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待雪草は誰がために咲く  作者: Ncoboz
第三章 雪華編
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第56話 冒険者

56話にして初めて冒険者の説明が出る小説があるそうですよ?

 冒険者とは、冒険者ギルドに所属するものの総称である。

 種族性別の区別無く成人すれば所属可能で、ギルドの請け負った依頼により、様々な仕事をこなす。依頼内容はどぶさらいから魔物討伐、要人警護まで多岐にわたる。

 ギルドは国、種族、性別の是非を問わず冒険者の身元を保証し、依頼を達成するためのサポートを行う。このため人間種至上主義を掲げるプリズ教皇国、広大な土地に独自の軍隊を持つダナドブルグ帝国にはギルドが存在しない。


 冒険者ギルドは平民の英雄が興したもので、貴族のように私兵団をもたず、後ろ盾の無い平民たちの盾として設立された。故に国家に属さず、民のためになるようにと広く腕利きを募り、様々な仕事を請け負う形になった。


 現在の冒険者ギルド本部は大陸中央平原、ムルディオ公国領、城塞都市ムルディオにあり、本部ギルド長は英雄の末裔であるクルークナット公爵家当主が赴任している。

 各国にギルド支部が置かれ、大陸中の冒険者を統括している・・・・・・のはもちろん昔の話。

 現在は冒険者ギルドというシステムだけ統一されており、現場の運営、管理は各国に委ねられている。


 冒険者はギルドランクという階級づけがなされている。 

 これは依頼達成度(所謂実績)と評判によって決まる。基本的に実力主義のため犯罪者であろうと昇級の妨げにはならないが、冒険者ギルドの定める条件からあまりに逸脱している場合はその限りでは無い。


 ギルドランクは個人に与えられるランクで下からF、E、D、C、B、A、SシングルSSダブルSSSトリプルまでの9段階。


 F~Cまでは特に制約も無く、ギルドの直轄する施設において、特別料金での買い物や施設の利用が可能。


 ランクB以上になるとギルド内施設の一部無料使用が認められ、一部公的手続きが免除になる。手続き免除に関しては緊急性のある依頼や強制依頼に迅速に対応できるようになるからだ。ただし引き換えに、ランクBからはギルドに強制徴用される場合がある。

 これより上のランクになるとさらに様々な特権がつく。


 冒険者ギルドに所属する際、必ず支給されるのがランクカードだ。

 掌サイズの長方形で、乳白色の魔鉱石でできており、所有者のギルドランク、名前(希望すれば家名も)、職業クラス、所属国家が記載される。偽造不可能な身分証であり、持ってさえいれば身元が保証される。


 登録時に採血され、それを触媒にして専用の魔法でカードに情報が刻まれる。

 このため所有者以外がこのカードを使用すると真っ黒に変色する。登録ギルドには対になるカードが保管してあり、所有者の手元から長時間離れた場合黄色に変色し、無断で使われればそこから黒くなる。所有者が死亡した場合、赤く変色する。

 この魔法は魔道具化されていて、外からは魔法式が見えない構造になっている。製造法はクルークナット家の秘術だ。


 必要なのは白色の魔鉱石だけなので、再発行は手数料さえ払えば簡単にして貰える。その際に無くした方のカードは使用不可となる。

 

 ランクカードの更新はギルドで行われ、それ以外の方法をとるとやはり黒く変色する。

何らかの理由によりギルドに所属できなくなった場合は速やかな返還が求めれる。違反しても罰則はないがカードの再発行ができなくなり、新規の登録も難しくなる。


 冒険者ランクごとの強さ及び資格の目安は以下の通り。


 F:ギルドに登録したばかりのもの。ギルドからの支給は最低限受けられるが、早く実績を積みはじめないとすぐにランクカードを剥奪される。


 E:最低限自分の身が護れ、それなりに依頼などに関する知識がある。生業にするのは難しい。まだまだ下積み。


 D:それなりに実績を積み、戦闘系なら単独で危険生物と渡り合える。盗賊討伐などもこのランクからで、やっと冒険者としては一人前。


 C:冒険者を生業として生活出来ている。ギルドからの支援も手厚くなり、難しい依頼も振って貰えるようになる。このくらいから実績に加えて信用も必要になってくる。戦闘系なら十分信頼されるレベルで低ランク討伐でも討伐依頼にはひとりは欲しいとされる。


