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1話-0:魔法戦争ゲーム(サバト)【魔法少年(ヒーロー)と不審動物】

 小3の時、()(みず)朝日(あさひ)はごく下らない理由でいじめられていた。幼馴染の桃井(ももい)月夜(つくよ)が貸してくれた女の子向け魔法少女アニメの面白さをクラスメイトの男友達に熱弁したことが理由だ。

 日曜朝にヒーロー作品を見ず、女児向け作品を見る男子小学生は村八分もといクラス八分にあうのだ。

 その日、朝日は「戦隊VS魔法少女」と称して公園でいじめっ子達に転ばされ、膝を擦りむいていた。

 いじめっ子達が帰った後、1人公園で泣きじゃくる所に月夜が現れ、おぶって家まで連れて帰ってくれている所だ。

 夕焼けの路上。左右には家々が。

「朝日泣かないで! お家までもうすぐだから」

「ひっぐすっ……ぐすっ……ひっ……」

「朝日しっかりして。いじめっ子なんかに負けちゃだめだよ!」

(って言っても私のせいなんだよなぁ……。あのアニメ朝日に見せたりしたから)

「だって……あいつら月夜ちゃんが見せてくれたアニメバカにするから……」

「ふふっ、そんなことで怒ってたの~」

 背中から聞こえる朝日の言葉に呆れる月夜。

(でも……嬉しいなあ。私の好きな物で怒ってくれて)

「ダメだよ、男の子は魔法少女なんかじゃなくてヒーロー物みないと。仲間外れにされちゃうよ?」

「良いよ、仲間外れで。だって月夜ちゃんのアニメ、凄い面白かったもん!」

 それは強がりだった。

 本当は他の男友達の仲間に入れて欲しかったが、彼らと一緒になってあのアニメを馬鹿にすれば月夜に嫌われてしまう。

「そっか……。ありがとう! でも男の子はヒーローにはなれても魔法少女にはなれないから……」

「そーなの?」

「そうだよ」

 朝日は困った顔をしばらくしてから、閃いた顔で肩しか見えない月夜に宣言する。

「じゃあ僕、魔法少年になる!」

「へ? 何それ?」

「魔法少年なら男でもなれるでしょ? 僕が魔法少年。それで月夜ちゃんが魔法少女! これなら月夜ちゃんとお揃いだし、クラスの皆とも仲良くできるでしょ?」

 魔法使いの男の子なら皆も許してくれるだろう、といじめっ子達の顔を想像する。

 クラスメイトととも月夜とも仲良くできる方法だと思った。

「……あはははは! 変な朝日!」

 朝日の無邪気な発想に月夜は思わず噴き出してしまう。

 夕日眩しいオレンジ色に染まる路上で、おぶりおぶられの二人は自分達の後ろにいる生き物の存在に気づいていなかった。

「ふーん。彼は魔法少年になりたいんだ」


 小学3年生、8歳の朝日が本当に「魔法少年」になるのは7年後の話。

 この会話から3年後、朝日の母親が月夜を庇って殺され、月夜の左眼は切り裂かれ、閉ざされた。


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