第14話 地歩を固める。工作艦購入
皇国では、その建国時に尽力した12名の功臣が爵位を得、その子孫が皇国12家として、権勢をふるっている。いや、いまでは過去形でふるっていたというのが正しいのかも知れない。
それと、皇国12家と言ってはいるが現存は10家しかない。爵位といっても、独自の荘園などを持っているわけではなく、それなりの年金が国から支給されているだけだ。あと一つだけ与えられている特権として、皇国12家は私兵の保有が許されている。もちろん私兵は武装しているものなので、俺が武装した宇宙船を持っていても法的には何ら問題はない。
皇国12家をまとめておくと、
北条家:侯爵、前出の通り現当主は航宙軍大将を務めている。
金田家:過去に粛清され、現存していない
月島家:侯爵、北条家に近い
工藤家:侯爵、北条家に近い
村田家:侯爵、俺のうちだ。村田侯爵閣下とは俺のことだ。
金森家:伯爵、中立
秋山家:伯爵、中立
西川家:伯爵、中立
吉田家:伯爵、村田家に近い。吉田・エミリア・涼子の実家
森本家:伯爵、村田家に近い。
服部家:伯爵、村田家に近い。
佐々木家:断絶により現存していない
皇国の内部事情はさておき、晴れて浪人となった俺たち三人だが、ひとり、ぶーたれていた吉田少尉、今では吉田退役中尉だが、彼女も腹をくくったようで一丸となって俺たちの野望のために協力すると言ってくれた。『お前でも何かの役に立つこともあるだろうからよろしくな』と礼を言ったところ、怒られた。
武装を撤去するため、一度は航宙軍の指定工廠に運び込まれたものの、何も手を付けられることもなく、武装撤去作業が書類上完了していたX-71を受け取ったわれわれは、一路、これからの拠点となる懐かしの竜宮星系、俺の人工惑星URASIMAに帰り着いた。さすがに、俺たちだけでURASIMAの運営はできないので、2、3日中に、俺の屋敷の使用人たちが貨客船に乗ってやってくることになっている。
「俺たちは、軍人ではなくなったので、X-71のことを艦と呼ぶのはおかしいが、船とは呼びたくはないので、従来通り艦でいいだろう。それはいいとして、われわれ自身の名称を決めておかないといけないな」
「村田軍? 村田宇宙軍、そしたらわたしは村田水軍の娘!」
バカなことを言っている涼子は放っておいて、
「そうだなあ、俺たちの拠点は当面ここURASIMAになる」
「わかった。それじゃあ、桃太郎宇宙軍!」
桃太郎などと訳の分からないことを言う涼子は放っておいて、
「それを踏まえた上で、『梁山泊』はどうだ?」
「どこも踏まえてなーい!」
「やっぱりダメか。しかたない、それじゃあこの件はしばらくペンディングだな」
「艦長、それでしたら、当面村田私設艦隊でどうでしょう」
山田退役少佐の提案が一番普通でまともだったので、これからは『村田私設艦隊』と名乗ることにした。それと、今後、名前の後ろの退役は無意味なので取り払い、村田大佐、山田少佐、吉田中尉と呼び合うこととした。山田少佐、吉田中尉の俸給は航宙軍に準じたものとした。もちろん、俺のポケットマネーから出すことになる。
「ほう、これが中古工作艦か。大きいな」
俺たちがURASIMAに戻って10日ほど後。
航宙軍から中古価格で払い下げになった最新鋭の大型工作艦が乗員ととも到着した。これも先の取引の一環である。工作艦の艦内には艦に見合った最新鋭の工作機械と各種マテリアルが満載されているためすぐにでも望みの作業を開始することができる。各種マテリアルについてはさすがに自腹ではあるが、今の俺の資産状況からいって、微々たる金額だった。将来的には工廠人工惑星を建造するし、乙姫の発展に応じて工場衛星や工場人工惑星を建造することになるのだろうが、今のところは工作艦で間に合わせた格好だ。
俺は到着した工作艦の乗員を迎えに、全配下二名を引き連れ桟橋手前のホールで待っている。
艦を係留する桟橋から二重反転シリンダーの連結部分にかけては無重力のため、手すりにつかまって空中を泳ぎながら内部通路を移動するわけだ。無重力の環境から重力のあるシリンダー内のホールにたどり着くと、無重力に慣れた足腰が体重に驚くことになり歩きが不自然になる。とはいっても、5分も1Gの重力下にいれば体が慣れてくるので心配することは無い。
工作艦から工作艦艦長を先頭に30名ほどの乗員が手すりにつかまってホールにやって来た。その中の10名は元陸戦隊員で、今後乙姫コロニーから募集した人員で組織するつもりの陸戦隊の幹部要員および教官になってもらう予定だ。
「村田大佐、これからよろしくお願いします」
「ご苦労さまです。中島中佐。それと、乗員のみんなもこれからよろしく」
「「よろしくお願いします」」と他のみんなが一斉に敬礼した。
いまのところ、俺たちは軍人ではないのだが、染みついたものはそう簡単に抜けないようだ。それほど遠くない将来、そういう生活に正式に戻る予定なのでこのままで問題は何もない。
工作艦の乗組員は、以前軽巡香取に勤務していた連中で、先日の撤退事件のあおりを受けて閑職に左遷されていた中島中佐とともに航宙軍を辞めてうちに来てくれたものだ。一通り工作作業を習っているが複雑な作業はできないので中央からの次の貨客便で工作の専門家が到着する予定だ。
中島中佐以下ここにやってきた連中は、本人たちには気の毒な話かもしれないが、航宙軍が有為な人材を無駄使いしてくれていたおかげでリクルートできたわけで、こちらとしてはありがたい。俺の下に集まったことを良かったと言ってもらえる日が一日でも早く来るよう俺も頑張るからな。
「それじゃあ、大したものはないけれど、ささやかながらも歓迎会を開くから、1600にここの将校クラブに集合だ」
「「はい!」」
元気が有ってよろしい。
「吉田中尉は、みんなを宿舎に案内してくれ」
「了解。
みなさん、こちらです」
涼子が新メンバーを連れて、URASIMA内の宿舎に案内していった。
将校クラブ用にはうちの屋敷で使っていた調理人のうち2名と配膳係2名ほど、他の使用人ともどもこのURASIMAに呼んでいる。これからはURASIMAの人員がどんどん増えていく。URASIMA自身の拡張工事ももうじき始まる予定だ。
週1ではあるが皇都惑星からここURASIMAへの定期便の就航にも目途が立っている。
工作艦の当面の仕事は、X-71用の特殊砲弾の作成である。もともと試験用として20発しか特殊砲弾を製造していなかったのだが、先の戦闘で2発使用したため残弾が18発。これでは心もとない。
もう一つの仕事は、X-71の軸線砲の伸長と、各種コンデンサー類と核融合ジェネレーターの強化だ。ジャンプ用コンデンサー、主砲用コンデンサー、予備汎用コンデンサーなど沢山のコンデンサーをX-71は搭載しているが、核融合ジェネレーターとともに強化することで、主砲の連続発砲回数、短距離ジャンプの連続ジャンプ回数を増やす計画だ。
最後に、これまでくすんだ黒だった艦体に鏡面加工を施した装甲板を張り付け、光線兵器への強度を高めることだ。取り付ける装甲板は、かなり薄いもので、実体弾に対する防御力はほとんどない。
一連の作業には1カ月を見込んでいる。文字通りピカピカの新鋭艦となってX-71が生まれ変わった暁には、艦名を巡洋戦艦TUKUBAと改める予定である。ちなみに工作艦には、工作艦AKASIと名付けた。




