ラドヴィクス皇国物語2
ほうけていた 己の頬を ふっと優しく なでられた感じに 我にかえる。
そして 耳元で 囁かれた 優しい言の葉。
ーだいじょうぶ。あなたの想いびとさんは げんきよ、ぼうや。
振り返った 視線の先には、みたことのない 美しい女性の姿。
口元に 微笑みを浮かべ、優しく 見つめてくる。
そして その周りを 優しい風が まるで 守護するかのように 包み込んでいた。
「・・・あなたは?」
ーウィンディミア。ミアって 呼んでくだされば 嬉しいわ、あかつきの君さん。
一瞬 顔をこわばらせ、ふいっと 視線をはずす。
「その名は嫌いだ!」
ーふふっ、ごめんなさい。でも、“あかつき”って 一日のはじまりですもの。
とても 大切で素敵な瞬間ではなくて?
わたしは 好きだわ。
その瞬間も。その髪の色も。
はっと顔を上げ 大きく見開かれた瞳から、一筋の雫が こぼれ落ちる。
今まで 忌み嫌っていた呼び名を 大切だと いわれたことなどなかった。
ましてや 素敵などと。
思わず こぼれた涙を そよ風風が優しく ふきぬぐう。
そして、あたたかく その身を 包み込む。
ーふふっ、ほら、この子たちも あなたのことを 大好きだよって 伝えてるわ。
「この子たち?」
ーええ。そよ風も つむじ風も 皆 私の愛する幼子たち。
私は 風と音の葉を司る精霊ですもの。




