第73話 同行者
前回時期的に寒いみたいな記述をしたと思いますが、
あれはドワーフ王国に比べてであってマディシリア南部は
熱帯地方のような気候をしています
クラフターズと別れた九江卿人は、とりあえず商業ギルドに向かう事にした。クラフターズの証であるペンダントがあるとはいっても、販売許可を貰わなければ商売は出来ない。
路銀は貰っているけれど、帰るまでの事を考えたら自分でも稼がなきゃならない。
この国境の街は名前をサウスエンドという。正確には大陸最南端ではないけれど、マディシリア王国最南の街という意味だろう。
帝国との交易はこの街でしか出来ない。北は大山脈に大森林。西の果てから北上すれば小国家郡のある大陸北西部だけど、小国家郡に大国ダナドブルグ帝国と交易するだけの余裕は無い。行商人を通じて細々と買い物をするのがやっとだ。その商人ですら、常に戦争状態のような小国家郡には武器商人を除きあまり出入りしないため、実質きちんと交易出来てるのはマディシリアだけ。だそうだ。
そうゆうわけでサウスエンドはかなり大きい。人口も多く、活気にあふれている。道幅も広くて大通りはバリオスがいても全然余裕がある。すぐ隣の帝国との交易が主な収入となっているから、商業ギルドも大きく、大通り沿いにあったからすぐにみつかった。
外観からしてかなりの広さがあることがうかがえる。行商人の移動も活発だからか建物前には駐車場宜しく馬車や駄馬が並べて繋がれている。
早速、入り口にいる案内係のおっさんに声を掛けた。
「こんにちは。販売許可書が欲しいんだけど、こっちで良いんですかね?」
「ええ、ええ。こちらになりますよ。馬はお預かりします・・・・・・お帰りの際にこちらの券を見せてください」
「はい、丁寧に有り難うございます」
「そりゃクラフターズ様ですからね。丁寧にもなりますよ」
つるりとはげ上がった頭を撫でながら、おっさんは笑って見せた。早速ペンダントが効力を発揮したらしい。バリオスにお願いして、おっさんについて行ってもらう。
バリオスを見ても物怖じしないおっさんだと思ったけど、見ればバリオスと同じグラニ種であろう馬が何頭か繋がれている。故郷のネルソー辺りじゃあまり見なかったけど、この辺りだと持っている人がいるんだねぇ。
中に入ると豪奢な金と赤の装飾が僕を迎え入れた。
正直目が痛くなりそうな色合いなのだけど、金持ち連中にはこの方が受けがいいのかもしれない。お金を掛けないとお金は入ってこないってことだろう。
ロビーは広々としているが、人影はまばらだ。
まぁ、そうだよね。ロビーで堂々と商談なんかしないだろうから、皆個室にはいってるんだろう。
とりあえず、美人のお姉さんが座る受付に向かう。
「ようこそおいでくださいました、クラフター・・・・・・失礼。お名前を伺っても?」
「卿人、九江卿人です」
「有り難うございます、では改めて。ようこそおいでくださいました、クラフター九江。本日はどのようなご用件で?」
ペンダントを見て僕をクラフターズだと認識したのか、ピンと背筋を伸ばし、やや緊張した面持ちのおねえさん。
ちなみにクラフターズは現役、引退問わず「クラフター○○」と呼ばれる。「クラフター」自体が敬称扱いなので後ろには何もつかない。Drと同じようなもんだね。親父は破門扱いなので対象外。
この反応はあらかじめ師匠達からレクチャーされていたとは言え少し戸惑う。
殆どクラフターズの名声であって、僕自身がしたことはまだ少ないからむずがゆいのだけど・・・・・・。
とにかく今は許可証をもらおう。
「ええと、販売許可証を発行して欲しいのですが」
「畏まりました。移動販売形式でございますか?」
「そうです」
「はい、では露店販売許可証ですね。こちらにご記入願います」
販売許可証はその名の通り大陸全土で販売を許可するものだ。
発行自体は簡単なので商売をしなくても持っている人は多い。露店販売許可証は店を持たず露店でのみの販売を許可されるものだ。他にも店頭販売許可やら色々種類があるけど、今はこれで充分。
