1話-3 :魔法戦争ゲーム(サバト)【選ばれた理由。そして始まる男女戦争ゲーム(サバト)】
朝日は意識を取り戻した。
周りを見回すと先程の白い聖堂にいた。
「事の経緯は理解したかな?」
魔法王と呼ばれていた男が倒れている朝日に話しかけた。
「さっきの夢は……」
「記憶伝達魔法。貴様の脳にわしの記憶を直接送ったのだ」
(記憶伝達……魔法? 魔法って言ったのか今? 確かにこの男の護衛らしき二人は出で立ちが魔法使いみたいだけど。三角帽被っているし)
「貴様は下界で変身石を視認できた。その石は下界の人間には一定の潜在魔力を秘めた者でしか視認できない石なのだ。そして石に触れた者を一瞬でここ、魔法王国「ソーサリー」に飛ばすようできている。貴様はその石に選ばれたのだ」
「魔法とか何とか、ファンタジーすぎて頭がついていかないんですが……」
朝日はこの目の前の光景すら夢なのではないかと疑い始めた。
「つまり目の前の現実を受け入れられないと? よかろう。ならば貴様が変身石に選ばれた少年、魔法少年であるという証拠を見せてやろう」
魔法王は再び腰の杖を抜き、杖先から光を放った。光がいつの間にか朝日の首に掛かっていた紫の宝石が埋め込まれた金縁のペンダント――変身石を貫いた。
今度は朝日の体が紫の光に包まれた。
光は朝日の着る高校の制服の形を作り変えた。
光がゆるやかに消えると、朝日は紫を基調としたローブ、紫のブーツ、紫の三角帽子を纏っていた。手には10cm程度の、棒切れのように弱々しい木製の茶色い杖を握っていた。
「これで自分が魔法使い、もとい魔法少年になったことを自覚して頂けたかな?」
魔法王は腕組みをしながら朝日の紫の姿、魔法少年のコスチュームを上から下まで見回した。
「……そうですね。何だかわかりませんが現実みたいですね。とりあえず僕のことを帰して頂けませんか? 明日学校なんです」
(夢にしたってもう少し疲れない夢がみたい。朝が辛くなるに決まっている)
「ならんな」
魔法王はきっぱりと言った。
「何でです?」
「これからすぐにサバト第85試合が始まる。貴様を帰すのはそれが終わってからだ」
朝日はそれを聞いて露骨に嫌そうな顔をした。まだこの夢続くのか。こういう頑固そうなおじさん苦手なんだよなあ――等と思いながら。
その朝日の表情を読み取ってか、魔法王が宥めるように補足説明する。
「何、心配するな。下界での1分はこちらでの1時間だ。試合が終わって帰る頃でも下界の時間は数分しか経っていないだろう」
(そろそろこの夢醒めないかな? 明日も学校なんだよ。多分公園で眠っているんだろうな僕。確かに、僕は月夜が子供の頃貸してくれた魔法少女サンムーンが大好きだ。僕のあの作品への愛が祟ってこんな夢見ているのだろうか?)
朝日がさらに顔をしかめた。
「まあ説明するより体感した方が速いだろう。それ、フィールドに行け」
魔法王は朝日に向かって杖を向け、再び光線を浴びせた。
朝日は自身の身体が軽くなり、公園でペンダントを拾った時と同じ感覚を覚えた。見えない力でどこかに飛ばされているのがわかった。
「貴様に基礎魔力の才は無い。であれば残された可能性は願いの重さだ。貴様の願いが7年で熟れたか、青いままかで魔法少年としての可能性が決まる。見定めさせて貰うぞ」
朝日の消えた聖堂で王が呟く