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待雪草は誰がために咲く  作者: Ncoboz
第3章 卿人編
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第88話 白黒龍

きた! ドラゴンだ!

 真後ろに吹っ飛ばされた「翼壁ウィング」は2、3度地面にバウンドすると、最後は馬車のひとつに叩き付けられて停止。ずるりと地面に崩れ落ち、ぴくぴくと痙攣していた。


 まだ生きてる!


 九江卿人ぼくは反射的に「翼壁」に駆け寄った。周囲には怪我をしているもの、していないものも両方居るが、少なくとも今時点で最優先は「翼壁」だ。非戦闘員はもちろんみんな固まったまま動かない。おそらく、「翼壁」があっさりやられたことと、ドラゴンの偉容に萎縮してしまっているのだろう。僕がやるしかない。


「『炎槍フレイムジャベリン!』」


 ドラゴンの横っ面にペイマの魔法が炸裂する!

 僕が駆け出したのに合わせて放ってくれたみたいだ。慎重派のペイマがそんな援護をしてくれるなんて思わなかった。いや、僕が突っ込んだせいだな、反省。

 続いて康造さんが爆破クナイを顔に向かって投げつけ、さらに援護。爆破の煙によりドラゴンの頭が煙に包まれる。


 僕が「翼壁ウィング」の所まで到着すると、彼は白目を剥いて痙攣していた。受けるのに使ったタワーシールドは無残にもひしゃげ、真ん中から折れ曲がってしまっている。鋼の胸当ても凹んでしまっており、衝撃の大きさを物語っている。

 すぐに胸当てを外し、クロースアーマーの上からだが診てみると・・・・・・うん、骨折はしているみたいだけど、折れた骨が内臓に刺さったりはしてないようだ。自信に掛けていたバフがきちんと効いていた証拠だろう。ランクAタンクの名に恥じない頑丈さだ。普通なら盾ごと真っぷたつになっていただろう。

 回復魔法式を展開、圧縮、発動。淡い光が「翼壁」を包み込む。


 その間に状況確認。

 馬車列はドラゴンを囲むように半円状に配置されている。これは本来、最終防衛ラインの構築をするためにこんな形で止まっているのだろう。だが、簡易の防壁や土嚢が一切構築されていないことから、停車した直後に襲われたのだろう。康造さんならともかく、並の斥候ではドラゴンの接近報告に間に合わなかったと思われる。騎士団の半分と、ドラゴンと戦うために集められた冒険者が軒並み倒れ伏していた。

 

 これは、良くないねえ。

 ぱっと見ただけだけど、死人は出ていないようにみえる。これは「翼壁」や騎士団が強いのでは無く、いや強いのだけれど、ドラゴンが遊んでいるとみた方が良い。

 ドラゴンに突然襲われた上で僕達が到着するまで戦闘をしていたのなら、特に戦闘員は何人か欠落していても何ら不思議は無い。

 「翼壁」のおかげというのももちろんあるけれども。それを含めてドラゴンが手加減していたのは間違い無いだろう。

 とはいえ、倒れている連中も虫の息には変わりない。リマイ伯爵の姿を探すも、見える範囲には居ないようだ。馬車のどれかにいるか、逃げたか、あるいは。


 ドラゴンだが、突然の横やりにダメージを受けた様子も無く、悠然と構えている。


 浅黒くゴツゴツとした表皮は刃物など通せるようにはとても見えない。

 丸太のような4本の足、そこから伸びるかぎ爪の付いた足指。

 大きな翼を広げれば視界の殆どを遮られてしまう。

 全てを睥睨するかのような瞳。口からはちろちろと炎が漏れ出している。ブレスをいつでも放てるぞ? という威嚇だ。


 こいつは、白黒龍。龍種の中でも上位の存在だ。

 純龍種の補佐を務めるような種類で、人間種以上の知性を備えた、ともすれば純龍種と間違われかねないような、そんな存在。

 そんなモノがはぐれドラゴン、だって?


