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待雪草は誰がために咲く  作者: Ncoboz
第一章 転生~幼年期
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第12話 ゴブリン討伐

謎の人物メイリさんの視点です。

 ボクはメイリ・ジャルスター! 16歳の女の子!

 メイって呼んでね!

 

 ・・・・・・良いんだよ! 成人してても女の子はいつまでも女の子なんだよ! 

 桃色の髪に桃色の瞳。髪型はキュートなショートボブ! 星形のヘアピンでさらにキュート! 

 高身長のスレンダー・・・・・・だったらいいんだけど身長は平均よりちょっと高いくらいかな。体重は平均値かな! おっぱい? うるさいな成長期だよ!


 今はお昼を過ぎて少ししたくらいかな?

 ボクはフル装備で、ネルソーを囲む運河の外側で待ち合わせをしてる。

 これから九江(ここのえ)十三郎(じゅうざぶろう)師匠と討伐に向かうんだ! 


 あ、討伐っていうのは冒険者ギルドの依頼で、魔獣や魔物を倒してこいっていうものなんだけど。ボクは討伐初めてなんだ!


 討伐は基本、ランクEからしか受けられないんだ!


 冒険者ギルドに登録できるのは15歳からなんだけど、こないだやっと最低ランクのFからランクEに上がったの!


 普通はFからEなら半年で上がれるんだけどね、ボクは採取とか掃除とか捜し物が凄く苦手なんだ! だから時間がかかっちゃって・・・・・・。


 でも戦闘なら得意だよ! 獲物は槍さ! ゴブリンくらいなら瞬殺出来るよ!

 ゴブリンは1匹見たら30匹って言われるくらい繁殖力の強い魔物でね。今回の討伐依頼も街道でゴブリンが出たからちょっと狩ってこいっていう依頼なんだ!

 ゴブリンなら採取の邪魔してきた時に狩ってるから慣れてるし!


 ソロで行くつもりだったんだけど、偶然会った師匠が一緒に行ってくれるって言うからお願いしたんだ! 師匠は冒険者じゃないんだけど手伝ってくれるんだって! いい人だよね!


 あ、なんで師匠かって言うとね。


「お前さん才能があるな、この依頼が達成出来たら俺が鍛えてやろう」


 って言ってくれたんだ。元冒険者なんだって!

 イケメンでちょーかっこいいおじさまなの!

 奥さんいるのかな? いなかったらアプローチしちゃおうかな!

 

 きゃー!


「あのう・・・・・・?」


 いけない! 暴走して舞い上がっちゃった!


 男の子に話しかけられてるのに気付かなかったよ!


 どうしたの? ボクに何か用かな?


「あ、あの、メイリさんですよね?」


 緊張してるのかな? ボクと微妙に目を合わせないで聞いてきたよ。


 ボクは頷いてランクカードを見せる。

 ランクカードはいわば冒険者の証明書だよ。主に名前とランクが書いてあるんだ。


 そうだよ! メイリだよ! メイって呼んでね!

  

「よかった、間違ってなかったんですね! 僕は九江卿人ここのえ けいとといいます。九江十三郎の息子です」


 え!? 師匠子供いたんだ! 凄く礼儀正しい子だなぁ。そういえば少し師匠の面影が・・・・・・うん、師匠は諦めてこの子を育ててもいいかもしれない!


 それで、その卿人君がボクに何のご用かな?


「えっと、父が急用で来られなくなってしまって、僕とこの子が代理で派遣されました」


 え? 君みたいな子供が? まだ十歳くらいでしょ? それとこの子って・・・・・・。


 卿人君の隣に目を向けると、栗色の髪をサイドポニーにまとめた女の子がいた。


 え、かわいい。


 何この子凄く可愛い! 髪つやつや! おめめくりくり!


「わたしは朧雪華おぼろ せっか! おねーさんよろしくね?」


 にっぱーって表現がぴったりな笑い方をボクに向けて挨拶してくれた!


 可愛い! 笑顔可愛い! お花咲いたみたい!

 ボクはぶんぶんと頷いた。


 うん! 宜しくね雪華ちゃん!


 でもなんで師匠はこの子達をよこしたんだろう? まだ戦える年じゃ無いと思うんだ。

 ・・・・・・。

 成る程! 小さい子達でも狩りをしたりするもんね! 師匠はこの子達も鍛えようとしてるんだ!

 卿人君の方はちゃんと変なメイス? と盾をもって革鎧を着ているし、雪華ちゃんは手甲を付けてるね。格闘系かな? 厚手のジャケットにショートパンツってスタイルだけど、防具無くて平気なのかなぁ。


 でもいいか! もともとソロで受けるつもりだったし。ボクがこの子達を守ればいいんだもんね! 


 はっ! もしかしてこれも師匠の修行の一環!? 流石師匠!