 B:ベテランと呼ばれる冒険者。あるいは突出した技能を持っている必要がある。ギルドからの支援は十全に受けることができる。国境を超えるのにもある程度融通され、街に入るだけならすぐに通して貰える。

 大型魔獣との戦闘経験が必須。このランクに昇格することが、多くの冒険者の目標と言っても過言ではない。


 A:最高の技術を持っている必要がある。

 龍種と戦い、討伐の成否にかかわらず生還できる実力が必要。

 

 S~SSS:最早人外。特権階級であり、一部貴族よりも強い権限を持つ。現在明確なランクS以上は大陸に20人程存在する。


 ◇


 めがしょぼしょぼする。

 朧雪華わたし本読むの苦手なんだよ・・・・・・。


 ギルドの受付付近に置かれた「冒険者ギルドのしおり」なる冊子を読んでたんだけど、三春おば(お義母)さんにひととおり教わったんだから暇つぶしとは言えやめとけばよかった。

 ランクの説明とかほとんどやっつけだし。


 ランクと言えば実はわたし、未成年の頃の協力実績があるからランクBからスタート出来たらしいんだ。主にランドドラゴン討伐と、多数の盗賊団捕縛だね。卿人とふたりで「山賊(バンデット)潰し(・マッシャーズ)」なんて大層なあだ名を付けられたのは微妙な思い出。

 本来はどんなに実績があってもランクDかららしいんだけど、特別なんだって。

 そりゃそうだよね、あぶないもん。

 でもそれをやっちゃうと経験が積めないし、なんか変な因縁つけられそうだからランクEからにしてもらったんだ。だからおばあちゃんの言ってた「活殺自在」表記もしないでもらった。

 ネルソーのギルドメンバーはわたしと卿人が強いのは知ってるけど、普通の人は知らないからねえ。


 もちろんやろうと思えばBまであがれるんだけどDで止めてる。ランクCになると指名が入りやすくなって、その依頼が長期間拘束の任務とかだと困るから。もちろん断ってもいいけど、そもそも断るのが面倒だし。

 

 それにしても・・・・・・あのふたり遅いなぁ。


 柱に掛かっている時計を確認すると、今丁度待ち合わせの時間だった。

 わたしが早すぎたのか・・・・・・。

 なんかわくわくして早く来ちゃったみたい。


 結局、剣術士のヒマリとS・マギ(サポートよりの魔法使いのことね?)のラベイラと一緒に王都へ行く事になったんだ。


 アタッカーとサポーターの組み合わせだから、タンク兼ヒーラーのわたしが入れば、足りないところを埋められる。

 女3人なら変に気を使うことも無いし、野営するにしてもローテーションが組める。

 わたしはユニリア王都が目的地だけど、そこからなら城塞都市行きの馬車が出ているはずだから彼女たちにも都合が良い。


 そう提案したら、ふたりはちょっと悩んでから了承してくれた。

 

「タンク兼ヒーラーとか頭おかしいんじゃない?」


 とかヒマリにすんごい失礼なこと言われた。

 もっともだと思うけど、でもしょうがないじゃん!


「まぁ、女性タンクの方と組むのは初めてですわ! たのもしいですわ!」


 ラベイラはとても喜んでくれた。

 こっちは良いお姉さんだ!


 その場で計画を立てて、準備のために数日取って、今日ここで待ち合わせてるというわけ。

 親も、卿人もいない状態で遠出するなんて初めてだから、ちょっと興奮しちゃったみたい。そういえばお義父さんが慌ててお弁当持たせてくれたけど、そっか、早すぎたのか。


 嘘。ホントは早く卿人に会いたくて、気が逸ってる。早く着いても会えるまでの時間は変わらないのにね。

 んふふ。このままならなさがちょっと楽しい。


「あ、いたいた! おーい雪華! お待たせ!」


 程なくして、ヒマリがやってきた。

 会った時と同じ軽戦士風。クロースアーマーにブリガンダイン、頭には額を覆う鉢金、腰に短めのバスタードソードを下げている。

 体格の割に大きな剣だから、多分気の運用による身体強化が得意なタイプなんじゃないかな。

 魔法の支援を当てにするにはちょっとごつすぎる。

 なんて考えながらわたしは手を振り返した。


「おはよー!」

「おう、おはよう! ってその格好でいいのか?」

「へ?」


 ヒマリは微妙な表情でわたしのてっぺんから足下まで視線を走らせた。


 わたしの格好は新調した緑色のショート丈ジャケットに、黒いプルオーバーのノースリーブシャツ、ショートキュロットにレギンスを穿いて、足下は膝下のキックブーツ。それから指ぬきの革手甲。

 寒いから厚手のレギンスにしたんだけど・・・・・・。


「おかしい、かな?」

「いや、雪華がいいならいいけどさ。大丈夫?」

「ん? 何が?」

「・・・・・・まあいいや。行こう、ラベイラが外で待ってる」


 くるりと振り向いてすたすたと外に出てしまったので、慌てて荷物を持って追いかける。


 まって、凄い気になるんだけど!

