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ボルカノダンジョンへようこそ!  作者: ひらえす
第1章

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6/16

3.予想より財政難でした


 アレンダンは日課の朝の鍛錬を終えると、井戸の水で顔を洗った。

「おはよーお兄さん!早いね」

「あ、ミクシちゃんおはよう。おかげで身体が動く様になったよ」

「あ、お風呂なら開いてるからね。うちは温泉で源泉掛け流しだから気持ちいいよ!」

「へ?朝からいいの?」

「ごめん、話してなかった?」

「いやいや、ほら、風呂は別料金で夜だけ、みたいな感じかなと……大抵そうだったし」

 ごめんねぇ、とミクシは眉を下げた。

「うちは温泉だからいつでも沸いてるし、掃除時間以外はいつでも入っていいよ。ただし綺麗に使ってね、って感じなの。だからお客さんならいつでもいいよ」

 じゃあ、朝の仕込みがあるからまたね!とミクシは去っていった。

「ボルカノは温泉の町なのか……」

 少し歩いて、宿の表庭に出た。そこから東を見るとちょうどボルカノ火山から朝日が昇るところだった。

「久しぶりにちゃんとみたな……」

 朝日が登りはじめると、ボルカノ火山のシルエットが黒く浮かび上がる。頂上近くからは、薄く煙が立ていた。

「5合目あたりに入り口がある、か……」

 自然とアレンダンの口から言葉が漏れる。

「ボルカノダンジョン……」


 現在のアレンダンの肩書は、冒険者ギルドボルカノ出張所長兼ボルカノダンジョン第一次調査隊長である。

(調査隊って言っても、俺しかいないけど……)

 アレンダンの計画では、本来ならば、そろそろダンジョンに少しずつチャレンジしているはずだった。しかし、思っていたよりもボルカノの暑さに身体がついて行かなかったことと、ギルドの出張所の状態が悪すぎた為に、まだそこまで行き着けない。アレンダンの前任者は、タイフーンで小屋が壊れるのとほぼ同時にやめると言い残して行方不明になっている。その際にかなりのまとまった額の現金と、いくつかの貴重なギルドの備品が無くなっているようだ。その上、それまでのギルド出張所としての仕事はミクシ達に丸投げしてしまっていたらしいのだ。この10日余り、暑気あたりに苦しみつつもアレンダンがやっていたのは、前任者の後片付けだった。

(まあ、それもやっと見通しはついたかな)

 王都のギルドには、先程、貴重な伝信鳥を飛ばした。1週間以内には、何らかの返信があるだろう。

(早いとこ本題に取り掛からないとなぁ……)


 アレンダンの主な任務は、5年前にボルカノで発見されたダンジョンの調査だ。本来新しいダンジョンの発見ともなれば、もっと冒険者が押し合いへし合いして訪れ、自然と人と情報が集まるものだ。いわゆる金の成る木と言っても過言ではない。

 しかし、このボルカノダンジョンはそうはならなかった。まず、最初の段階で冒険者が何十人も帰らぬ人になったと言われているのだ。

(まず、ダンジョン自体が、今も噴火を繰り返す火山の内部にあるとされている)

 アレンダンは、王都で持たされた、貴重な資料をもう一度読み返す。

(それでも、一応3階層までは辿り着いて、帰還した冒険者の記録が残ってるんだよな…)

 逃げ出した前任者も、2階層のマップを少しだけ作っている。

(しかし、それだけだ)

 前任者の前も、その前も、何故かそれなりに名のある冒険であったり騎士位を持つ下位貴族だったりしているのだが、その者たちは逃げる様にボルカノを去っている者が多い。そして、危険を承知でダンジョンの挑んだはずの冒険者パーティーが、いくつか帰ってきていないとも言われている。

(そもそも来たかどうか、ダンジョンに潜ったかどうかも証明できないらしいんだよなぁ……)

 ミクシ達にも尋ねてみたのだが、冒険者達が来ていたのは分かっているし宿帳にも記録があるのだが、半分くらいのパーティーは、ダンジョンに入ったところ見たものがいないのだ。ミクシ達もその時には王都から来た騎士達に、証拠として色々なものを持って行かれたり、調査と称して取り調べられて、あからさまに疑われて嫌な思いをしたという。

「それはさておき……ダンジョンに行くなら、ギルドの出張所をちゃんとしといた方がいいだろうしなぁ…となると、無くなった金が無いと足りないんだよな……」

 アレンダンは堂々巡りし始めた思考を、一度止めた。

「ニックさんに設計書を持って行って、後から増築できる様に作ってもらうか……?」

 うーんと伸びをして、あちこちを伸ばしながら、身体のチェックをしつつ部屋に向かう。入り口のタタキのところで横になる猫を撫でさせてもらった。どうやら本日は顎の下を撫でてほしい様だ。そより、と朝の清々しい風が通っていく。ふと、遠くの方で蝉の鳴き声が聞こえてきた。

(とりあえず、朝風呂に入らせてもらおうかな)

 せっかくの温泉だ。堪能させてもらうことにしてたアレンダンはウキウキと部屋に戻って行く。

 

 その後ろ姿をこっそり見送っていたのは、茶トラの猫と飼い主の少女だった。

「ね、猫好きに悪い人はいないよね、イコモチ」

「なーぉ」

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