手伝い
会社の窓から、きれいな青空が顔を出している。
「いい天気っすね~~」
楠さんの打ち合わせ準備をする有川がため息を漏らした。
「こんな時は、湘南の海で女の子と遊びたいっす」
2日間ずっとデスクに向かっている有川があまりにかわいそうで、パソコンを打つ手を止めて、返事をした。
「そうだな~。ま、頑張れ。あと2週間もすれば仕事も落ち着くさ」
そんな時、1通のメールが届いた。
アドレスに見覚えが無く、無意識にメッセージを開く。
<お久しぶりです。瑠璃です。片桐さん、お元気でしたか。
引渡しから2か月が経ち、ようやく荷物を片付けることができました。
よろしければ、ぜひ、遊びに来てください。>
お客さんからのこういったメッセージはよく届く。
関係をうまく築けた証拠だろう。
純粋に嬉しかった。
<広瀬さん、お久しぶりです。
ぜひ、今度お伺いさせていただきます。>
簡単に返事をして、仕事に戻った。
2日後、商談の関係でたまたま広瀬さんの家から10分ほどの家に行くこととなった。
商談の感触は今一つで、少し気分を上げるために空を見上げて、伸びをする。
「天気もいいし、せっかくだから、広瀬さんをお邪魔してみようかな」
すぐさま携帯を開いて、広瀬さんの電話番号を見つけた。
コール音がしばらく続き、電話越しに優しい奥さんの声がした。
「お久しぶりです。片桐です。突然のお電話申し訳ありません」
「片桐さん、お久しぶりです。先日は返信ありがとうございました」
「いえ。突然なのですが、今近くまで来ておりまして・・・」
「あら、そうですか!ぜひ、家を見ていってください!」
突然の話にも関わらず、奥さんは快く招待してくれた。
近くのデパートで手土産を探し、車を走らせる。
10分ほどで見覚えのある三角屋根が顔を出した。
玄関の周りには、花が植えられて、より家の良さを引き立てていた。
見慣れたチャイムを押すと、中から、奥さんの足音が聞こえる。
ガチャ。
「片桐さん!わざわざ来てくださってありがとうございます」
重めな玄関ドアを開けながら、奥さんが楽しそうに顔を出した。