 とりあえず疑問を放置、治療途中だが「翼壁」を馬車にもたれかけさせる。放っておいても死なない程度には回復したはず。

 途中で止めるのは申し訳ないが、状況がマズイ!

 ドラゴンが、ペイマ達に向けて首を巡らせたのだ。一度ぐるりと首を回すのは、ブレスの予兆だ。実はさっきの妨害でめっちゃキレててブレスで全部なぎ払うつもりかもしれない!

 

 僕が立ち上がるより早く、ドラゴンの前に着物姿のコーカソイドサムライ、サムが両の手に刃を携えて迫る! 自身の気による身体強化と、バフの効果も手伝ってその速度は外套の白色が尾を引いて霞むほど。大柄なサムがこの速度で迫ってきたら正直怖い。

 ドラゴンは反応して右前足を動かすが、それよりもサムの攻撃の方が早い。

 下段に携えた2刃を交差し、飛び上がりざまその右足を斬り上げていく!

   

座残惨山挫暫坐斬ざざんざんざんざざんざざん!」


 だから技名の癖が強いのよ・・・・・・。


 ずばばばばば! と音が聞こえてきそうな程の剣閃の乱舞!

 ドラゴンの足に切り込んでいくが、その硬い外皮を傷つけるにとどまってしまっている。


 だがそれは、効果が薄かったわけではない。

 よく見れば、ドラゴンの体表に魔法式が展開されているのが見える。


 あれはドラゴンのバフだ。魔法による防壁を貼っている。もちろん自前の気の防御ももっており、その硬さはセイバーファングの比では無い。自動再生能力を持たないドラゴン相手に、本来ならじわじわと削っていくところをサムは一発で抜いて見せたのだ。


 だが次の瞬間、斬り付けてない方の足・・・・・・左足を叩き付けられてぶっ飛ぶサム。

 飛び上がりざま斬り付けてしまったために、身動きのとれない空中で為す術無くもろに喰らってしまった!

そのまま地面に叩き付けられてバウンド、だが根性で半回転、膝を着きつつも転がってしまうのは回避した。


「ってえな! クソが!」


 とっさに刀をクロスさせたガードの上からだったため、どちらかと言えば押し出される形になったみたいで無事のようだ。だけど倒れなかったといっても腕は完全に痛めてしまっただろうし、地面に背中から叩き付けられたのだ。しばらくは動けないだろう。


 その様子を見たドラゴンが目を剥いている。


「馬鹿な・・・・・・いや、な、成る程? 随分頑丈なヒト族なのだな」


 ドラゴンさん心の声漏れてますよ。

 ちなみに龍言語で喋ってるので理解出来たのは僕くらいだろうけども。


 いやまあ確かに? 本来なら今の攻撃喰らったら空中でミンチでしょうよ。

 だけど僕がバフを掛けた以上、そう簡単に殺されたりはしないからね。

 まあドラゴンはサムが異様に硬い人間種だと思ったみたいだ。物言いから「翼壁」相手にはやはり遊んで居たと思われる。


 目撃した全員が違和感を覚えたみたいで、馬車の後ろに隠れた非戦闘員達は露骨に何か言い始めた。


「おい、うそだろ? あいつドラゴンに生身で殴られて生きてるぜ?」

「人間種・・・・・・だよな? よっぽど強い身体強化が使えるとか?」

「馬鹿言え! でっけえ落石が直撃したようなもんだ! 「翼壁」だってあのざまだぞ!? アタッカーが無事なわけが・・・・・・」

「サム! サム! アンタなんで生きてるのよ!? 逆に怖いから!」

「ペイマよ・・・・・・」


 そして、分かりやすく一番取り乱してるのがペイマだ。まあ目の前で仲間が地面に叩き付けられるの目撃したらそうもなりますか。ただ物言いが酷すぎて康造さんが引いているわけだけど。


