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仮 3月の冷たい雨  作者: 春咲桜
22/25

責任 6

「まひろ!ごめん!」


ビデオを片手に持ったまひろを、夕日が薄く照らしていた。

その視線は、自分ではなく、渚にずっと向けられているままだった。


「うんう、大変だったんでしょう?しょうがないよね。

二人三脚はね、先生とやっていたから、大丈夫だよ」


「本当にごめん・・・

何とか早く切り上げてきたんだけど。どうしても抜けられなくて」


「うん。だから、私は大丈夫。渚にはちゃんと謝ってあげて」



閉会式が終わると、渚は一目散に自分の元へとやってきた。


「パパ・・・今日はなんで一緒に走れなかったの?」


目に涙を溜めて、こっちを見る渚に、ごめんとしか言えなかった。



見かねたまひろが手をパン!と鳴らした。



「よし!じゃあ、今、走ればいいでしょ?」


キョトンとする渚と自分を横目に、歯を出してにっこりと笑って見せた。


すると、その笑顔につられた渚が、同じような笑顔を自分に見せた。



「うん!やるやる!パパと走る!」


「よし!やるか!!!」


周りを気にすることなく、渚の手を取り、幼稚園の中央へ向かった。


持ってきた白いタオルを二人の足に巻いたところで、近くにいたまひろが手をピストルの形に変えた。



「よ~い、どん!!!」



幼稚園の庭は大人からすればとても小さいが、渚にしてみればきっと広く感じているのだろう。


走っても走ってもなかなかゴールまで到着しない。


でも、この時間がとにかく愛おしかった。

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