「ええと、依頼内容はゴブリンの討伐でしたね。場所は聞いてないので、お任せしてよろしいですか?」


 ボクはどんと胸を叩いて腕を天に向かって突き上げる!


 うん! まっかせて! じゃあゴブリン退治にレッツゴー!


「れっつごー!」

「お、おう?」


 雪華ちゃんがボクに合わせてくれた。卿人君はまだ緊張してるのかちょっとずれちゃったみたいだけどね!


 道中はとても賑やかだった。卿人君と雪華ちゃんが良くしゃべる子なんだ。

 でもボクはちょっと落ち込んでいる。だって・・・・・・。


「卿人ー」

「なんだい? 雪華」

「鎧って重くないのかな?」

「そりゃあ重いよ。頑丈なの着るために鍛えてる人もいるくらいだし」

「卿人も?」

「それもあるけど、僕は別の目的かなー」

「え? なになに? 聞かせて?」

「そりゃ、雪華と一緒に戦いたいからだよ」

「そっかー、じゃあわたしももっと頑張るね!」


 とか。


「ねえ雪華」

「なぁに? 卿人」

「視界が狭い時の戦い方とか習うの?」

「うん、目隠ししてやるんだ。危ないからお父さんとしかやらないけど」

「僕も習おうかな」

「うん! 一緒にやろうね! 卿人ならすぐ慣れるよ」

「そうかなぁ」

「うん! わたし目隠ししても卿人がわかるよ!」

「それは訓練しなくてもできるかも」

「ホントにぃ?」

「僕の雪華センサーなめんな」

「やあん、エッチ!」

「なぜに!?」


 とか。

 

 すでに恋人同士の会話だよねコレ!?

 つうか訓練の会話にいちゃラブぶっこんで来るのやめて欲しいんだけど!

 会話のまえにいちいち名前で呼び合うとかうらやましいんですけど!


 っと、いけないいけない! 卿人君育成計画が頓挫したからって落ち込んだらボクらしくないよね!


 ボクは恋多き女なんだから!


 甘い気配を漂わせる気配を後ろから感じながら歩いていると、前方で騒ぎが起きているのが解った。

 この辺りは街道脇に木々が生えていて、カーブの先は死角になっていることが多いんだ! 誰かが襲われているのかもしれない!


「雪華!」

「うん!」


 ボクが走り出すより速く、ふたりはダッシュでボクの横を駆け抜けていく。

 危ないよ! と、止める暇も無いほどの速さだった。

 ああもう! ボク走るのが苦手なんだよ~!


 急いで現場に向かうと、もう乱戦になっていた。

 どうやら馬車が襲われているらしくって、ボクと同世代くらいの冒険者達が必死で守っている。

 襲っているのはゴブリンだ! 位置的にも丁度依頼にあった場所と一致するね!

 ゴブリンは強くはないけどそこそこ知能があって群れるとやっかいなんだ。

 武器や防具を身につけていることが多くて、ランクの低い冒険者にはちょっときついかもしれない。


 かなりの数がいる! 助けなきゃ!


 あれ? 今ゴブリンがぶっ飛んでいかなかった?


 え? 何アレ凄い! 雪華ちゃんが周りのゴブリンを倒して回ってる!


 やっぱり雪華ちゃんは格闘系だったみたいだけど、ボクの知らない格闘技だ。


 素早くゴブリンに接近したら、拳じゃなくて手のひらを心臓辺りに打ち込んでる。

 そんなに強く打ってるようには見えないのに、打ち込まれたゴブリンはぶっとんで絶命している。

 雪華ちゃんが踏み込むたびに地面が凹んでるし、どういうからくりなんだろう?


 はっ! 卿人君は? 彼はどうなんだろう? あ、いた。


 うっそ! 凄い! ゴブリンにやられそうになってる冒険者の間に割り込んで、盾で攻撃を受け止めてる!

 しかもそのまま盾で弾いてよろめいたところをメイスで一撃。頭を殴りつけた! うわあ、顔が半分飛んでる・・・・・・。


 青黒いゴブリン特有の血しぶきに顔をしかめているけど、次々と不利な状況の冒険者に加勢しては一匹ずつ屠っている。

 とても堅実な戦い方で、必ず相手を仕留められる時にだけメイスを振るっていた。


 2人ともまだ幼いと言っていいのに凄い使い手だ・・・・・・。師匠がこの2人を寄越したのも頷けるね!  


 とか思っていたらボクの方にも何匹か襲いかかってきた。そりゃそうだよね!


 1匹1匹丁寧に刺していく。

 うん、やっぱりゴブリンなら問題ないね!


 あれ? 卿人君がこっちを見てなんか引いてる?

 君よりはスマートに倒してると思うけどな!