露店形式の販売しか出来ないけど、収めるべき税金が安く、猶予期間も長いのが特徴だ。
最終的にネルソーまで行くには、とにかく素材を買うなり採取するなりして物を作って路銀にしていかなければならないから、これが一番合ってる。税金は最寄りの商業ギルドならどこでも払うことが可能。大きな街には必ずあるからね。
書類を埋めて、諸々の手続き代金を払い、初回発生する保証金まで支払う。保証金は任意だけど払っておいて損は無いと言われてるので素直に支払っておこう。
つってもなあ・・・・・・これ保証金とは名ばかりで還ってこない寄付金なんだよね。あんまり気が乗らない。
あれ? お姉さんの態度が軟化したぞ? 営業スマイルが幾分か柔らかくなったきがする。
「ああ、よかった! 保証金の納付有り難うございます! 最近は誰もおさめていただけなくて・・・・・・とても助かります」
思ったより自然な笑顔を見せてくれた。
成る程、こういうことか。単純にその場で印象が良くなるのね。
「ところで・・・・・・クラフターズが先ほど帝国領に入ったと報告がありましたが、あなたは別行動なんですか? ああ、いえ。ただの興味です。他意はありません」
「僕はジルコア魔法学院へ行って、そのままユニリアまで。里帰りです」
「そうなんですね。差し出がましいようですが護衛の方はお決まりですか? まさかお一人ではないですよね?」
「ああいえ、先にこちらに来たので。護衛はこれから雇おうかと」
そう答えるとお姉さんの顔が少し曇った。
「それは、少し難しいかもしれません」
「というと?」
「ご存じの通りマディシリアは旅をするには少し困難な土地です。なのでいくつもの商隊が繋いで物品を運びますから、冒険者や護衛もそれに合わせて短距離に対応しています。ここから王都まで一気にとなるとどう早く見積もっても1年半以上・・・・・・それだけの時間を共にしてくれる護衛は殆ど居ないでしょう」
つまり万全の状態で可能な距離、町村を往復して可能な限り安全に運ぶのか。
もちろん途中の町村で商売しながらになるだろうから、それらについて行くとやたらと時間が掛かる。しかもそれが最短で王都に行く商隊とは限らないのだ。
土地勘がないからひとりで行くのは論外だろうし・・・・・・。
クラフターズは自分で解決しちゃうからその辺は教えてくれなかった。というか抜け落ちてたんだろうな。時間も無かったしねぇ。
「クラフターズにいた弊害がこんなところに・・・・・・」
そろそろホントにクラフターズかと怪しまれかねない。
お姉さん苦笑してるし。
「ともかく冒険者ギルドに行ってみることをお勧めします。こちらの護衛は最長でも中間までのものしか斡旋しておりませんので」
「わかりました。そうしてみます。あ、これお礼です」
肩に掛けた頭陀袋からいくつか腕貫を取り出す。事務作業なんかの時に腕をカバーするアレだ。こんなものがと思うかも知れないが、インクで汚れるのを防ぐ腕貫は女性の事務員さんには妙に人気がある。
珍しいものじゃないけど、クラフターズ製のものは丈夫で通気性が良く、蒸れないことで評判だ。
「ああ! とても助かります! 皆で分けますね・・・・・・僭越ながらひとつ助言を。この街の冒険者ギルドは帝国と懇意です。近頃きな臭い情報が入ってきておりますので、お気を付けください」
許可証と一緒にそんな助言というか警告をもらって、商業ギルドをあとにする。
ギルドが閉まるまではバリオスを預かってくれるというので、そのまま冒険者ギルドへ。歩いて5分もしないうちに、同じ大通り沿いのギルドに到着する。
さて、どうしよう。
商業ギルドのお姉さんが言ってた「きな臭い」というのがちょっと気になる。わざわざ教えてくれたということは何かしら危険があるかも知れないって事だ。
ゆうて何が出来るって訳でも無いんだけどさ。
正直に言おう。
ちょっとびびってる。
いやぁだって。クラフターズって言うのは見ればわかるわけで。それが護衛なんか依頼したらカツアゲされるかもしれないじゃん?
うん、勝てるけど。勝てるけどさ! こわいじゃん!? なんかごっつい顔で凄まれたりするのイヤじゃん?
