手伝い 3
足元からじりじりと来る暑さに、デスクワークでだらしなくなった体は、悲鳴を上げる。
「広瀬さん、この草、どうしますか?」
ひとしきり雑草を抜いて、きれいな土が顔を出した。
「そのあたりにまとめてください!」
抜き終わった雑草を抱えて、庭の端にまとめる。
その工程を3往復くらいしたところで、丸まった腰をもとの位置に戻した。
「片桐さん、よかったら水分補給しましょ!」
ウッドデッキに腰を掛けて、奥さんが持ってきてくれた冷たい麦茶で体を冷やす。
「片桐さんがいてくれて本当に助かりました。ありがとうございます」
「この程度でよければ、いくらでもお手伝いしますよ!」
明るくはにかむと、続きの作業をするべく、立ち上がった。
「よし!あともう少しですね!」
奥さんは無言で優しく頷いた。
俊の背中を見る瑠璃は、まるで子供を見るかのように優しく見つめるのだった。
「お邪魔しました!」
作業を終えると、夕方の4時を過ぎていた。
「すっかり遅くなってしまいましたね。お仕事、頑張ってください」
玄関で見送る奥さんに頭を下げて、アクセルを踏んだ。
「戻りました~」
会社の扉を開けると、みんなの視線が痛い。
そりゃあ、汗だくなうえに、シャツは土で真っ黒。
みんなが気にするのも無理はないだろう。
「課長!どうしたんですか?!」
有川が目を丸くして、自分の姿を上から下までじっくりと見る。
「いや、お客さんの庭掃除を手伝ったらさ・・・」
腕に付いた土を払いながら、言った。
「お人よしっすね~」
「まあな」
照れくさそうに笑うと、そのまま給湯室に入り、腕まで勢いよく水をかけた。
それにしても奥さん、あんなに庭づくりを意気込んでいたのに・・・
まるで、やる気を失っていたようだな・・・
心に、とげが刺さったようなもどかしさを感じながら、デスクに戻った。
チェックしなくてはいけない書類が山積みになっている。
今日は残業が確定だ、と思いながらも、早く家に帰りたい一心で仕事を進めた。