表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボルカノダンジョンへようこそ!  作者: ひらえす
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/16

幕間〜ミクシと髪と櫛と猫

お久しぶりです。

投稿が途絶えている間も、お気に入り登録や誤字報告ありがとうございます。

少しずつ復活していくつもりです。

どうぞよろしくお願いします。、

 ボルカノ火山の降灰があると、髪の毛は潤いを失ってキシキシと絡む。

 髪を丁寧に洗ったのち、宿の従業員専用の風呂(これも温泉であるが)に浸かり、ミクシは溜息をついた。

「まあいいよね、あとで手入れすればいいんだから」

 適量の椿油と、それに漬け込んで手入れをしたツゲの櫛で丁寧に梳くことで、ミクシが密かに自慢にしている、コシの強い豊かな髪はツヤツヤになるのだ。

 ついでに顔や手、肘や膝も手に残った椿油で包み込むように保湿することで、降灰のダメージもケアできる。

(うーん……お兄さんにも椿油とか馬油とか、お勧めするべきかな)

 お兄さん=ギルドの立て直しに来たアレンダン。最近目に見えて日焼けして来た青年のことを思い出した。

(お肌のお手入れ品くらい持ってるとは思うけどさ。都会と同じものはボルカノだと高いんだよね)

 自分の宿で扱っているスキンケア用品の中には、王都や近隣の都市から取り寄せたものも一応ある事はあるのだが、輸送費やらのコストが高すぎて定価の2倍近い値段にしないと利益が全く出ない。

 そして、もうひとつ。王都ではどうやら数年前から肌を白くする効果がある、とたくさんの人に使われているらしい化粧品や化粧水の中には、ボルカノの温泉と相性の悪いものがある。

 ボルカノの温泉成分が肌に残ったままそれを使うと、効果が出過ぎて肌がピリピリと赤くなるのだ。

(まあ、ターンオーバー?とかの効果があるとか無いとかだけど、そのまま日焼けすると跡が出て来るらしい……だったよね)

 母が病死してから、そのあたりの商品管理までやるようになってからもう3年ほど。だいたい情報も頭の中に入って来た。ちなみにミクシは肌が強いのか、温泉入浴後にその化粧品を使っても、全く問題は出なかった。

「色白にもならなかったけどねえ……」

 ぽつりと呟くと、磨りガラス張りの扉の向こうに、茶色の塊の姿が伸び上がり、カリカリと硝子を引っ掻く音がする。

「イコモチどうかしたの〜?」

「うなーぉ」

 返事をした猫のために、ザバリと浴槽から出た。髪の水気を軽く振り払い、裸身に大版のタオルを巻き付ける。

 扉を開けてやると、もふもふ茶トラの猫は風呂場の中をうろうろと歩き回り、洗い場の鏡に伝う結露を舐めていた。これはこの猫の謎のクセのひとつ。足の裏が濡れるのは嫌らしいが、どうも結露が気になるようだ。


 ラクシの目に、鏡に映る自身が見えた。やや小柄ではあるが、それなりに女性らしく出るところは出ているし、ツヤツヤと張りのある小麦色の肌は嫌いではない。

 にぱ!といつもの癖で笑顔を作り、棚の中の化粧水で肌を整える。


(そうそう、明日のお昼のメニュー、変更だったな)

 アレンダンがもらった食材を差し入れてくれたので、ちょっと豪華になる予定なのだ。

「ねえ、イコモチ。お兄さんは良い人だよねぇ」

「なーおぅ」

 少し濡らしてしまったらしい尻尾をぶんぶん振り回していた猫は、その尻尾をピンとのばした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