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仮 3月の冷たい雨  作者: 春咲桜
16/25

手伝い 3

足元からじりじりと来る暑さに、デスクワークでだらしなくなった体は、悲鳴を上げる。


「広瀬さん、この草、どうしますか?」

ひとしきり雑草を抜いて、きれいな土が顔を出した。


「そのあたりにまとめてください!」


抜き終わった雑草を抱えて、庭の端にまとめる。

その工程を3往復くらいしたところで、丸まった腰をもとの位置に戻した。


「片桐さん、よかったら水分補給しましょ!」


ウッドデッキに腰を掛けて、奥さんが持ってきてくれた冷たい麦茶で体を冷やす。


「片桐さんがいてくれて本当に助かりました。ありがとうございます」


「この程度でよければ、いくらでもお手伝いしますよ!」

明るくはにかむと、続きの作業をするべく、立ち上がった。


「よし!あともう少しですね!」



奥さんは無言で優しく頷いた。




俊の背中を見る瑠璃は、まるで子供を見るかのように優しく見つめるのだった。





「お邪魔しました!」


作業を終えると、夕方の4時を過ぎていた。


「すっかり遅くなってしまいましたね。お仕事、頑張ってください」


玄関で見送る奥さんに頭を下げて、アクセルを踏んだ。




「戻りました~」

会社の扉を開けると、みんなの視線が痛い。


そりゃあ、汗だくなうえに、シャツは土で真っ黒。

みんなが気にするのも無理はないだろう。


「課長!どうしたんですか?!」

有川が目を丸くして、自分の姿を上から下までじっくりと見る。


「いや、お客さんの庭掃除を手伝ったらさ・・・」

腕に付いた土を払いながら、言った。


「お人よしっすね~」


「まあな」

照れくさそうに笑うと、そのまま給湯室に入り、腕まで勢いよく水をかけた。


それにしても奥さん、あんなに庭づくりを意気込んでいたのに・・・

まるで、やる気を失っていたようだな・・・



心に、とげが刺さったようなもどかしさを感じながら、デスクに戻った。


チェックしなくてはいけない書類が山積みになっている。


今日は残業が確定だ、と思いながらも、早く家に帰りたい一心で仕事を進めた。

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