 やがてゴブリンは不利を悟ったのかぎゃあぎゃあと声を上げて逃げていく。


 うん! ボク達の勝利だね!

 追撃してもいいけど、今は馬車と冒険者が先かな。 


 卿人君が馬車周りを重点的に倒してくれたおかげで被害もそんなになさそうだし。

 うーんでも、怪我人が多そうだなぁ、ボクはヒールポーションとかそんなに持ってないし。でも冒険者は助け合いだもんね! よし! みんなに分けたげよう!


 あれ? 雪華ちゃんが触れると傷が治ってくんだけど・・・・・・? 

 え? 卿人君回復魔法使えたの!? めっちゃタンクっぽいのに!

 しかも治った人ぴんぴんしてるじゃん! 凄い魔法式組んでるんだろうなぁ。


「いやあ助かったぜ! お前らちっちゃいのにつえーなぁ!」

「たまたまですよ~。たまたま」


 卿人君は謙遜してるけど、普通の子供はあんな動き出来ないからね?


 馬車はなんか旅商人さんのものだったみたい。馬は無事だったよ。

 護衛の冒険者はランクEの5人パーティーで、みんな15、6歳くらいだった。ボクと同じだね!


 本当は護衛ってもっと上のランクのパーティーがやるんだけど、隣町からで、この辺はそんなに危険なモンスターは出ないから、商人さんは前の護衛と別れて、そこでこの冒険者を雇ったみたい。護衛代はケチっちゃだめだよね!


 商人さんは卿人君達と知り合いだったみたいで、なんか卿人君が怒ってる。


「おじさん! なんでそんなことしたんですか! 父さんに知られたら最悪取引停止になりますよ!?」

「いや坊ちゃん違うんだよ! 王都からの帰りで路銀が心許なくて・・・・・・」

「ウチの商品を持って行ったのに?」

「王家に献上したんだよ! そろそろ買い付けに来てるんじゃないかい?」

「あの騎士さんかなぁ・・・・・・とりあえずこの辺りを抜ければ安全ですから、気を付けて行ってくださいね。お兄さんお姉さん、宜しくお願いします」

「まかせろって! 助けて貰って怪我まで治して貰ったんだ! このおっさんは無事送り届けるぜ・・・・・・あれ? お前達どうすんだ? 帰らないのか?」


 そういえば! ボクらの依頼はゴブリンを一定数減らしてこい、だったはず! じゃあコレで依頼完了だね!


 卿人君はふるふると首を振った。え? 帰らないの?


「僕達は調査がで来たんです。もうちょっと調べてみないと」

「いくら強くても小さい子を残すのはちょっと・・・・・・」

「大丈夫です、保護者ならメイリさんがいますから」


 え、聞いてないんだけど! てゆうかボクが保護者!?




 保護者だったわ。年齢的に。


「おねーさん、ごめんなさい、ちょっと話あわせて?」


 くいっ、と首をかしげて見上げてくる雪華ちゃん。


 可愛い! いいよ! 任せて!


 みんなボクを見てるけど何故かどん引きしている。

 返り血は付いてるけどそんなに怖いかなぁ?


 まぁいいや、みんなに向かってサムズアップでもしておこう!


「なぁ、アレ・・・・・・」

「ああ、アレがいれば大丈夫だろうよ」

「倒し方も凄かったし・・・・・・」


 こらこら聞こえてるぞ! 

 ボクは丁寧に1匹ずつ倒していっただけだからね!

 そんな化け物を見るような目で見ないでくれるかな!?

 まあランクは同じだけどボクの方が戦闘は得意なようだからね! ふふん!


 でもこのふたりの方がよっぽど化け物だと思うよ?


「わかった、じゃあ坊ちゃん。また宜しくお願いしますね? くれぐれもこのことは内密に・・・・・・」

「解りました、父さんには言いません」

「助かります・・・・・・」


 坊ちゃんて・・・・・・師匠っていったい何やってる人なんだろう?

 ウチの商品って言うくらいだから商売人なのかな? 全然イメージわかないけど。

 

 旅商人さんを見送ると、卿人君が申し訳なさそうにしていた。


「ごめんなさいメイリさん。実は父から調査までしてこいと言われてて・・・・・・」


 そうだったんだ!


「いきなり保護者とかいってごめんなさい。もうちょっと付き合って貰っていいですか?」


 いいよいいよ! 師匠もそうするつもりだったんだろうし!


「いいみたいだよ?」

「うん、そうみたいだ。それでメイリさん、調査内容なんですが・・・・・・先にその格好をどうにかしましょうか」


 難しい顔で腕組みをした卿人君に言われた。

 あれえ? ボクそんなに変な格好してるかな?   

誤解があるといけないので補足、メイリさんは人間種です。


評価宜しく願いますね!



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