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仮 3月の冷たい雨  作者: 春咲桜
20/25

責任4

展示場に着くと、ご主人は一人テーブルでコーヒーを飲んでいた。


「広瀬さん、お待たせしました!」


「どうも」

引渡し時には穏やかで優しい表情だったものの、その表情から一変していた。

怒りに満ちているような、冷たい表情だ。


「これ、家の写真を撮ってきました」


クロスのはがれた様子が見て取れる写真を2.3枚テーブルに並べた。


写真をわざわざプリントアウトするとは、本当に几帳面な人だ。


「引渡しから、まだ2か月も経っていないんですよ。こんなに剝がれるなんて、施工時に問題があったとしか思えません」


確かに、クロスは剥がれ、わずかに気泡が入っているようだ。


とはいえ、施工中は何度も確認しているし、輸入物のクロスを使ったということもあって、その箇所は念入りに確認をしていた。


そう簡単に、はがれるとは思えない。


「お写真だけだと、わかりかねます。現地を見させていただいても良いでしょうか」


コーヒーをずずずと音を立てながら、一口飲んで、広瀬さんが口を開いた。


「わかりました。では、後ほど」


1時間のタイムリミットは、刻刻と迫っている。


焦って事故を起こさないように運転するのが、精一杯だった。




「ここです」


家に着くと、すぐさまご主人が、子供部屋のクロスを案内してくれた。


指をさした先は、確かに剥がれている。



がちゃ


「ただいま」



その瞬間に玄関ドアが開いた。


奥さんだろう、聞き覚えのある声がする。


「あら、片桐さん。どうかなさったんですか?」



「奥さん、お邪魔してます。どうやら、クロスのはがれがあるようで。確認してます」



「そうですか・・・ご苦労様です」



ん?あまり気にしていないのだろうか。

明らかにご主人とは温度感が違っていた。



「pu~~~」

携帯の着信音らしきものが、遠くから聞こえてくる。


「すみません、仕事の電話だと思います。出てくるので、少しお待ちください」

ご主人が、すぐさまその場を離れた。



「あの・・・」

その瞬間を、待ってましたと言わんばかりに奥さんが口を開いた。


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