 まあそんな中途半端な空気のうちに、僕はドラゴンの前まで進み出る。丁度、馬車で書いた半円、それを円にした時の中心点辺りだ。

 ドラゴンが僕の接近に気がついたらしく、ゆっくりと首をこちらに向けた。僕に敵意が見えないのと、さっきのサムの衝撃が抜けていないんだろう、いきなり攻撃はしてこない。


 まあ、物は試し。


「こんにちわ。僕らは話し合いにきたんですが?」

「・・・・・・ほう、面白い。小さきものよ。我の前に立ち塞がるとは良い度胸だ」


 大陸共通語で応えてくれた。正直助かる。というか応答してくれるのかよ・・・・・・。

 この調子でとりあえず戦闘だけでも避けられないかなあ。


「何か誤解があるみたいですけど、僕らはあなたと争いに来たんじゃ有りません。このまま進むと大きなヒト族の街にぶつかってしまうので、避けていただけると・・・・・・」

「笑止」


 ん? 笑止?


「むしろそれが目的よ。ヒト族など龍種の足下にも及ばぬということを思い知らせねばならない」

「龍種が強いのは重々承知していますよ」

「たらんな、無条件で全てを差し出すくらいで無ければ」

「ヒト族も一応生きてるもので、無条件というのは・・・・・・」

「笑止、話にならん。欲深きはやはりヒト族よ」


 このドラゴン言わせておけば好き勝手言いやがって! どっちが欲深いのさ。

 というかこいつ・・・・・・。

 ちなみに「ヒト族」というのは魔物で無い直立二足歩行の種全体をさす。ざっくり言うと知性のある人型の生き物はだいたいこの「ヒト族」に分類される。

 この分類は種族がはっきりしないときに使われるというレアな呼称だが、ドラゴンにしてみればヒト族の、ましてや魔族と人間種の区別は付きづらいのだろう。


「愚かなるヒト族よ、お前のおかげで我は完全回復することができたぞ?」


 ドラゴンはそう言うと、右前足を掲げて見せた。表面とは言え無数の刀傷の入っていた足が、みるみるうちに復元されていく。

 龍魔法による回復だ。

 個人的に龍魔法の一番狡いところは魔法式を見せずに発動出来るところだ。

 あからさまな時間稼ぎではあったけどさ。

 まあ、いいや。それならこっちだって考えがある。


「キューブちゃん。広域展開」

『広域展開は初めてだけど、いい?』


 合成音声が、そんなことを聞いてくる。

 いや聞き返してくるんかい!?

 しかも心なしか心配そうな声色だし確かにテストも出来てなかったけどさ。


「キューブちゃん、君の機能は僕の師匠のお墨付きだ。大丈夫、頼むよ」

Jawohl(かしこまり)!』

「すごい素直じゃんよ!?」


 僕の突っ込みもむなしく、ガントレット(キューブちゃん)から青水晶色の膜がぶわりと広がっていく。その膜は馬車列とドラゴンを分断するように展開。充分に広がりきると、ガントレットのスリットから分離。純粋なマナの壁となり・・・・・・。


「『金剛』」


 マナの壁そのものに「金剛」を掛ける。つまりこの壁はガントレット(キューブちゃん)と同じ強度を誇る事になる。

 これで僕の後ろ側に、巨大な青水晶色の壁が出来たに等しい。

 僕の頭越しにドラゴンが壁を殴りつけるが、もちろんそんなものではびくともしない。

 ドラゴンが忌々しそうに喉を鳴らして威嚇してくる。


「貴様・・・・・・」


 しっかし凄い威圧感。なんでこんなドラゴンの前に立たなきゃいけないのかねええ!

 見届け役だったはずなんだけどナァ……。

 

あんまり戦闘してませんが、BGMはそのまま


戦場ー荒れ狂うもの


で、お願いします

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