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第2話 スキル授与

初日連続投稿2つ目。


 真っ暗闇な世界の中、どこからともなく眩く輝く一条の光が差し込む。

 その光はだんだんと人の姿を織りなしていく。

 しばらくして人としての姿が完成したと思ったら、急に光が弾け、真っ暗だった世界が一瞬にして今度は真っ白な世界に染まった。


「おぉ、ラオム。死んでしまうとは情けない。せっかくの15歳の誕生日、私がこれからあなたにスキルを授けるところでしたのに」


 女性、なのか?状況がさっぱり理解できない。

 俺は森で胸に穴が開いて死んだはずでは?

 それにスキルを授けるって?


「あの、申し訳有りませんが今置かれている状況が俺にはさっぱり理解出来ないのですが?」


「ラオム、あなたは死にました。あなたにあの日、授ける予定だったスキルの1つはあなたの為に用意した、あなたしか使えない特別なスキルでした。せっかくの特別なスキルがこのまま日の目を見ないのは私としても忍びないので特別にあなたを生き返らせてあげることにしたのです」


 これは夢?うーん、だがやけに意識もはっきりしているし、目の前の人の存在感がとてつもなく大きいのだけはわかる。


「もしかしてあなたは神様?もし神様なら才能の神様、フェーイヒカイト様でしょうか?何故、神様が私に特別なスキルを授けて下さるのでしょうか?」


「そうですね、あなた方の認識での呼び方、名前を名乗るのであればそれで合っています。あなたに特別なスキルを授けるのは先程伝えた通り。・・・理解出来ていない顔ですね。付け加えるならあなたがスキルの存在を知っているにも関わらず、心から特定のスキルを願わずにいたから、です」


 確かに俺はあのスキルがいい、とかこんなスキルならいいな、といったことは考えずに神様の好きなスキルでいい、と思っていたが。


「そんな奴、世界を探せば俺以外にもっとたくさんいるでしょう?そんな理由で貰えるならもっと世界には特別なスキルを持った人がいるはずですよ」


「あなたが思っている以上に人は欲にまみれているのです。どんなに表面上は取り繕っても心の底ではスキルについて願っているものなのです。あなたもスキルを除いた他の欲については普通でしたが、スキルだけは完全に神任せ、そこに曇りはありませんでした。なので私おすすめの特別なスキルを授けるのです」


 わかった。多分これ以上聞いても答えは変わりそうにないな。神様の意思に逆らう気もない。なら素直に授かるか。


「承知しました。そういう事なら俺の望みを叶えていただきありがとうございます」


「それではあなたにこのスキルを授けます。・・・スキルの詳細やLV.が上がった時の内容についてはその時に理解出来ますので大丈夫です」


 俺の中に「何か」が浮かんでくる。

『空間魔法』?なんだこりゃ?

 さすが特別と言われるだけあって聞いたことのないスキルだ。

 あとは『身体強化』と『魔力制御』か。

 昔、村に立ち寄った冒険者に聞いた事があるやつだな。


「スキルを授けていただきまして、ありがとうございました。ところで俺を生き返らせてくれるとの事でしたが、俺の胸には穴が開いていましたけど?」


 神様、フェーイヒカイト様が手を水平に動かすとフェーイヒカイト様と俺の間の足元に水紋が拡がり、見たことのある人達が見える。


「・・・父さん、母さん、セリス。みんな泣いてる、のか?これは葬式?」


 俺の村では誰かが死ぬと陸上で葬式をあげて最後は海に還す。水葬ってやつだ。

 あ、おれの身体が布に包まれて・・・崖から落とされた。あの崖から落とされると海流の関係で陸に上がってくることは稀なんですけど・・・。


「あのフェーイヒカイト様?俺の身体、海に沈んでしまいましたけど・・・。あそこ帰らずの崖ってことで死体浮いてこないんですけど」


「安心なさい。私の神力であなたをアールボーの町付近の海岸へ漂着させます。そこからスキルを得たあなたの新しい人生が始まるのです」


「あの1つ質問があるのですが?」


「何でしょうか?」


「おすすめのスキルを授けて生き返らせていただいたのはありがたいのですが、俺には元々人生の夢というか、目標のようなものがありませんでした。先ほどのお話『せっかくの特別なスキルがこのまま日の目を見ないのは私としても忍びないので特別にあなたを生き返らせてあげる』というのは理由として強引過ぎると思ったのですが何か俺が生き返らせてもらった代わりにやらなければならない目標のなんてものがあるのでしょうか?」


