プロローグ
俺、笹倉弘明は入学式を終えて、校庭にある掲示板で自分のクラスを確認してため息をついた。
「はぁ、また一緒かよ。」
そう、中学から、いや小学生のころからの幼馴染である小野雄太と同じクラスだったのだ。
小学生のころは雄太に加えてもう一人、深山あかねという女の子と一緒によく遊んでいたのだが、あかねは中学入学を機に引っ越してしまい、今は連絡も取っていない状態だ。
教室に入ると案の定、雄太がこっちを向いて笑顔で手を振っている。
「よー!弘明、俺たちまた同じクラスだな。これで10年連続で同じクラスだぜ。これってうん、」
雄太が運命と言いかけたのをさえぎった。そんなことを言うと同性愛者だと思われかねない。そんなことになってしまえば俺は暗黒の三年間を送ることになるだろう。
「そんなことより俺の席はどこだよ?」
雄太が黒板を指さしながら答えようとすると、それより先に女の声が聞こえてきた。
「私の隣だよ」
その女生徒は凛としたという言葉をそのまま人にしたような美しい女性だった。立って席を指さしていたのを、はっとして顔を赤らめ、座ってうつむいてしまった。
俺も雄太もあっけにとられてポカーンとしてしまったが雄太がやっと発した言葉が「誰?」だった。
もちろん俺だって知らない。
「さぁ?もしかしたら同じ中学のヤツだったのかも」と答えるのが精いっぱいだった。
我に返ってやっと黒板を見たら座席表が書いてあり、たしかに俺の席はその彼女の隣だった。
俺の名前の横には平田と書かれていた。