ラドヴィクス皇国物語2
ひゅん。
紅の髪が翻り、優雅に 弧を描き舞い落ちる。
その手に 短剣を 握りしめたまま、”紅のけもの”と呼ばれた乙女は
鋭い声を発し 隣にいた存在を 威嚇する。
「お前は何者?
お師匠様を どこにやった?」
あたりの緊張を 解くかのように、拍手の音が 響く。
パン、パン、パン、パン。
「いや、見事だね~。
さすが、私の愛弟子♡
動きは 衰えちゃいないようだね」
いつも 聞き慣れた声で 褒められ、目を白黒させるサロの様子に
にせ殿下は うんざりした声で 語る。
「何二人でじゃれ合っているんですか、ったく・・・
俺だって アニィと イチャイチャうふうふしたいんですよ!
それが ばかたれラヴィのせいで おじゃんになっちまったじゃないですか」
想いびとの名が 突然飛び出し、サロは 思わず叫んだ。
「ラヴィ様はばかたれじゃなくて マヌケなだけです!!」
しーーーん。
どう突っ込めばいいのか 誰も分からなくて、重ーい空気だけが 充満する。
(やっぱり、あいつの 娘だけあるな。
もしかしたら、クロルの上をいく大物かも・・・)
クロルとは、時間と幻影を司る精霊であり、この世界と精霊世界の境界を守っている
最強無敵の変人精霊である。
この場を治めるため、師匠の姿を 本来の姿に変換する。
それは、美しく威厳に満ちた美丈夫であった。
「久しぶりだね、サロちゃん。
その節は、この世界を救ってくれて ありがとう。
長い間 だましていてごめんね。
でも、このことは フィラリエラも 知らないことなんだよ」




