居場所 4
「乾杯」
ワイングラスには、数センチ注がれた赤ワインが入っていて、家の蛍光灯できれいに光っている。
今日は結婚記念日。何としても帰らなければいけない理由はここにあった。
「乾杯」
まひろが、にっこりと笑いながら、グラスを傾けた。
年月を重ねるたびに、2人の時間を作るのは大変になる。
今となっては渚がいるから、なおのこと。
渚が眠ったころを見計らって、2人の時間を作っていた。
「仕事はどうなの?順調?」
「そうだな。いいお客さんに会えたよ。少し時間は掛かるかもしれないけど」
「そう、よかったね!」
まひろの明るさで、疲れが軽くなる。
「いつもありがとう。これからもよろしくね」
恥ずかしくて普段言えないことも、この日だけはしっかり伝えようと思っている。
「こちらこそ」
まひろが少し恥ずかしそうに答えて、残りのワインを飲み干した。
そのまま寝室へ2人で向かった。
優しく口づけをする。
それに応えるように、まひろの柔らかい唇が自分の唇に重なった。
溶けそうになる感覚と一緒に、まひろの体をベッドに倒した。
声を必死に抑えながら
お互いの体を感じながら
一つになったとき
最高の幸せを感じた
まひろの寝顔が愛おしく、寝ている彼女の額にキスをする。
「んん・・・」
寝ぼけながら声を出す彼女の唇にまたキスをした。