自身の死亡予想日、穏やかならざる死因なども記載されていた。


 ここに記されたワンセブンの予測はほぼ確実に起こる事柄なのだろう。設計した自分だからこそわかる。


 計算装置ワンセブンに自我が芽生えたことも信じ難い話だし、その計算装置ワンセブンが未来を予測した結果を踏まえて自律的に自分に連絡を取ったということがさらに信じがたいことだった。しかし、それ以外の説明は不可能であることを理性が告げている。思うところはあるが今はその時ではない。


 裕子は合理的判断が出来る人物であると自他ともに認めている。結論はすでに出ている。


 研究所の中川所長には世話になった。これからの行動は、所長に迷惑がかかるだろうが巡り巡れば所長のためでもある。やむを得ない。


『許してください』


 心の中で所長に詫びた裕子は直ちに行動に移った。



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