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第5話 近況報告


 冒険者登録をした日から1年と半年が経った。


 俺は今、オルスティア王国の王都、迷宮王都ミザールに拠点を移していた。


 あの日、俺を持ち回り制にして各パーティーに参加する、と言う案に賛成する際、俺はいくつかの条件を出した。

 その条件とは、


 ・パーティーに加入させる際は正規メンバーと同等の扱いをすること。但し、俺の安全には充分配慮すること。

 ・依頼料は一律小金貨1枚。加えてパーティーで稼げた金額をパーティーメンバー数で均等に等分した金額を俺の追加報酬とする。但し、冒険者のノウハウを教わった場合、その金額より3割返納とする。

 ・水と食料および消耗品は依頼者側が負担すること。

 ・この持ち回り制の期間は1年間とする。以後どうするかは俺の任意とする。


 と、こんな感じの取り決めを行い、俺は各パーティーに参加した。

 色んなパーティーに参加して冒険者としてのノウハウを学んだり、俺が父さんから学んだ商人知識を教えたり教わったり、アールボー周辺の町を案内してもらったり、これまでの冒険談を聞かせてもらったりものすごく勉強になった。

 たまに迷宮で死にかける事もあったけど何とかこれまで生きてこれた。


 この1年は冒険者達と遠征ばかりしていたので宿に泊まることもなく草原や迷宮で野宿ばかりしていたのでお金も使う暇がなかったのもあってかなり貯まっている。


 一緒に行動したどのパーティーも荷物の心配をしなくてもよくなった、ということで迷宮では魔物を倒して倒して倒しまくって、魔石や素材を限界まで回収した事もあって毎回かなりの報酬になった。

 もちろん成功ばかりではなかった。

 思う様に成果が出ず赤字になったこともある。そんな時は臨時とはいえパーティーメンバーということでちゃんと俺も身銭を切って赤字を補填した。

 そんなこともいい思い出だ。


 そしてあっという間に契約期間の1年が過ぎた。

 この1年ですっかりアールボーの冒険者ギルドに馴染んでしまったが一生をアールボーで終わらせる気もなかったし、これまでの旅の中で訪れた迷宮王都ミザールがとても気に入ってしまった。

 出身の村は元よりアールボーや周辺の町と比べてやはり全ての質が高く便利で居心地が良かったのだ。

 アールボーの冒険者ギルドのみんなに惜しまれつつ、俺は迷宮王都ミザールに拠点を移すことにした。

 と言ってもたまにアールボーの連中がやってきて依頼を受けたりしていたのでそんなに拠点を移したという実感はなかったりする。


 そんな感じで迷宮王都ミザール来て半年が経ち、だいぶ慣れて来た。

 最初ミザールに拠点を移した時は、部屋でも借りようかと思っていたのだが、アールボーの冒険者連中が変わらず依頼を出してくるので結局、部屋を借りてもほとんど部屋に帰れないことが予想されたので都合のいい宿屋暮らしに落ち着いた。


 ミザールの宿屋をいろいろ見て回ったところ、外観、内装、料金、応対、看板娘が可愛いと言った総合的な評価によって今は『星と目覚めの鳥亭』を定宿にしている。


「あ、おにーさん、いってらっしゃい!」

 玄関先でニコニコ笑顔で手を振って俺を送ってくれるとても可愛い娘だ。

 決して看板娘のルーリアちゃん(14歳)が可愛かったから、だけではない。

 アールボーの冒険者連中からは散々からかわれたが。


 そんなこんなで今の俺の状態は、


 ラオム LV.38

 ギルドランク Cランク

 スキル

『空間魔法LV.3』『身体強化LV.5』『魔力制御LV.5』

 装備

 ミスリルの槍

 ミスリルの胸当て

 ミスリルの小手

 ミスリルのブーツ

 所持金 14,700,000リアル


 お金はミザールに来た当初もっとあったが、俺自身の装備が登録した日のままの鉄の槍だったので魔力が通しやすいミスリル製一式に思い切って揃えたのだ。

 まさか装備で小白金貨1枚 10,000,000リアル無くなるとは思わなかった。だがさすがはミスリル製。鉄製とは違うな、鉄製とは。

 実際、この装備のおかげでやっと俺もそこそこの戦力になったと実感出来たのだから良しとしよう。

 ミスリルは魔力を通す。

 なので『魔力制御』で装備に魔力を通すことにより攻撃力や防御力を飛躍的に高めることが出来るのだ。加えて『身体強化』を併用すれば『槍術』のスキルが無くてもそこそこの魔物をソロで仕留めることが出来る様になった。

