責任 6
「まひろ!ごめん!」
ビデオを片手に持ったまひろを、夕日が薄く照らしていた。
その視線は、自分ではなく、渚にずっと向けられているままだった。
「うんう、大変だったんでしょう?しょうがないよね。
二人三脚はね、先生とやっていたから、大丈夫だよ」
「本当にごめん・・・
何とか早く切り上げてきたんだけど。どうしても抜けられなくて」
「うん。だから、私は大丈夫。渚にはちゃんと謝ってあげて」
閉会式が終わると、渚は一目散に自分の元へとやってきた。
「パパ・・・今日はなんで一緒に走れなかったの?」
目に涙を溜めて、こっちを見る渚に、ごめんとしか言えなかった。
見かねたまひろが手をパン!と鳴らした。
「よし!じゃあ、今、走ればいいでしょ?」
キョトンとする渚と自分を横目に、歯を出してにっこりと笑って見せた。
すると、その笑顔につられた渚が、同じような笑顔を自分に見せた。
「うん!やるやる!パパと走る!」
「よし!やるか!!!」
周りを気にすることなく、渚の手を取り、幼稚園の中央へ向かった。
持ってきた白いタオルを二人の足に巻いたところで、近くにいたまひろが手をピストルの形に変えた。
「よ~い、どん!!!」
幼稚園の庭は大人からすればとても小さいが、渚にしてみればきっと広く感じているのだろう。
走っても走ってもなかなかゴールまで到着しない。
でも、この時間がとにかく愛おしかった。
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