そんな感じで二の足を踏んでいたら、なんだか懐かしい物を見つけた。
この場合の懐かしいは前世的な意味だ。僕が生きてた時代の物ではないけど、日本人としては妙になじみがある格好の人物がふたり。
純白の長い外套を羽織り、瑠璃紺と鉄灰色を基調とした紋付き袴。腰には大小の太刀。足下が黒いブーツなのが惜しいがこれは仕方ない。この果国の第一礼装を着ているのは、細身で魔族にひけをとらない長身、黄金色の総髪とグレーの瞳を持つ男だった。
・・・・・・コーカソイド系が紋付き袴着るとなんでこんな格好いいんだろうね?
そしてもうひとり。
闇に飲まれてしまいそうなほどの漆黒の装束を身に纏い、被った黒ずきんからやはり黒い瞳を覗かせている。今は隠密ではないためか、黒装束の上から金属製の手甲と脚絆を装備。雪華よりは高い、という程度の低身長だがそのぶんとても身軽そうな印象。
どうみても忍者だ。ただ立っているように見えるけど、油断無く辺りを警戒しているのだろう。その証拠に僕の方をしっかりと視界に捉えている。
サムライっぽい金髪のあんちゃんは腕組みして堂々と立ってるけど・・・・・・ありゃ何も見てないな。
僕がこのふたりに注目したのは郷愁に誘われたからという理由じゃ無い。いや、ちょっとはあるかも知れないけれど、一番の理由はこんなところに果国の衣装を着た人間がいるって事に違和感を覚えたから。
果国風の衣装はユニリア国外ではまず見かけない。理由は簡単、遠すぎるから。
ユニリア王都でさえあまり居ないのだ。それがこんな所にいるってことは、もしかしたら帰るところかもしれない。
紋付き袴の兄さんはともかく、忍者の方は体格からして確実に果国人だ。
そもそもどうしようか困ってた所だし。声を掛けるだけならタダだし。
「すみませーん、ちょっといいですか?」
忍者の人に警戒されないよう、隙だらけで丁寧に話しかけてみる・・・・・・うわぁ!?
近寄ったところで音も無く刃物を首に突きつけられた。前世でもおなじみ忍者の武器、クナイだ。
ぎらりと光る切っ先はとても良く刺さりそうで、冷や汗が額を流れていく。死角の取り方が絶妙だ。一瞬で間合いを詰めて、余所からは見えない角度にクナイが調整されてるし。
慌てて両手を挙げて敵意がない事を示す。
「ひい!? いきなり何するんですか!?」
「わざとらしい無防備は控えられよ。逆に警戒されるぞ」
「・・・・・・はい」
黒田 ○矢ばりの渋いハスキーボイスで窘められ、素直に頷いてしまう。
だがそれがよかったのか、あっさりクナイを下げてくれた。
この人相当出来るぞ。わざとらしいとか言われたけど、ホントに無警戒で近寄ったから大抵の人は無害に思うはず。それでも警戒されたって事は、僕の力を見抜かれたって事だ。
・・・・・・単に警戒心の強い人だっていう可能性は捨てきれないけど。
「して、何用であろうか? 果国人とお見受けするが」
「あ、ええ。九江卿人と申します。クラフターズやってます」
クラフターズ、と言った時に袴姿の兄ちゃんがちらりとこちらを見たが、すぐに興味を無くしたのか視線を前方に戻した。
忍者の人は黙って続きを待ってくれているみたいだ。
「お察しのとおり果国人ですが、生まれがユニリアのネルソーです。今回クラフターズ本隊から離れる事になりまして、ネルソーまで帰りたいんですが、護衛のあてがなく・・・・・・。ネルソーまでとは言わずともユニリア辺りまで行くご予定とかありませんか? もしそうならご一緒させてもらえたらと思って、声を掛けさせてもらった次第です」
忍者の人は袴の兄ちゃんにちらりと目をやると、ふむ。と短くつぶやいて。
「もうひとり連れがいる。その者とも相談するのでしばし・・・・・・」
「お、戻ってきた」
金髪のあんちゃんが冒険者ギルドの方を指し示した。つうかすげえイケメンボイスだな。ハリウッド俳優みたいな顔してるけど、声もそんな感じだ。
近寄って来た人物は、え?
