とある夏の日常
とある事情で省くことになった読み切りです
僕は夏が嫌いだ
何が嫌いってとにかく暑い、クーラーがガンガンに効いた部屋から自分の水分ごと吸い尽くされるような炎天下に晒されるなら尚更だ
よく夏はスポーツが盛り上がるから好きという人も見かけるがよく分からない、冬にやればいいじゃないか
そう心で思っても誰にも届かない、所詮社会の中で生きてる1人だ
そう思いながら今日も、見飽きた病室の天井を見つめる、今日はここに来て何日目だろう、数えられるような日数じゃないか
そう誰もいない病室で一人孤独を誤魔化すように嗤う
僕はガンらしい、それも末期の
僕がここに来たのは3歳の時らしい、今の年は10歳で数えるのを辞めた
ここの病室にはお医者さん以外来ることは無い、生まれた時に死んだお母さんの代わりに育ててくれたお父さんは去年最後に「ちゃんとしっかり歩けよ」と僕を励ましながら死んだ
僕は生きてる意味はあるのか?そんな自問自答の日々を送っている
「あついなぁ.......ん?」
机の上にケーキが置いてある、今日は誕生日らしい
僕は誕生日が楽しいと思ったことは無い、お母さんが死んだ日でもあるからだ
時計を見てみる、もうすぐ午後3時をさしお医者さんの問診が始まる時間だ
そう言いながら病室に籠った暑さに頭がクラクラして眠くなる
「はぁ.......ね.......む.......い....」
何やらうるさく赤いランプが鳴り響く中僕は眠ることにした
次に目を覚ますとそこはいつかの父さんと遊んだ公園だ
公園からでて真っ直ぐのアスファルトで押し固められた道路を歩く
黒色のアスファルトに足を踏み入れた瞬間むわぁんと熱気が僕を包む、何故か心地よい
そのままひたすら歩いた、すると段々と汗をかき全身がびしょびしょになる
「疲れたな.......」
足を止め遠くを見ようと目を細める、すると誰かいた
女の人だ
「おーい何してるんだー」
そう自分でも変なことを聞いてると分かりつつも聞いてみる、すると
「ふふっ」
笑いながら遠くに消えていく、まるで陽炎のように
そんな中僕はその微笑んだ人が誰だか分かってしまった、その人の声は聞いたことは無いはずだ、その人の顔は見たことが無いはずだ、けど分かる
「母さんッ!」
そう叫びひたすら走る、だが後ちょっとのところで転んでしまう
「わあっ」
膝から血が出ているじんじんと痛い
「顔ぐらい.......見してよぉ.......お願い.......」
自然と泣き出してしまった、すると後ろから誰かが僕の肩に手を置いた、夏の暑いとは違う暖かい手だ
「ちゃんと歩けよ」
そこには父さんがいた
「と、父さん?死んだんじゃないの?」
そういうと父さんは悲しそうな顔をする
「今は.......前を歩こう」
「うん」
そう頷き手を繋ぎ歩き出す
そのまま歩くとさっき居た公園に着いた、ベンチには母さんが座っていた
僕は父さんの手を強く握りながら近付く
「母さんッ.......」
母さんの顔は涙で溢れていた
「ごめんね.......一人にして.......」
そう言いながら抱き締められる、嗚呼暖かい.......
そんな暖かさで口が緩んだのか声が漏れ出す
「何だ夏いいことするじゃん」
僕はやっぱり.............夏が好きだ
「ドクター死んでしまったのですか?」
「ああ.......」
「.......」
「でもとても幸せそうな顔だよ」
ふと窓を覗くとそこはいつも通りの変わらない景色が広がっていた
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