第90.5話 パーティ
凄く短くなってしまったので90.5話とさせていただきました
「なあ卿人よ、刀身光らせるエンチャントって出来るか?」
その日は天気も良く、順調に馬車を転がしていた。
日も中天にさしかかる頃、そろそろ康造さんも斥候から戻ってくるし、お昼にでもしようかとぼけっと考えていたらサムが話しかけてきた。
「刀身を光らせる?」
「ああ……」
思いつきで口にしたらしく、そこで少し考えてから再び口を開く。
「こう、照り返しじゃなくてだな、刀身自体の光で剣閃が描けたら……」
「描けたら?」
「格好良くないか?」
「すげえかっこいい!」
ようし、早速魔法式組んでみよう。
一応御者台には座っては居るが、バリオスに任せておけば問題無いので本格的に魔法式を汲み上げ始める。
光属性のエンチャントをベースに適当に魔法式を並べていく。
円筒形でもいいのだけど最近はタブレットみたいな範囲に連続した魔法式を流す形式にしている。検証するときは円筒形の方がいいのだけど、とりあえず並べて置くだけならこの方がコンパクトで良い。
絵面的には光る透明な画面が空中にたくさん浮いている感じだ。
しばらく組んでいたら飽きたのかサムが隣でいびきをかき始めた。そっかー、魔法使えない人にはつまんないか。
もうしばらくすると浮かせてる魔法式が大量に増え始めて、タブレットを10コくらい同時に見てる感じになってしまった、剣と魔法の世界なのにSFみたいな絵面になってるに違いない。
そんな風にしてたら背後のとびらからペイマがひょこっと顔を出した。
「ケイト、そろそr………」
大量に浮かんだ魔法式に気付いたペイマは、口をぽかんと開けると目をゴシゴシこすって。
「まだ寝ぼけてるのね」
といって馬車にひっこんでしまった。おい。
「ペイマ起きてるよ! 正常だよ!」
「えー……」
嫌そうな顔で再び顔を出すペイマ。
「なにそれ、世界を破壊する魔法でも作ってるの?」
「ちがうよ、刀の刀身を光らせる魔法だよ」
「……ごめん何の意味があるの?」
「え、格好よくない!?」
思い切り呆れた顔をされてしまった。
そうかー……格好いいのダメかあ……。
後で気付いたのだけどこの思考の仕方は大賢者ノートル師匠のそれとほぼ同じ。
つまりは変態って事だ。
「まあ、ケイトのそのガントレットもその思考から生まれたのだと思えばありなのかもしれないかもしれないわね」
「そんな褒めないでよ」
「褒めてないわ」
「ですよね」
そんなやりとりをしながらもうひとつ魔法式のダブレットを増やす。
案外難しいなあ、ただ刀身を光らせるだけなんだけど、こだわり始めると際限が無い。
そんな僕の様子を「才能の無駄遣いよね」とジト目でみていたのだけど、ハッと何かに気がついて。
「そうだ、あんまりにも馬鹿らしくて忘れてたけど、コウゾウから連絡無い? お昼過ぎだからそろそろ連絡があってもいいと思うのよ」
「え、ああ……ないねえ」
酷いこと言われた気もするけど流しておく。簡易通信魔道具は着信履歴も着くようになってるんだけど、着信は無かった。集中しすぎていて気付かなかったという事は無いみたいだ。
とはいえ少し遅いのは間違い無いのでこちらからかけてみる……。
2コールで繋がった。
「もしもし?」
「すまぬ遅れた」
『うわびっくりしたあ!』
真上から声が降ってきたので僕もペイマも思わず見上げてしまった。
どうやら今戻ってきたらしく、通話を切断すると馬車の屋根からすとんと降りてきた。
「少し先で魔獣が群れていてな。排除に時間が掛かった」
「あ、倒してきたんだ」
康造さんはこうやって偵察ついでに可能ならば障害を排除してしまうことも多い。
事もなげに言っているが、単騎で魔獣の群れの排除をしてしまうとか威力偵察と呼ぶにはちょっと強すぎる。
「んが?」
さっきの僕らの悲鳴でッサムが目を覚ました。
「を、なんだ? 刀光る魔法出来たか?」
「そんなに早くできるわけないでしょ!?」
「出来たよ!」
「出来たの!?」
多少雑だけどもご要望に添うのは出来たはず。
康造さんも帰ってきたので昼食に。でもその前に新しくできた刀身を光らせる魔法のお披露目となった。ペイマと康造さんも興味があるみたいで付き合ってくれるらしい。
試し斬りは僕が受けることにした。巻き藁を用意しても良かったのだけど、多分僕がガントレットで受けた方が刀への負担も少なくて済む。
というわけで。
広げてあった十数個のタブレットを重ねて圧縮、マナを走らせて……。
「『魔法付与:栄光の元に輝け鐵』」
「大層な名前ねえ」
「文句はサムに言って」
サムの正眼に構えた刀にエンチャントが掛かる。
見た目なんの変化も無いが、サムがその場で型を取ると、刀身から流れるように光があふれ出した。刀の動きに追従するように、白く発光する残像が現れる。
白昼にもかかわらずその光ははっきりと視認出来、かなりの光量がある事がわかる。
いやまあ、僕が設定したのだけど。
「おおー」
感心しつつ刀を振り続けるサム。ご要望には応えられているようだ。
僕もイメージ通りに出来ていて満足していたのだけど。
「やっぱり何の意味があるか分からないわ」
「昼間では効果が薄いな、かといって日が暮れてから有用かというと……」
反応はあまりよろしくない。
そうじゃないんだよー。刀が光るからかっこいいんじゃないか!
「じゃあサム、いよいよぶつけてみようか」
「おう、派手に光るんだよな!」
「ああ、すっげえ光る!」
僕は盾を構えてサムと対峙する。
「強く当たると強く光るんだよな?」
そう言って大上段に刀を構える。
「来い!」
気分は真剣勝負。まっすぐに突撃してきたサムに対して思わずカウンターを仕掛けそうになるのをぐっとこらえる。
それほど、サムの攻撃は本気だと言うこと。
正面からまっすぐに斬撃を受け止めて……。
莫大な光量に目を焼かれた!
『ぎゃああああああああああああああああああああああああ!?』
僕も、そして悲鳴からしておそらくはサムも、両目を押さえて転げ回る羽目になった。
「くそっ! 敵襲か!? いったいどこからっ!?」
「目が! 目がああああああああああ!? ああああああああ!?」
「なにやってんのよ……」
サムと僕は目をやられつつもふざけてみたのだけど、ペイマの反応は極めて冷徹だった。
白黒龍グラオとの戦いに勝利してから、半年たった昼下がりである。
グラオ戦を書き上げてちょっと気が抜けてしまって……
大変申し訳ございません、
どうぞご了承くださいませ
スプラたーのしいいいいいい!(おい




