ラドヴィクス皇国物語2
見上げる空には、紅い三日月が 格子の隙間から見え隠れしている。
「この国の月は 紅く見えるのか・・・
まるで サロの 髪の色と同じとはな。
息災でいるのか、サイフェリアローズ」
月に向かって 独り言をつぶやくのは、もう 習慣となってしまった。
この地で 拘束されてから、もう 幾日がすぎただろう。
いくら にっくき存在だとしても、一国の王族であるためか
扱いは そう 悪いものではなかった。
拘束されている部屋も 格子でかこまれているものの、
それなりの 家具は そろえてあった。
もちろん、食事は 与えられているから 飢えることはない。
一緒にきたはずの 守護精霊は トンズラしたのか 全くのおとさたなしである。
「どの面さげて 守護者を 名乗ってるのか、ったく・・・
肝心な時は いつも いないじゃないか」
つい いつもの調子で ぼやいていると、
聞き慣れた声が すぐ近くで 聞こえてきた。
ーあらあら わたしの噂を しているのお~
ヤッパリ わたしのこと、♡♡♡なのねえん
なんと、水差しの注ぎ口から ひゅるんととびでてきたのは、
グランヴィスカの 守護精霊ウォリアルそのヒトであった。
あまりに シュールなその光景に さすがのグランヴィスカも
言葉を失ったのである。




