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第6話 再会


オルスティア王国 迷宮王都ミザールの冒険者ギルド。


 王都の冒険者ギルドという事で他の町とは一線を画していた。

 レンガ造りなのは同じだが規模がまるで違う。

 王都でも3階建までは比較的よく見られるが冒険者ギルドは5階建だ。しかも1階のエントランスは天井を高くしているので実質6階建くらいの高さがある。

 町並みをみると冒険者ギルドだけ飛び出ている状況だ。

 室内はアールボーと同じで入口正面の奥に受付カウンター。右手側に掲示板や個別相談コーナー、左手側に酒場という配置。

 ただここも規模が違う。受付カウンターは5つあるし、掲示板も3倍は情報がある。酒場もアールボーの酒場が4つ入りそうな広さだ。


「朝だと言うのにいつもここは賑やかだなぁ。こういう場所は活気がないとな。さて掲示板を確認して、と・・・あれ?あそこの受付にいる獣人の女性って確か・・・」


 掲示板に向かって歩き始めた時、俺の視界の端に見慣れた顔を見つけたので確認しに行ってみる。


「あー、やっぱりアトリさんじゃないですか!お久しぶりです。ラオムです。覚えてますか?どうしてミザールの冒険者ギルドで受付なんてしているんですか?」


 そう、俺が冒険者登録をしたアールボーの冒険者ギルドで受付をしていたアトリさんがここで受付をしていたのだ。


「えっ、あっ、ラ、ラオムさん!お久しぶりです!私、今日からここで受付をする事になったのですが、こんな所でお会いできるなんてすごい偶然ですね。これは私達、何か縁があるのかもしれないですね!きっとそうです!そうに違いないです!」


 ん?なにか今、アトリさんが机の下で小さくガッツポーズをしていたような・・・?


「いやいや、俺のアールボーを出る時、アトリさんにもミザールへ行くって言いましたよ?忘れちゃったんですか?」


「あっ、えっ、いやその忘れてなんか・・・、むしろ・・・」


 なんか赤くなってごにょごにょ言ってる。

 言い辛い理由があるのかもしれないな。この件には触れないでおこう。


「まぁ、アトリさんが受付にいてくれるならやり易いな。これからよろしくお願いしますね」


「はいっ!ラオムさん、こちらこそよろしくお願いしますね」


 お、アトリさんの笑顔、やっぱり受付といったらこの笑顔だよな。やる気になるし、癒される。

 ミザールにいる他の受付の女性も綺麗なんだけど、なんか事務的で笑顔が無いから依頼受けてもしっくりこなかった。やっぱり笑顔で送り出されたいよね。


「で、早速なんですが俺向けのなんかいい依頼ってありますか?掲示板見てもいいんですが、ほら、朝は多いじゃないですか」


 掲示板の方を向く。

 そう、ギルドの朝の掲示板前はさながら戦場だ。

 誰しも安全で楽で美味い仕事を取りたくて朝から掲示板の前で待機している。

 俺はそこまでして依頼を受ける理由がないのでいつも落ち着いてから確認に向かっている。


「そうですね・・・。ラオムさん向けとなると、ミザール→アールボーへ小麦輸送の護衛 馬車5台分。ラオムさんなら街道の魔物のなんて楽勝でしょうし、荷物の運搬も、ね。いかがでしょう?」


「輸送の護衛か。良いけど、そんな街道の護衛なんて楽そうな依頼、他の冒険者が我先に取って行きそうなのになんで残っているのかな?」


 護衛の依頼は比較的人気がある。

 盗賊や魔物と対峙する必要があるが必ず遭遇する訳でもない。遭遇しなければただの小旅行みたいなもので食事も付いてくる。

 もし、盗賊相手で多勢に無勢ならサッサと降参してしまえば命までは取られない。下手に商隊を皆殺しにしていたら、国軍が討伐に来るからだ。


「荷物が小麦ですから依頼料が安いんですよ。だからみんなやりたがらないようでこの依頼結構前から放置されているみたいです」


「あー、なるほどね。冒険者は現金だからなぁ・・・。・・・よし、わかった!俺がその依頼受けよう!アールボーの町には俺も世話になったからな。運ぶのが食料なら遅くなると困る人がいるだろう」


「ありがとうございます!さすがラオムさんですね!」


 依頼を受けた俺は酒場で目新しい情報がないか、この半年で仲良くなった割と年配の情報屋に聞いてみる。


「ベルリッツさん、おはようございます!俺、これからアールボーへ行くんですけどなんか面白い話ってないですか?」


「ん?おぉ、ラオムか。おはようさん。今日は珍しく早いな。でアールボーなんてお前が半年前にいた町だろ。お前の方がよく知っているんじゃねーのか?」


「いやいや、ここに来てから半年ですがアールボーには1回も用事が無かったので行かなかったんですよ。だからなんか変わってないかな、と」


「そうか。んー、ならあれは知ってるか?数ヶ月前からアールボーの町に現れた期待の新人の話」


「お。それは知らないですね。是非聞かせてください!あ、おねーさん、こちらのベルリッツさんにビールとウインナーお願いします!」


「へっ、わかっているじゃねぇか。で、現れた新人てのが神聖魔法を行使して、弓で射るってスタイルみたいでな。後方支援に飢えていた連中が目を血走らせているとよ。またその娘がえらく可愛い女の子で巨乳なんでみんなパーティーに入れたいって更に拍車がかかってるって噂だ」


 神聖魔法、弓、女の子、巨乳、もしかして・・・

 まさか、な。


「ん、どうした。ラオム?なんかあったか?・・・ははぁ〜ん、お前、噂の女の子が可愛くて巨乳だからって早くもおったててんな?若い!若いねぇ〜、いやぁ若いっていいなぁ、ワッハッハ!」


「ちょ、ちょっと!違いますよ!そんなこと大声で言わないで下さいよ!ヒッ!」


 ゾクゾクッ!


