ラドヴィクス公国物語2
ー今後一切 この世界から 出ることを禁ずる。
もちろん 会おうなどと 考えることさえだ。
己の起こした現実の重みを 深く思い知るがいい。
いくぞ、アルテイナ。
そう 吐き捨てると、王は くるりと背を向け この世界ーゆめの世界ーから
出て行った。眠り続ける愛しい幼子を胸にぎゅっと抱きしめ 振り返り振り返り去ってゆく
月の精霊を 引き連れて。
孤高で素っ気ない外面だが 実は情深い精霊王を ここまで激怒させたものは いない。
それ程 犯した罪は 大きいのだ。
もう 涙も 出なかった。
彼を 失った時、
すべて 枯れ果てたから。
それから
笑うことも 泣くことも 話すことも 全てのことを 手放し、
ただ 淡々と 役目を こなし続けた。
そして、であった。
我が子に。
いな、
我が子の姿をまねた ずる賢い 闇に。
ーエ・・ル・・シー・・・ド!
しばらく出していなかった声は かすれ果て、 かすかな音の葉を 紡ぎだすのみ。
抱きしめると 暖かな滴が その頬に はらはらとこぼれ落ちた。
ぎゅっと目を閉じ 奇跡の再会を かみしめる。
抱きしめた赤ん坊が 不気味な笑顔を浮かべていたのに 気づかないまま。