羨望
敬意を抱かずにはいられない。
よくぞ遥々こんな所まで。
羨ましいよ、その艶姿。
酸いも甘いも乗り越えた、そんなあなたになれたなら。
誰も彼も品定めされる。
抗えない宿命にも値札がぶら下がる。
昨日も今日も変哲のない時間を持て余しているよ。
口調は優しく、評価は惨たらしく、品評会は開催中。
見映えが悪ければ、買い手はつかないからね。
味わい悪ければ、文句を言われるからね。
病気を持ってれば…ねぇ?
考えられる幾年月を費やしても、奇跡は起こらない。
ああ、長い手足があったなら、見映えも良かったろう。
ああ、滑らかな口があったなら、味わいも良かったろう。
ああ、健やかな心があったなら、ねぇ?
なりふり構わず分岐点にしがみつけたら、もしかしたら?
是が非でも訳有り品に潜り込めれば、いつの日か。
電話でもお別れ告げられないのは致命的。
明日も奇跡は起きない…ねぇ?
今夜も満たされない腹の足しに、目の前の蜜柑に手を伸ばす。