 

 外に出ると、背の高い馬車が止まっていた。2頭()きの、幌じゃなくて窓の無い木製の箱形タイプ。御者台はふたり乗り、側面に出っ張りがあって、中に入らずにすぐに乗り降りが可能。所々ミスリルで補強してあるおかげで、ちょっとやそっとじゃ壊れないくらい頑丈なのが売りなんだって。


 特徴は屋根に手すりが付いているところ。


 戦闘馬車バトル・キャリッジと呼ばれてる馬車だ。中から屋根に上がれるようになっていて、そこから援護が出来るようになってる。

 馬も軍馬と同じ訓練を受けた馬で、ランクの低い冒険者よりも強い。

 道中戦闘が多くなると踏んで、この馬車を借りようと提案したんだ。

 依頼を介さずに冒険者ギルドが貸し出してくれる馬車の中では1番高価なものだけど、ラベイラがお金をぽんと出してくれた。

 どこかのお嬢様なのは間違いなさそう。


 馬車の傍らにはローブ姿のラベイラと、プレートメイル姿のメイリ(メイちゃん)がお話していた。

 メイちゃんは変わらずギルド職員の冒険者をやっていて、なんどか一緒に依頼をこなしている。

 相変わらず返り血まみれになるから「穴開け女(ホールパンチャー)」の2つ名は返上出来ていない。


 メイちゃんはわたしに気がつくと、ひらひらと笑顔で手を振ってくれた。


「雪華ちゃん! 久しぶりかな!? とうとう出発だね」

「うん、メイちゃん久しぶり~。もしかしてメイちゃんも来てくれるの?」

「ううん、ボクは戦闘馬車バトル・キャリッジを運んできただけだよ。ついて行けたらいいんだけど、キャラバン中止の煽りで仕事が詰まってて」

「そっかぁ、残念」


 ギルド職員も大変だよね。

 メイちゃんのとなりのラベイラも笑顔で、いや、なんか曇ったぞ。


「雪華さん、おはようございます・・・・・・大丈夫ですの?」

「だから何が!?」


 ラベイラがヒマリと全く同じ視線と疑問をぶつけてきた。

 いったい何を心配しているんだろう?


「いやだって、ねぇ?」

「ねぇ?」


 お互いに目配せしている様は、わたしと卿人が遊んでるときに似ている。

 くそう、うらやましいぞう。


「なんだよー、教えてよう!」


 わたしたちの様子を見ていたメイちゃんが、ぽんと手を打った。


「雪華ちゃんの装備が気になってるんだよね? タンクなのに防具とか付けてないからかな?」

「そう! そうなんだよ! だからマゾなのかと思って!」

「ええ、でもわたくしたちが趣味に口を出すのはどうかと思って・・・・・・」

「そっち!?」


 なんてこった!

 実力を疑われてるんじゃなくて痛がって悦ぶ変態だと思われてた!


「断じて違うからね!?」


 まぁ・・・・・・ギルドランクは実力の保証でもあるから、何かしら理由があって軽装なんだろうと思われたわけだよね。

 タンクで軽装。でもランクDで生きてるとなると・・・・・・マゾだと思われるのか・・・・・・。


「大丈夫。雪華ちゃんが居れば絶対安全に王都までいけるから。安心していいかな」

「ありがとうメイちゃん・・・・・・」


 おかしな話だけど、早めに戦闘で実力を証明しないといけない気がする。


「まぁ、いかにもタンクなアンタがいうならそうなんだろうけど」


 ほら、なんか微妙な反応。

 とりあえずきにしないようにしよう。


 馬車に荷物を積んで、側面の出っ張りに座る。御者はヒマリとラベイラが交代でやってくれるんだって。

 ラベイラはお嬢様っぽいのに馬が扱えるっていうのは意外かも。

 いや? お嬢様だから出来るのかな?