「ふふっ、良いところに気が付きましたね。確かに貴方にやってもらいたいことは有りますがまずは冒険者になりなさい。冒険者の道を精進していれば、そのうち目的が理解出来る日が来るでしょう」


 フェーイヒカイト様がこれで話は終わりとばかりに胸の前でパンっと手のひらを合わせて、両手を広げるとフェーイヒカイト様の御身体が輝き始める。

 それはだんだんと眩しくなり、俺は目を開けていられなくなる。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 そうして、次に俺が気が付いた時、俺は見たことない海岸の砂浜に倒れていた。


「ペッペッ、うつ伏せに倒れていたから口の中に砂が

 ・・・」


 起き上がり、体に付いた砂を払う。

 しかしあれは夢だったのだろうか?ふと、胸元に目が行く。5cm程の穴が塞がった様な傷跡がある・・・。

 傷跡に触ってみるが痛みは無い。


「あれは現実だったか。ならスキルもあるはず」


 そう思い、俺は『空間魔法』『身体強化』『魔力制御』を順番に発動させて行く。

『身体強化』は常時発動型のようでどれくらい効果が出ているのかわからないので仕方ない。どのスキルもLV.1だ。

 装備や持ち物も確認してみる。

 どうやら葬式の時、父さんは餞別にナイフを俺の懐に忍ばせてくれたようだ。

 腰の革袋には小銀貨が7枚。無一文でないのは助かる。

 通貨は世界共通で「リアル」。お金と言うのはいつだって現実を感じさせてくれる。

 ちなみに支払いは硬貨で行われる。


 小銅貨 10

 大銅貨 100

 小銀貨 1,000

 大銀貨 10,000

 小金貨 100,000

 大金貨 1,000,000

 小白金貨 10,000,000

 大白金貨 100,000,000


 小銀貨が7枚だから7,000リアルか。

 いわゆる死んでからこの世とあの世を繋ぐ川を渡る際の船賃ってやつだな。

 ま、俺は一回死んだけど神様に直接送り迎えしてもらったから要らなかったな。代わりにこれからの人生で大事に使わせてもらいます。ありがとう、父さん。


 次の確認はスキルだな。

 スキルを授かっているのは確認した。『身体強化』と『魔力制御』はまあ、わかる。問題はフェーイヒカイト様が特別なスキルと言っていた『空間魔法』だな。


「さっき試した時は簡単に使えたが『空間収納』系みたいだったが?フェーイヒカイト様、もしかして間違えた?うーん、色々と試してみるか・・・」


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 試してみた結果をまとめてみた。これらのことがわかった。


 ・何も無い空間に制限はあるが任意のものが収納出来る。

 ・『空間魔法』と叫ばなくても意思1つで自由に空間が出せる

 ・適当に砂や石や木の枝を放り込んだところ、収納している内容は脳内に一覧が表示されて数量などが把握出来るが最大容量は不明

 ・1度に開ける空間は1つ

 ・入れる事が出来る大きさ(間口の広さ)は身長(175cm)程度

 ・空間が開ける範囲は手が届く距離(80cm)程度

 ・空間に入れるのも出すのも俺の意思ひとつ、入れる時は手を触れていないと入れられないが出す時は手を触れなくても出す事が出来る

 ・使用するのに何かを消費している感じは無い


 なるほど、わからん。


 う〜ん、これは『空間収納』とどう違うんだ?

 フェーイヒカイト様は俺だけの特別スキルと言っていたんだがなぁ?

 LV.をあげたら変わるか?

 疑問だらけだが、神様を信じてしばらく様子を見るしか無いか。


 さて、現状把握も終わったし、確かアールボーの町近くの海岸と言っていたな。

 ここに居てもしょうがないし、アールボーへ行ってみるか。

『空間収納』系のスキルだし、冒険者になって運搬関係の仕事でもしてみるか?


「って、よく考えたらあの村以外の町へ行くのって初めてだな」


 そう思ったら期待と不安が同時に訪れた。

 どんな人がいるだろうか?

 騙されないだろうか?

 村に来てくれていた冒険者や人族以外の種族もいるのだろうか?

 俺のような小僧でも冒険者になれるだろうか?

 15歳の若造にも生活し易いところだといいな。

 安定して住むところがみつかればいいな。



 様々な想いを抱きながら俺はこの海岸の砂浜から第2の人生をスタートさせる。


「まずは街道を探さないとな」

次は19時に投稿します。

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