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第10-2話 魔弾の射手2


 こちらはユーグ艦隊旗艦、巡洋戦艦『真世界』の中央指令室。

 

 大華連邦宇宙軍(こう)中将は、今回の出撃にあたりユーグ宇宙軍の大将という肩書を与えられ、皇国竜宮星系侵攻作戦の指揮を執っている。


 戦闘に備え、すでに艦内から空気は抜かれているため、各人はヘルメットの通話装置を通じ報告などを行っている。中央指令室内の各人の音声は全て拾われ、指令室内の各人のヘルメット内に流れる。



『ジャンプ反応探知しました。ジャンプインとアウトが同時に発生しています。短距離転移です。この探知目標を第1目標とします。位置特定、質量解析急ぎます』と、探知員の報告が中央指令室内の各員のヘルメット内に響いた。


『さらにジャンプ反応探知しました。第2目標とします。これも短距離転移です。現在質量解析中』


『第1目標、位置特定、質量解析ともにできません』


 ――どういうことだ? しかも残っていた艦がまだ二隻もいたのか。短距離転移までして何がしたかったのかわからないがさっさと逃げればいいものを。しかし、位置特定も質量解析もできないとはどうなっている?


『再度ジャンプ反応探知しました。これも短距離転移です。第3目標とします』


『第2目標、質量解析、解析エラーです』


 ――うちの装置はどうなってるんだ? それで、いったい敵は何がしたいんだ?


『高速飛翔体探知、小惑星をかすめ急速接近。強襲揚陸艦『山陽』迎撃間に合いません。回避不能』


『「山陽」からの信号途絶。爆沈したもようです』


 ――たった1発で爆沈か? まぐれで艦の中枢部に砲弾が飛び込んだのか。運のない。


 ――こちらの読みでは、すでに皇国の駐留艦隊主力は逃げ出しているはずだ。確かに複数の質量消失を観測している。さっきはネズミに痛いところを一噛みされてしまったが、これ以上の被害は許されない。

 強襲揚陸艦はもう1隻ある。人口20万程度の開拓惑星だ。いくらユーグの弱兵でも揚陸艦1隻、1個連隊いれば十分占領可能だ。とにかく無謀にもわが艦隊に挑んだバカ者はかならず血祭りに上げなくてはならない。


『ぐずぐずせず、残った敵艦を沈めろ』


『ダメです。ここからでは小惑星が邪魔で敵弾が飛来した方向への光学観測が通りませんし射界そのものが通りません』


『じゃあ敵はどうやって射撃したんだ!』


『星系の広域探査網を利用していると思います』


『それならそれでいいが、こっちもドローンを上に撃ち上げて、さっさと敵を見つけろ!』


『了解!』


 ――敵が広域探査網を使って照準したことは理解できるが、敵の砲弾は小惑星帯をどうやって潜り抜けたんだ? 苦し紛れで撃った1弾がマグレで小惑星帯を抜け、さらに『山陽』の致命部に命中した?


『ビー、ビー、……、』


 アラーム音が『真世界』乗員のヘルメット内に響き渡り、乗員に緊張が走った。艦側スラスターによる緊急回避運動により、シートやシートベルトに体が押し付けられる。


『高速飛翔体探知、敵弾です。小惑星をかすめ本艦に急速接近。近接防御用各砲、照準、砲塔旋回共に間に合いません。回避継続』


 指令室内の乗員が息を詰め被弾に備える。


『……、敵弾、本艦舷側をかすめ後方に通過しました。回避成功です』


 各員のヘルメット内に、自分の安堵の吐息と同時に指令室内の各員の吐息が漏れる音が聞こえてきたが、探知員の報告は続いた。


『敵弾進行方向に強襲揚陸艦「海陽」がいます。「海陽」近接防御、回避共に間に合いません。……、

「海陽」からの信号途絶。爆沈しました』


 ヘルメット内に沈黙が流れた。



 ――全て狙ってのことなのか? たったの2発でこの巡洋戦艦『真世界』をも凌駕する巨艦『海陽』、『山陽』が爆沈してしまった。運命の一弾が二度も続くことなどありえるのか? しかも2発とも小惑星帯を挟んだ射撃だ。とはいえ、あり得ないことだが起こってしまったことは事実だ。

 やむを得まい。俺のキャリアはこれでおしまいだろうが、降下部隊を欠いてしまった以上作戦の遂行は出来ない。何かの間違いで三度目があればそれこそ粛清されてしまう。


『強襲艦2隻を喪失した以上、作戦遂行は不可能である。艦隊は速やかに当星系より撤退、離脱する』


『提督、強襲揚陸艦の生存者救助はいかがしますか?』


『乗っていたのはほとんどがユーグの連中だ。必要ない。撤退急げ。ユーグの軽巡と駆逐艦にも、ぐずぐずするなと指示を出しておけ』





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