思わず目を奪われてしまった。
いや、だって。ものすごい美人なんだもの。
年の頃は・・・・・・年上に見えるけど微妙なところ。
大きなつばの広い魔女帽子から伸びる、ぱっつんストレートロングの赤い髪と、側頭部から生えた黒い羊の角が印象的。魔族だ。褐色の肌に、大きな瞳は翡翠色。目の下には頬に掛けて赤い入れ墨が施されている。魔族にしては背が高くない。僕と同じくらいか。黒いフード付きのマントをキッチリ前あわせで羽織ってるから体型の判断は出来ないけど、覗いた首と足下から比較的痩せていると思われる。
魔族の女性が足早に近寄ってきたところで、袴の兄ちゃんが話しかけた。
「おう、どうだった?」
「どうもなにもないわ。やっぱりこの条件じゃだれも受けてくれないって」
思ったより低い声。開いた口からは、噛まれたら痛そうなギザ歯が覗く。
「なんだ、皆ケチなのか?」
「あのねえ・・・・・・」
びっくりして目を丸くする袴に兄ちゃんに対して、やれやれとでも言うように首を振る魔族の女性。
「ユニリア王国までついてきてくれるってだけで希少なのに、依頼料が前払いで食事の面倒まで見て欲しいとか無理に決まってるでしょ!?」
うん、それは無理だね。
普通護衛の依頼は成功報酬だ。最初に依頼料が提示されて、そこから必要経費が引かれて最終的にな報酬になる。だからその辺はきっちりしなければならないのだけど・・・・・・。報酬前払いで雑費も依頼者持ちとかまず居ない。よっぽどの事情が無ければ成立しないだろう。
よっぽどの事情が無ければ。
袴の兄ちゃんはともかく、魔族の女性も僕の事が目に入っていないらしく、そのまま口喧嘩を続けている。
「いや、絶対居る。俺の勘が告げてる。今すぐユニリアまで帰りたいって金づるが絶対居る!」
「アンタの勘は戦闘以外全く当てにならないでしょ! それにそんな人いたとしてもランクBとかAの冒険者雇うわよ!」
「実力なら負けてないぞ!?」
「実力はあっても私たちのランクはCなの! そこまで言うなら自分で行ってきなさいよ! なんで私が確認に行ったか分かっての発言なんでしょうね!?」
「出禁なんだからしょうがないだろう」
「アンタね・・・・・・」
「ペイマ」
キレそうになった魔族の女性、ペイマさんって言うのかな? に、絶妙なタイミングで割り込む忍者。
「何よ?」
「まず落ち着け。往来で大声を出すものでは無い」
「だってこいつが!」
「聞け。この者がユニリアまで護衛を願いたいと名乗り出ている。クラフターズだそうだ」
そう言って僕を指し示した。
そう、袴の兄ちゃんが言った「今すぐユニリアまで帰りたい金づる」がなんとここに居たのだ。
怪訝な顔で僕の方を見たペイマさんは一瞬無表情になり、次第に顔がゆがんでみるみるうちに赤くなっていく。
うん、相当恥ずかしいだろうね・・・・・・。あーあー、目の端に涙まで溜まってきてるし。
「ええと、クラフターズの九江卿人と言います。お見知りおきを・・・・・・」
こちらも気まずいと思ったけど、放っておくと泣き出しそうだから声を掛けておく。
効果があったみたいで、はっとして首を左右に振ると、しゃんとして帽子のつばの端をつまみ会釈してみせた。
「見苦しい所をみせてごめんなさい・・・・・・ペイマよ。見ての通り魔族。よろしく」
冒険者らしく名前だけの自己紹介。どうにも決まりが悪いのは致し方ないけど、僕は悪くないし突っ込むべきでもないから努めてスルーして営業スマイル的なものを浮かべてみる。ちょっと硬いかもしれない。
「ええっと、それで? 貴方はユニリア王国まで行きたいんですって?」
「はい、用事があるのは魔法学園ジルコアですが、そのままユニリア王国に行こうかと」
「あら。私達もマディシリア王都経由でユニリアに向かおうと思ってたのよ。渡りに船だね!」
ぱん。と手を打って笑って見せた。
いい顔で笑うなぁ。
「それにクラフターズなら安心出来るわ!」
「どうだか」
良い感じで話がすすんでいたのに、袴の兄ちゃんが難色を示す。胡乱げなまなざしでこちらを見やると、高圧的に切り出してきた。
「クラフターズは何人か知ってるが、こんなに若い奴は見たことがねえな。お前いくつだ?」
「17です」
ちょっとびびってるのを隠して即座に答える。
どうにも柄が悪いのには慣れない。子供の時分に絡まれた時だって雪華がいたから虚勢をはってたのは内緒だ。
「17!? やっと鎚を握り始めた年頃じゃないか」
僕の歳を聞いてそらみたことかとばかりに勢いづく。
「だいたいろくな装備じゃないな。それで長距離を移動しよう何て舐めてるとしか思えない。革鎧着てメイス持ってても使われた形跡が無い。カタリじゃないのか?」
酷い言われようだ!?
