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第21話 スラビア共和国宇宙艦隊、ミコナリア席巻。


 大華連邦は、皇国とはユーグを挟んで接しているが、スラビア共和国とは領域を直接接しており、絶えずスラビア共和国との境界領域付近の星系で地方艦隊同士の小競り合いを繰り広げ緊張状態が続いている。



 現在、大華連邦はスラビア共和国第二方面の主力艦隊の位置情報を珍しく(・・・)失っており、大華連邦の軍部は状況からスラビア主力艦隊は大華連邦との境界領域近くまで移動していると推定している。


 対抗上、大華連邦も主力艦隊をスラビアとの境界領域近くまで移動せざるを得ないため、艦隊の集結を急いでいる。



 大華連邦はその後背に、過去小国群を併呑した辺境領域を抱えており、先の皇国への侵攻艦隊の敗北情報がどこからか(・・・・・)その辺境領域に漏れたようで、独立の機運がこれまで以上に高まっていた。


 連邦政府は、これまでは治安部隊による弾圧で、地方の独立勢力を押さえつけていたのだが、最近どこで得たのか潤沢な資金を使い高性能の武器弾薬を独立勢力が使用するようになり、治安維持のコストは税収を上回りそうな勢いで増加している。


 仮に辺境で大規模な反乱が起き、惑星政府が反乱軍に苦境に立たされ、場合によっては反乱軍に降伏した場合、大華連邦政府は速やかな鎮圧を行うため必要十分な陸上兵力を安全かつ迅速に反乱惑星上に展開する必要がある。


 要は、降下作戦をいかに迅速に行ない得るかということだが、先の侵攻作戦での海兵隊員の大量喪失により降下兵力が半減したため、降下作戦を行うにはかなり窮屈な状態に陥っている。予備兵力を払底させるわけにはいかないため、二方面以上での降下部隊の同時展開は現状不可能となっている。



 大華連邦とスラビア共和国の境界領域の皇国側に向けた延長線上に、大華連邦の属国ミコナリアがある。ミコナリア自身は、大華連邦、ユーグ、そしてスラビア共和国の三国に領域を接している。 



 スラビア共和国宇宙軍第二方面第1艦隊(打撃艦隊:戦艦主体)、および同方面第2艦隊(高速艦隊:巡洋戦艦主体)からなる侵攻艦隊が、大華連邦の予想に反して、ミコナリアとの境界宙域を越えミコナリアの支配星系に侵入した。


 スラビアの侵攻艦隊は、防衛艦隊とも呼べないミコナリアの地方艦隊を蹴散らした後、第2艦隊は、順次ミコナリアの星系を犯し、目に付いた地方艦隊を撃破し、人工惑星などの宙間構造物を破壊して回り始めた。


 戦艦を主体としたスラビア第二方面第1艦隊はミコナリア領内において破壊活動は行わず、数度のジャンプの末、ミコナリアの首都星系の安定領域に現れた。


 第二方面第1艦隊のジャンプ経路からミコナリアの首都星系に対する直接侵攻であることは明白だったため、ミコナリア側は首都星系の安定宙域に、手持ちの旧式機雷を安定領域に急遽敷設して待ち受けていた。


 しかし、機雷による安定宙域の封鎖を予測していたスラビアの第1艦隊は、廃棄処分寸前の超大型輸送船を複数隻艦隊の侵攻に先駆けて突っ込ませ安定宙域を啓開してしまった。本艦隊突入時、残存機雷により多少の損害は出たようだが軽微な損害にとどまった。


 ミコナリア政府は、当然、宗主国の大華連邦に救援要請を送っていたが、「艦隊準備中」との返答を得ただけで、いつ救援が来るのかは不明の状態が続いている。


 宗主国に見放された形となったミコナリアだが、首都星系防衛のため自国の有するほとんどの戦闘艦艇(スラビア第二方面第2艦隊により、かなり消耗している)をかき集めスラビア共和国の艦隊を待ち受けていたため、ここに、人類宇宙で数十年ぶりの会戦が発生することになった。


会戦参加艦艇

スラビア共和国第二方面第1艦隊

 戦艦×6

 重巡洋艦×12

 軽巡洋艦×8

 駆逐艦×48

 +各種補給艦など


ミコナリア集合艦隊

 重巡洋艦×4

 軽巡洋艦×8

 駆逐艦×26

 突撃艇多数(安価な旧式ミサイルを搭載した小型艦、ジャンプ能力はない)


 最新鋭艦で構成されたスラビア艦隊に対し、大華連邦から供与された数世代前の旧式艦で構成されたミコナリア艦隊はスラビア艦隊を有効射程におさめる前に、わずかばかりの突撃艇を残し全ての戦闘艦艇を喪失し会戦とは名ばかりの戦闘は終了した。


 ミコナリア側の艦艇を撃破したスラビア第二方面第1艦隊の戦艦が首都惑星上空の周回軌道に現れるに及び、ミコナリアはスラビア共和国に対し無条件降伏した。


 これを受けて、戦闘行動を停止したスラビアの第二方面第1、第2艦隊だが、占領軍を一切残さぬままミコナリアを放棄して自国領に撤収してしまった。



 顔に泥を塗られた形の大華連邦。無条件降伏したにも関わらず、不要とばかりに無視されて放置されてしまったミコナリア。


 第三国から見た場合、滑稽この上ない状況が生まれてしまい、大華連邦の国際的影響力は大きく低下した。ミコナリアを救援できなかった大華連邦ではあるが、ミコナリアの復旧の支援を行わなければならないため、多額の国家予算をミコナリアに融通することになった。


 また、この失態についての情報も、尾ひれを付けたうえで独立の機運が高まる大華連邦の後背部、辺境部に流布された。




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