21. 上條空斗(3)
今日も学校に登校した。
朝から遅刻せずに校門をくぐる。普通の高校生ならこんな当たり前のことが、僕にとってはそうではなかった。
久しぶりに学校に登校した時は自分の教室がどこになのか、よく覚えていなかった。一年生だけでも十一クラスもある。脳の奥深くにある記憶を辿り寄せながら、自分のクラスをようやく見つけることができた。
十一クラスの内、二つが特進クラスで、他のクラスより偏差値が高く、毎年難関大学に進学する生徒も多い。だけど、この学校のレベルは僕が第一志望としていた高校よりは下のレベルになる。
教室に入り、僕は席に座った。朝のホームルームが始まると、メガネを掛けた、女子生徒が号令をした。どうやらこの女子生徒がこのクラスの委員長だということを最近知った。
クラスの担任が、出席の点呼を始めた。僕が呼ばれる順が近くなると、不登校でおそらく毎日呼んでも返事がないので、自分の名前は飛ばされていたのだろう。上條、と無事に呼ばれたので、はい、とだけ返事をした。
一学期のほとんどを休んでいたので、授業にまったくついていけないのではないかという不安があったが、意外なことに、高校受験で第一志望の対策で勉強していた範囲だったので、ほっとはしたが、特進クラスのまぁこんなものか、という少し残念な気持ちになった。でも僕は、もうそんなことはあまり気にしないようにしていた。第一志望は落ちたけど、後は自分が今後、どうしたいか、だ。
午前中の授業はなんとかついていくことができた。昼休みに入るとクラス委員長に話しかけた。
「ちょっと、いいかな」彼女は首を捻って僕の顔をみて、意外そうにしていた。
「なに、どうしたの?」
「知っていたら、教えてほしいんだけど、宮本葵っていう女子生徒が何組か知ってる?」
「みやもとあおい?」と彼女は首を傾げた「──ごめん、ちょっとわからないかも」
「そっか、わかった。ありがとう」と僕は言って、教室を出た。もし同じ特進クラスなら、聞いたことがあるかと思ったけど、そうではなさそうだ。
僕は一般クラスの方の校舎に向かった。教室前の廊下に立っている男子生徒に声をかけて、宮本さんが何組なのか手当たり次第、聞いた。
そして運良く、二人目に聞いた生徒から、三組だという情報を得た。そしてその教室に向かった。そしてちょうど教室のドアから出て来た男子生徒に声をかけた。
「ごめん、ちょっといいかな」
「え、あ、おれ?」男子生徒は不意を突かれたようで、戸惑いをみせた。
「うん、このクラスに宮本さんっているよね」
「あ、うんいるよ。でも──」男子生徒は自分のクラスの教室内を確認した。「いつもなんだけど、昼休みは教室にはいないんだよ」
「あ、そうなんだ──ちなみに宮本さんって普段、どんな感じの子?」
「どんな感じって、あまり話したことないからなぁ」
「どんなことでもいいよ、教えてくれないかな」
「そうだなー、とにかく一人でいることが多かったかな。入学した頃は、一人仲よさそうな子がいたけど、その子と話しているところはここ最近は見てないなかな」
「その仲よかったって子のことは知ってる?」
「え、ああ、知ってるよ。同じクラスの女子だから」
「なまえは?」
「えっと──たしか、小向だったかな」
「今、教室にいるかな?」
「いるよ、あの窓際の先頭の机に座っているのがそうだよ」
ドアからその子の顔を確認して、脳裏に焼き付けた。
わかった。ありがとう、といって、僕は自分の教室に戻った。




