ラドヴィクス皇国物語2
サロの 護衛についてきたお師匠様の正体は、
精霊界を統べる孤高の存在ー精霊王その人だったのである。
精霊王は つかみ所のない飄々とした人物で、
多種多様な 力を有している。
はざまの森の管理人クロルと同じ 時を超える力を持ち
あらゆる世界を 旅(覗き見)するのが 趣味だった。
その中で出会ったのが キリ。
戦があった後の とある時代の鄙びた王国で 泣く力も枯れ果て 今にもその
命のほむらが 消え入りそうであったところを 助けた(拾った)のである。
“キリ”と名付け、ラドヴィクス王に 子育てを託し(押しつけ)
一方で 女騎士に姿を変えて サロを 監視してきたのである。
精霊とは、ひとびとを 見護る存在であり 干渉はご法度。
しかし、物事に 例外は付き物で サロの誕生も その一つであった。
初代ラドヴィクス王女を 母に、
炎の精霊フィラリエラを 父に持つ
希有な存在であり、その 能力は未知数。
その上 クロルの手違いで ずっとずっと未来の世界に 飛ばされてしまい
その時代への 影響を考えると 監視する必要が 生じたのである。
ただ 監視するだけじゃつまらないと
この手で育てようと思ったのが 運のつき。
とても 残念な(?)性格に 育ってしまった次第である。
彼女の存在を知りながら フィラリエラに知らせなかったのは
単なる意地悪に 過ぎなかったのだけれど、
探し出すのに こうも時間がかかってしまったのは 計算外だった。
しかし、
もし この世界に 干渉する存在になりうる場合は
最終手段をとる つもりであったのは 言うまでもない。
もちろん 王としての 責務もあるから、
四六時中 子育てに 関われない。
そんな時は 「仕事」と偽って 留守にしていたのだけれど・・・
ーサロ本人に 正体を明かすのは 私が許可してからにしろ。
フィラリエラに 約束させた 掟。
ーその代わり、子育てには 関わっていい。
ただし、
時代への 影響が生じた場合は 覚悟してもらうぞ。
それが
王と交わした 約束。
フィラリエラ自身も 実は 心のどこかに 不安を抱きながら
愛娘を 見守り続けてきたのだった。