 なんかアトリさんの方から激しい殺気のようなものを感じるのは気のせいだろうか?

 こちらに向いている視線がこ、怖い・・・。


「じゃ、じゃあ、俺はこれで。失礼しまーす」


 俺はその場を逃げるように立ち去った。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 護衛及び運搬の依頼は楽勝だった。

 荷物は俺が『空間魔法』で馬車ごと収納した。

 馬は各町を行き来する、貸し馬があるので行きは必要ない。帰りは貸してもらってミザールで返却すればよかった。

 道中、ゴブリンやホーンラビット、キラーバタフライ等に遭遇したが、今の俺にとってはただの雑魚でしかなかった。


 アールボーの町の指定場所に荷物を引き渡して依頼完了。

 依頼完了の報告はどこの町の冒険者ギルドでも出来るので早速アールボーの冒険者ギルドへ向かう。


「あー、久しぶりだなぁ。冒険者の人達はたまにミザールで会うけど俺がアールボーへ来たのは半年振りだもんな。半年じゃ何も変わらないよな。あ、アトリさんがいないくらいか」


 そんな事を考えつつ、入口から受付へ行き、完了の手続きをしていると入口の方が騒がしくなる。


「ん?なんだ?有名人でも来たのか?ま、いいか。俺には関係無いしサッサと手続きを済ませよう」


 手元の書類に目線を移す。

 後ろでは騒ぎが大きくなっているようだが・・・


「・・スちゃん、今日も助かったよ。また・・・」

「セ・・・ゃん!今日これから食事でもど・・・」

「てめ!このやろ!セリ・・・んは俺が・・・・」


「あははは、皆さんちょっと落ち着いてくださいね。今、受付で完了の報告を・・して・・来ま・すから・・・?」


 完了の手続きを終えてくるりと振り返り、受付に寄りかかりながら再度喧騒の集団へと目を向ける。

 噂の女の子と目があった。

 瞬間、


「・・・・・・ラ、ラオム?ラオムなの?ラオム、だよね?ラオムだよね!ラオムだよね!!生きていたんだね!!!ラオム〜〜〜〜〜〜〜!!!!」


 蒼髪の少女が集団を強引に抜けて、俺の方に走る。そして勢いよく俺の胸に飛び込んで来た。


「ラオム!ラオム!ラオム!ラオム!ラオムラオムラオムラオムラオムぅ〜〜〜!えぇ〜〜ん」


「・・・セリス、か?よお、久しぶりだな、元気だったか?」


 心配させまいと出来るだけ軽い感じで胸元のセリスに声をかける。

 セリスはすでに涙と鼻水とヨダレで顔をぐしゃぐしゃにしながら、俺の胸に顔を押し付けてグリグリしている。早くも服がビチョビチョになっている。

 ミスリルの胸当て付けてなくてよかった。付けていたらセリスの顔、打っていただろうな。


「ゔぅ〜〜、ラッ、オム・・ック『元気、ヒック、だったか?』じゃないよ!ヒクッ、1年、半前、ラオムが、死んじゃってぇ、・・・・・うぅっ、私がぁ・・・どれだけ・・悲しかったか!私が、どれだけ悔しかったか!!私がどれだけ絶望したか!!!ラオムには、わからない!?なんで生きてるなら、村に帰って来なかったの!?なんで連絡もしてくれなかったの!?なんで手紙の1つもくれなかったの!?なんで!?なんでぇ!?なんでなのぉ・・・」


 崩れ落ちるセリスに合わせて俺もしゃがみ込み、セリスの頭を優しく撫でながら静かに、それでいてしっかりセリスに聞こえるように囁く。


「・・・そう、だよな。連絡の1つもしておくべきだったな。ゴメンな、セリス。俺が悪かったよ。本当にゴメンな」


 しゃがみ込み、俺の胸に顔を押し付けて静かにスンスン泣いているセリス。

 俺は優しく抱き締め、セリスが落ち着くように背中をポンポンと軽く叩いてやる。


「・・・・・・ズズッ、もう・・今度は私を置いて、勝手にどこかに行ったりしない?」


「・・・あぁ、行ったりしないよ」


「・・・・・私を置いて、いつの間にかいなくなったりしない?」


「あぁ、いなくならないよ」


「・・・・私のこと、大事にしてくれる?」


「あぁ、大事にするよ」


「・・・私をお嫁さんにしてくれる?」


「あぁ、お嫁さ、ってお前ドサクサに紛れて何言ってんだよ!?」


 バッ、とセリスの両肩を掴み、顔を胸から引き剥がすと涙と鼻水とヨダレでぐしゃぐしゃになっていたけど、「えへへ〜」と頬を朱に染めたセリスは俺が今まで見たことない最高の笑顔をしていた。


「・・も〜!ラオムったら!そこは流れ的に『お嫁さんにするよ』っていう流れだよ」


 こ、こいつは・・・。セリスを見ながら顔がピクピクと引きつる。


「・・・知らん。勝手にしろ。」


 セリスをベリッと完全に引き剥がして立ち上がり、俺はスタスタと出口に向かって歩き始める。


「あ、あ、あ、待ってよ〜、ラオム!ラオムったら!ねぇ、待って、待ってよ〜〜」


 外に出る俺を追いかけて、慌てて駆け出し外に出るセリス。


 俺たちが外に出た後、ギルド内にはあまりの展開に残された人達がしばらく呆然と佇んでいたとかいないとか。

セリスとの感動の場面を書きたかったのですが落ちつけちゃいました。

落ちなしでも良かったのですがなんとなく面白くないかな?ってことであのようになりました。

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