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巨人になった私  作者: EVO
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そして始まる

うつらうつらと目を覚ました、目蓋は重くて少ししか開けられない。


「あ、大丈夫?」


「うん」


まだ日は暗い、ふとリリィに甘えたくなった私は手を伸ばした。


「んー」


「え?」


いつもならすぐ察してハグを交わすのに、今日のリリィは戸惑った様子だ。

私は構わず手を回してギュッとハグをした、ついでに頬にキス、満足したのでそのまま寝た。


「はわわ・・・」



***



次の日の朝、目を覚ますとママとパパが近くに居て面接の事や戦いが大変だった事を吐露した。

なんかモヤモヤというか、悔しいというか、なんとも表現しにくい気持ちが燻っていて、愚痴らずには言われなかった。


2人は私の話を聞いて大変だったなと言ってくれた、そう大変だったんだよ・・・


その後は軍と保安部からいくつかの聞き取り調査を受けて、1週間ほど大人しく過ごした。

怪我もあるけど、受験の事もあって何かをする気になれなかったのだ。


あの戦いは多くのスマホで撮影されて拡散、心配した知り合いが次から次へとお見舞いに来てくれた。

上は大統領、副大統領、軍総司令、普段は忙しいハリウッドスターのフレンドもわざわざ基地のホームまで足を運んでくれた。


「思ったより元気そうで良かった」


「うん、別に大怪我って訳じゃないから」


ハイスクールのクラスメート、チアリーディングクラブのみんなやコーチも揃って心配してくれた。


私も拡散された動画を見た。

銃を持って乱入した市民を庇う際に数十m派手に転がっていたし、組み付いた後は延々と殴られ続けるシーンで、かなりヤバく見える。


まあ性差を言うつもりはないけど、女性が殴られ続けるシーンってイメージ悪いもんね。

私としては格好悪いからあまり見ないで欲しい、複数拡散されたからどうにもならないんだけどね。


そうしてゆっくり過ごし、怪我も殆ど治った辺りでママとパパに分厚い封書が届いた。

送り主はジョー・ホプキンス大学、遂に結果が届いた・・・


「まあ、落ちてるけどね」


「大丈夫だろ」


「えー、面接途中退席したのに?」


「大丈夫よ、きっと」


ホームに集まったのは封書を受け取ったママとパパ、リリィとアーニャ、私達の担当エージェントであるジョセフさんと小夜さんだ。


「開けるよ?」


「う、うん」


ペーパーナイフで開かれ、パパが1番前にある書類を取り出した。


「サナ・・・、おめでとう!合格だ!」


「え」


「Yeah!だよなー」

「勿論そうでしょ」

「まあ妥当な結果だ」


皆、口々に私を祝福してくれた。

私は逆に信じられなくて言葉が出てこない


「なんで? 面接途中退席だよ? 普通不合格でしょ?」


「いやいやサナ、急病や、やむを得ない事情の時は普通に配慮されるだろうよ」

「ましてや敵性生物来襲の緊急時、当然でしょ」


「あ」


「サナ、簡単な手紙も入っているよ、面接に関しては所定の質問は聞き終えていたから、特に評価が上下する要素はない、だって」


「わ」


じゃあ本当に合格したんだ。

うわ、じわじわと胸の内が熱を持っていく、うわ、うわ、嬉しい!


「へ、へへ、合格?」


「ああ、おめでとうサナ!」


「サナちゃんおめでとう!」


「あ、ありがとう」


「つうか大統領の推薦状なんて貰って落とせるかね」


「クロフト、台無しよ」


「公正は喫しているよ、それに大統領の推薦状が無くても、サナの成績や内申書、活動報告、収入証明書、等、どれをとっても現役合格は揺るがなかったよ、身内の贔屓目を抜きにしてね」


「大変なのはここからでしょ、頑張ってねサナちゃん」


「うん!」


よく言われるのが日本の大学は入るのが難しくて出るのが簡単、アメリカは入るのが簡単で出るのが難しい、と俗説が有るけど、そんなことは無い。


アメリカは州立大学があって、あそこだと州民ならタダみたいな学費で殆ど入れてくれるんだよね。

逆に名門私立だと入るのも出るのも大変なので、振れ幅がかなりある。

つまり日本もアメリカも入るのが簡単な大学も有るし難しい大学もある、出るのも同様で国による差はあまり無い。


まあなんにせよ、私は医大生になる事が出来た、やった!やった!





この日はママとパパが事前に祝勝会を準備していた、私の合格を信じていたから落ちるとは欠片も考えてなかったみたい。


「落ちたら落ちたで残念会だ、まあ合格したんだ、いいだろ?」


「うん!」


基地でも私の御祝いに便乗して皆がお酒を片手に祝福してくれた。

縁もたけなわ、お酒の場によくある混沌とした雰囲気が場を染め始めた頃合にそれは起きた。


「サーナー」


「うわっ、アーニャ!?」


アーニャが顔を真っ赤にして私に絡み始めたのだ


「おいおい、ロシア出身なのに酔ったぞ」


「何飲ませたんだよライアン」


「蒸留酒、アナスタシアなら行けるかと思ってよ」


「強過ぎるだろ、68度!?」


聴こえてきた会話に目を剥いた、流石にお酒に強いと言われるロシア人でも未だ20歳そこそこの飲みなれていないアーニャが飲むには強すぎる。


「サーナー、さーなー!」


「はいはい、水飲みなよアーニャ」


「いーやー、邪魔しないでクロフト、ワタシはサナと大事な話があるのー」


「大事な話?」


「責任取って」



意味が分からない、リリィを見ても首を傾げているし、なんの事だろう。

と、思った私にアーニャはトロリと目が溶けた様子でキスをしてきた。


「え」

「は?」

「むふー」


私は固まった、リリィはピキリと青筋を立てた、アーニャは満足気な様子で私に絡み付いた。


「サナはぁ、私のハジメテを奪ったんだからぁ、責任取ってね?」


「サナ、どういうことだ? 浮気か?」


「さ、さあ?」


「酷いー、サナ、私の唇奪ったくせに!」


「「「・・・」」」


いや、みんな凄い目で私を見てる、知らないよ?


「ほーらぁ、面接の夜、クロフトの代わりにお世話してたらサナが」


「あ、あれか」


「ほう? サナ浮気たぁ、良い度胸してるな?」


「いや、私リリィだと思って・・・」


「酷い!ワタシの事は遊びだったのね!」


アーニャ酔い過ぎぃ!

リリィもお酒が入ってるせいか少し目が据わっている


「リリィ、無罪を主張します」


「棄却、有罪(ギルティ)


「ぎゃー!?」


「あはぁ、あははははは!」


お酒の場だからこそのおふざけかと思ってたら、みんな解散した後にリリィに酷い目に遭わされたのは言うまでもない。

足腰立たな、いや何でもないです。


後日、私はアーニャと新しい関係に踏み出す事になるとは思ってもいない。






まあ、こうして家族や仲間、大切な人達とこれからも生きて行くのだと思う。

敵性生物は未だ現れるし、根本的な解決は先になる、巨人のままなのか戻れるかも分からないけど、私は今の自分を受け入れているし、このままでも構わないと思っている。


色々大変な思いも経験もしたけれど、きっとみんなが居るなら頑張れるだろう。






Fin.

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[一言] 毎日楽しみにしてました、感想とかはうまく書けないですが、毎日楽しみにしてました。 ありがとうございます、お疲れ様です。
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