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1話-2 :魔法戦争ゲーム(サバト)【離婚調停の為のゲーム】

「え……どこだここ……?」

 朝日はペンダントから手を離し、腰を上げて周囲を見回した。

(さっきまで公園にいたのにどういうことだ?)

 そこは教会の中だった。

 祭壇に立つ朝日の真後ろには磔のキリストが縁取られたステンドグラスがある。

 扉から祭壇までは赤いマットが敷かれ、左右には無数の椅子が配置されている。

 朝日がぽかんとしているのも束の間、教会の入り口がバンッ! と強い音で開いた。

 入り口には三人の男がいた。

 右と左の男は30代くらいで黒いコートに身を包み、黒い三角帽子をかぶっていた。

 真ん中の男は50、60歳くらいに見える。背丈は190センチはあると思われる。赤いプレートアーマー(西洋風の甲冑)を着た筋骨隆々の初老の男だ。顔の造形が素で強面で、服装と肉体も合わさり戦士を連想させる。

「おお、来たか! 貴様を待っていたぞ!」

 真ん中の男が大きな声で朝日に向かって声をかけた。

「あの、ここは……」

「そんな呆けた顔になるのも無理はない。だが事の経緯を口で話すと長くなる。貴様にはこれを見て瞬時に理解してもらうぞ。何せ、ゲーム開始までもう時間がないからな!」

 朝日の困惑を無視して大男は腰にぶら下げていた杖を取り出して朝日に向けた。

 杖から眩い紅の光線が放たれ、朝日の体を貫いた。

 光線に貫かれた朝日はふらっと意識を失った。






 ☆

 朝日が眼を開いた時、朝日は自分の視界がおかしくなっていることに気づいた。

 場所は先程と同じ教会だったが朝日の眼に映る景色に色がなく、全てがモノクロに映っていた。まるで昔の白黒テレビの画面でも見ているかのように。

 扉から祭壇の真ん中で棒立ちしている朝日が祭壇に目を向けると二人の男女が向かい合い、お互いを睨みつけていた。

 男の方は先程の赤のプレートアーマー(西洋風の甲冑)を着込んだ初老の男。

 女は40歳くらいで、ゴシック様式の黒いドレスローブと三角帽を身に纏っている。

「あの、僕に何をしたんですか?」

 朝日は初老の男に問いかけるが返事がない。

 無視しているというよりは存在その物に気づいていないようだ。

『王、何故魔女の軍への入隊を許可しないのですか? 今日下界でも強い女は戦地へ向かいます』

 女は決して大きくはないが重々しさを感じさせる口調で王に抗議する。

『貴方の魔女蔑視は貴方の部下にまで伝播しています。さらには国民全体にまで魔女は弱く、守られるだけの存在という認識が広まっています』

『魔法使いは世界と戦い、魔女はその魔法使いを支える。それがこの魔法界『ソーサリー』の(いにしえ)からの習わしだ、女王。何より、事実だろう……』

『何ですか?』

 王を睨みつけながら問う女王。

『魔女が魔法使いより弱いのは』

 王は冷ややかな声色でその言葉を紡ぐ。

 その一言を聞き、数秒唖然とした女王。

 だがすぐに我に返った。

 表情が怒りをも飲み込んだ後の、決意や覚悟を感じさせる表情に変わり、王に言い放つ。

『わかりました、魔法王。魔力の多寡の根源が性別にあるという、その考え方を改めて頂けないのであれば、私が貴方に代わりソーサリーの統治者になります』

『ほう、つまりどうすると?』

『これから魔女だけの魔女王国を設立します。そこは魔女だけが暮らす国。せいぜい魔女のいないこの魔法王国で男だけで生活してみてください。そうすれば魔女が存在するありがたみもお分かりになられるでしょう』

『この魔法王国の土地は全て儂の土地だ。誰が所有物を渡すと思う?』

『勘違いなさっているようですがこれは革命です。魔女達の貴方方魔法使いに対する革命。土地の所有権等知ったことではありません』

『ほう、良いだろう。ならば戦争だ。戦争でどちらか勝利した方が土地の領土範囲を決めることにしようではないか』

『良いでしょう。それで魔女の存在価値を認めて下さるなら。ですが戦争で魔女と魔法使いを戦わせてはたった1万人の人口のソーサリーにとって損失になりかねません。ここは下界の人間を使いませんこと?』

『下界の人間を使うだと?』

『ええ。下界の人間を魔法使い、魔女の見習いである()童子(どうじ)にする能力を持つこの変身(へんしん)(せき)を使い、魔法使い達の代理で戦ってもらうのです。』

 女王は先程朝日が公園で猫に投げつけられたペンダントの宝石と同じ形をした赤い宝石をドレスのポケットから取り出した。

『魔童子としての素質を持つ男女を500人ずつ選抜し、男女別で戦いあって貰うのです。私が魔法少女軍、貴方が魔法少年軍。そして先に敵側500人のプレイヤーの石全てを破壊したチームの勝利とするのです』

『なるほど。勝利条件を石の破壊とすることで命の奪い合いにはならないという計らいか』

 魔法王が左の人差し指を顎に当て、考え込む。

『それに人材の集め方も悪くない。魔法の素質は人間界の10代から20代が最も高い。加えて、70億人という人間界の総人口数からの選抜なら1万人のソーサリーから集めるより良質な人材が確保できるな。良かろう。その魔法戦争ゲーム、いわばサバトに乗ってやろう』

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