 何故、槍なのか。最初は俺も剣にしようとしたのだが、「ラオムには前衛としての働きは全く期待していない」とアールボーの冒険者達の意見が満場一致だったので渋々中衛から攻撃することも出来る槍で落ち着いた。


 LV.も38という数字は通常1年で上がる数値ではない。が、俺の場合は1つの依頼が終わった時には次の依頼者が準備万端で待っているケースが続いた。しかもだいたいの冒険者が俺よりLV.が高いから迷宮の深い所にガンガン進んで行く。よって俺のLV.もガンガン上がる。

 極め付けはウォームのパーティー、『スカイブルー』に同行した時だ。あいつらとアールボーの町周辺の中規模迷宮、ベルナールの迷宮に行って踏破してしまった。


「あっはっはっは、いやーいつもは荷物が多くてまともに戦えなかったけど荷物が無いだけでこんなにも楽なんだねぇ。楽勝楽勝!」


 なんて言ってウォーム達はアッサリと踏破してしまったのだ。

 いつもは装備の予備、食料、回収した素材の関係でいいところまで行くが引き返していたのだとか。

 今回、踏破したことによって俺のLV.が28→38まで一気に上がったのだ。

 これが無かったらまだ30前後だったろう。

 おかげでヒョロヒョロだった身体も冒険者らしく引き締まった身体になることが出来た。


 そうそう、『空間魔法』もLV.3になった。何故かこのスキルだけはLV.が上がった時に脳裏にフェーイヒカイト様の声が響くのだ。


 《『空間魔法』のLV.があがりました。》

 《LV.1→2 空間解放1→2個 空間間口1.8→3.6m

 射程範囲0.8→1.6m 収納容量20×20×20→40m×40m×40m

 魔力消費無 空間固定【new】》


 《LV.2→3 空間解放2→3個 空間間口3.6→5.4m

 射程範囲1.6→3.2m 収納容量40m×40m×40m →60m×60m×60m

 魔力消費無 空間固定 空間浮動【new】》


 な感じでLV.1→LV.2へLV.2→lv.3になった。

 どうやら『空間魔法』は俺のLV.が関係しているみたいで20と30になった時に『空間魔法』のLV.が上がったことから次は40で上がるのだろう。


 告知があった内容については検証が済んでいる。

 まずは『空間解放』。

 解放という言葉からこの魔法の特徴から収納を開く事だと推測できた。いつも使用する時は物を1つずつ出し入れするだけなので気にした事無かったが、試しに両手それぞれで収納を開くと…出来た。さらにLV.3になって同時に足でも開くと…出来た。両手両足では無理な事から空間解放=収納を開ける数、か。

 これは後述する他の能力と組み合わせればとてつもなく使えると思う。


 次に『空間間口』。

 これは収納する際の入口の大きさだな。最初は俺の身長くらいしか入らなかったが、LV.が上がってから荷物を収納する時、今まで以上の大きさの荷物がまとめて収納出来た。

 単純に俺の身長より大きな物を収納出来るようになったのだから収納出来る物の幅が広がった。


 お次は『射程範囲』。

 簡単だな。所謂、射程距離だ。最初は手を伸ばした位置でしか物の出し入れが出来なかったが今は3.2m先で物を「出す事」が出来る。そう、「出す事」は出来るのに「入れる事」は出来ない。色々試してみたところ俺が間接的でもいいから触れていれば収納出来るようだ。槍の穂先に物を持って入れるとか。

 これ、微妙なんだよな。出す事は出来て入れる事が出来ないとか欠陥スキルもいいところだろ。

 何かいい使い道はないものか?


『収納容量』。

 これは見たまんまだな。どうやらLV.が上がる毎に+20mずつ増えていく感じだな。60m分の入れる事なんてあるのか?いや、今の所ない。


 最後に能力だ。

『剣術』ならスラッシュ、ダブルスラッシュだとか『槍術』ならスピア、フラッシュスピアとかに当たるやつだろう。

 基本スキルに備わっている技はどの能力でも強い。俺の『空間魔法』も同じで癖は強いがとても有用な能力ばかりだ。『空間魔法」ってLV.が上がる度に出来ることが増えていってる。LV.は上げにくいけど、その分の見返りは十分あると思う。


 で、その技だが・・・なんて考え事しながら歩いていたら、ミザールの冒険者ギルドに着いてしまった。


「さて、今日はどんな依頼を受けるかな」


 俺は冒険者ギルドの扉を開ける。

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― 新着の感想 ―
[一言] 空間は操れても時魔法がないから腐るのか(笑)
2020/01/24 09:46 退会済み
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