荷物は殆どバリオスに持たせてあるし、装備が新しいのは新調したからだし!
クラフターズの知り合いがいるならこのペンダントの意味も分かるんじゃ!?
言いたいことがありすぎて言葉に詰まっていると、他のふたりが僕より早く反応した。
「あのねぇ・・・・・・どこかに荷物は預けてあるかもしれないでしょ? それだけで旅慣れてないとか断定するのはどうなのよ? クラフターズの証も私が知ってる物と一緒。話を聞いてからでも遅くないわ。アンタもしかしてびびってる?」
「スノーゴーレムの革鎧は希少で加工も難しい。外套は魔法道具、籠手も良い造りだ。その辺で売っている物ではないな。メイスも見たところ合金製、形状が特殊で量産品では無い。これを揃えるには自作かもしくはある程度技術力のある鍛冶屋の協力がいる。それなりに力か財力はあると見るが?」
「う、うぬぬ・・・・・・」
おおう、すげえ擁護してくれるけどいいのかな? いや、それだけ僕みたいな長距離移動者がいないのか。
いいぞ、もっと言うんだ。僕だってユニリアまで行ってくれる人を探してたんだから。
だが袴の兄ちゃんも負けていなかった。
「そこまで言うなら聞いてみようじゃないか! おいお前!」
「卿人です」
「卿人サンよお?」
お、素直に名前呼んでくれた。
「行程はサウスエンドからマディシリア王都を経由してユニリア王都まで! 報酬は先払い! 三食昼寝付きだ! この条件以外じゃ受けてやらん!」
「だからそんな条件で依頼を出してくれるわけないでしょ!」
「良いですよ」
「ほらダメだって・・・・・・ええ!?」
「あ、ごめんなさい。報酬の先払いだけは勘弁してください。その辺警戒するのはこちらも同じです。その代わり移動にかかる費用は宿代含め、嗜好品を除く雑費はこちらで持ちます。なんなら装備品もこちらで提供します。どうでしょう、なんとか定期的な分割報酬になりませんか?」
「・・・・・・」
3人とも目を丸くして固まってしまった。
僕だって何も無闇にこんな提案をしている訳じゃ無い。先払いでお金が欲しいということはつまり、資金が尽きそうだと言うこと。そして先を急いでいる。
僕はその心配を解消出来るし、先を急ぐのは同じ。
だから旅費が掛からないとなれば乗ってくれる。はず、なん、だけど・・・・・・。
なんだか様子がおかしい。特に袴の兄ちゃんがすげえ真剣な顔で僕を見てるし。
「なあ、卿人さんよ」
「はい」
「なんだってそんな提案をしてくる。こっちから無茶振っておいてなんだが、こちらにとって好条件が過ぎる。何が目的だ」
「無茶ぶりっていう自覚はあるんですね」
「ああそうさ。だからそれ以上の事を言ってきたのが気になってる」
ありゃ。スルーしてくれませんか。
そりゃそうだよなあ。僕の見てくれとか差し引いても太っ腹過ぎて怪しいよな。
さて、どうしよう。正直に言っていいのか・・・・・・。
左耳の耳飾りに触れる。
何をためらう事がある。何も迷うことは無い。言って良いのかも何も、僕にそれ以外の答えは無いし、言えない理由も無い。そもそも、これから下手をすれば2年は旅を共にしなきゃいけない人達だ。ダメなら最初から居ない方が良い。
意を決して、口を開く。
「ユニリア王国に待たせてる人がいます。本来ならもうユニリア国内にはいなきゃいけなかったんですけど、トラブルがあってこんな遠い所に居ます。とにかく僕は、一刻も早くユニリア王都に行きたいんです」
特に感情を乗せるわけでも無く、淡々と。そうでもしないと泣いてしまいそうだったから。
あらためて、僕が過ごしてきたクラフターズの3年という時間は長かったのだと。そう実感した。
卿人君の旅のお供がみつかった、のかな?
サムの外見は金髪にしたトム・ク〇ーズだと思っていただければ




