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仮 3月の冷たい雨  作者: 春咲桜
13/25

1年後 3

「かんぱい!」

キンキンに冷えたビールを流し込む。


「有川、よくやったなあ」

「ありがとうございます、課長に支えてもらったからですよ」


自分のことのようにうれしくなり、ついついお酒が進む。


「課長も、広瀬さん、良いお客さんでよかったっすね」

「ああ、本当にそうだよ。わざわざプレゼントまで用意してくれるなんで、優しい方だよな」


「でも、課長。奥さんに心配されちゃいますよ?」

ぼんじりにかぶりつきながら、有川は言った。

「ほら、課長、すぐモテるから。それこそ、奥さん、気が気じゃないんじゃ・・・?」


「いや、そんなことはないよ。しっかり線引きしているよ」

ビールが底をつきそうになり、店員を呼んだ。


「そうですか?実際、誘惑されたこと、ないんですか?」

来た店員には、同じものと言わんばかりに、ビールを指さした。

バインダーに何かを書きこむ店員は、そのまま厨房へと戻る。


「生2つ!」

店に響く店員の声に少し驚きながら、話し続けた。


「もちろん、今まで少し距離が近いと感じる人はいたよ。営業だからね、お客さんと親密になることだってあるし」

「でも、相手も相手っすね。だって、家庭を持っているんですよね?」


「そりゃあ、な」


「はあ・・・そんな女、こっちからお断りっすね」

「だから、有川も、気をつけろよ!不倫に巻き込まれると、厄介だぞ」


「そんなバカみたいなこと、俺がすると思います?」

またも、ぼんじり片手に話を続ける。

「いや、お前ならやってもおかしくないよ」

「そんな~~」





「ありがとうございました~~!」

店員の明るい声を聞きながら、暖簾をくぐった。


「課長!今日はごちそうさまでした!」

「いやいや、またごちそうするよ」


タクシーを拾って、家へと向かう。

夜の11時を回っていて、寝息の響く静かな家の扉をゆっくりと開けた。


キッチンには味噌汁が鍋に入ったままになっており、付箋にまひろからのメッセージがある。


「おかえりなさい。よかったら飲んでね」


温かい味噌汁を飲みながら、アルコールで満たされた体を少しずつ浄化していった。



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