 お嬢様の知り合いはいないからなぁ。

 

「じゃあ行ってらっしゃい! 卿人君に宜しくね!」

「うん! 行ってきます!」


 メイちゃんに別れを告げて、出発。

 商業区の冒険者ギルドを出て、ネルソー北門をくぐり大橋を渡って、衛兵の詰め所にさしかかる。

 早い時間だから出入りはほとんど無くて、すぐに私たちの番になった。


 そこでなじみの顔を見つけた。

 

「ボルゴさんおはよー!」

「なんだ雪華ちゃんか。おはよう」


 嫌そうな顔をしながらも挨拶してくれるボルゴさん。

 オーク種の衛兵で、わたしと卿人は小さい頃からお世話になってる。


「馬車という事は遠出か?」

「うん! 卿人を迎えに行くんだ!」

「そうか、それは・・・・・・また騒がしくなるのか」


 口ではそんな事を言ってるけど、少し嬉しそうなのをわたしは見逃さない。

 ボルゴさんは卿人が掠われた時に、親族以外では1番心配してくれた奇特なオーク種だ。


「皆冒険者だな? ランクカードを提示してくれ・・・・・・ほお、ムルディオから? ネルソーは楽しめたかな?」

「おう、サンマ旨かったぜ!」

「それはよかった、良かったらまた来てくれ」


 あれえ? わたしと卿人はそんな優しい顔されたことないぞ?


「気を付けて・・・・・・いや、雪華ちゃんがいるなら問題無いか」

「・・・・・・なぁ、さっきギルドの人にも言ってたけど、雪華ってそんなに強いのか?」

「酷い! 一緒に行こうって誘ったのはわたしだけど! 了解してくれたのはそっちじゃん!?」

「だってマゾだとは思わなかったから・・・・・・」

「それ引きずるんだ!?」


 ヒマリとの会話に苦笑するボルゴさんだったけど、ちょっと真面目な顔をした。


「雪華ちゃんがいなかったら、止めはしなくても警告はしたかもしれないな」

「そんなに危ないのか?」

「ああ。だが雪華ちゃんはこう見えてランドドラゴンを素手で討伐したことがある。大船に乗ったつもりでいい」

「冗談・・・・・・じゃあなさそうだね」


 真剣な様子のボルゴさんに、ヒマリも笑い飛ばすことが出来なかったみたい。

 ふふんと、どや顔をしてやる。


「じゃあなんでランクDなんだよ・・・・・・」

「それはまあ、そのうちね? 行こうよ?」

「そうだな、仕事の邪魔したら悪いし」

「うん、じゃあね、ボルゴさん」

「おう、さっさと行け。せいせいする」


 さっきまでべた褒めしてくれたのと同じ口で悪態をつくオーク種のおじさん。

 おまけにしっしっと手まで付けてくれた。


 調子に乗るなって釘を刺してくれたんだろうけど言い方・・・・・・。

  

 ヒマリが馬車を走らせてしばらくすると、ずうっと黙っていたラベイラが深く息を吐いた。

 緊張してたのか少し顔色が悪い。


 ちなみにわたしは今、馬車の屋根に乗ってる。ふたりを上から見下ろすかたちだ。


「ラベイラ大丈夫?」

「え、ええ・・・・・・」

「ああ、心配すんな。ラベイラは男が苦手なんだよ」

「へぇ・・・・・・」


 あれ?


「それなのに男あさりの旅してるの?」

「ばっ!」


 ふたりの顔色が変わる。

 赤に。


「ばっかお前! あれは冗談だって言っただろ!?」

「そうですわ! 雪華さんこそ信じてくださらなかったの?」

「まぁ、考えてみたら冒険の動機は人それぞれだもんね? いいよ、わたしは大丈夫だから」

「何が!? 何が大丈夫ですの!?」


 ラベイラがこちらを見上げてあわあわしている。

 ふっふーん、さっきの仕返しだもんね!


 わたしは頭を引っ込めて、持参したマントにくるまって屋根に寝転がる。

 うん、揺れが少し強いけど、このくらいなら余裕で寝れる。


「風が気持ちいいな~」

「ちょっと雪華さん! 聞いてくださいな!?」

「スヤァ・・・・・・」

「雪華! 寝るな! 起きろ!」


 こうして、わたしたちのぐだぐだな旅が始まった。

メイちゃんの外伝とか書いても良いかなとか思ったんですが。

オチが血まみれになる未来しか見えないので止めました。

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