表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/35

第12話 迷宮探索 その1

 

 迷宮。

 冒険者達が日々その身を粉にして探索する場所。

 曰く、お宝が眠る場所。

 曰く、魔物の巣窟。

 曰く、巨大な魔物の腹の中。

 曰く、貴重な飯のタネ。

 等々


 全ての迷宮は生きているという説が有力で放置された魔物の魔石、素材や死んだ冒険者の亡骸は一定の時間が経つと迷宮に取り込まれてしまう。取り込まれた魔力で再度魔物を生み出していると分析されている。

 その際、装備品なども取り込まれて次なる冒険者を誘う餌として迷宮内に出現する宝箱の中に組み込まれる事も判明している。


 10階層毎に1つのエリアとなっていて各10階層単位の最後には階層主と呼ばれる強大な魔物が次のエリアへ行く階段を護っており、それを突破しないと次の階層にはいけないようになっている。1度倒された階層主は、一定の期間が経つと再度迷宮から生み出される。

 迷宮深く潜る事もしくは階層主を討伐する事が冒険者達の一種のステータスにもなっている。


 各迷宮の最深部には守護者と呼ばれるその迷宮最大の魔物が待ち構えており、守護者を討伐する事で迷宮を踏破した事となる。その際、迷宮が今まで貯め込んだ魔石や数々の財宝を得る事ができる。

 踏破された迷宮は消滅こそしないが弱体化し、かなりの年月が経たないと以前の迷宮に戻る事はないとされている。


 ちなみに冒険者ギルドがその存在を把握、登録している迷宮に挑んだ場合、その迷宮の何階層まで到達したかはギルドカードに記憶される。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 迷宮王都ミザール。

 この迷宮は世界7大迷宮と呼ばれており、未踏破の迷宮である。記録として残っている過去最高到達階層は90階層と言われており到達者はオルスティア王国初代国王とそのパーティーだ。


 通常、1階層から10階層までは比較的難易度が低く、駆け出し冒険者でも対応出来ると言われているがミザールの迷宮は違う。全体的な難易度が高いので他の迷宮の1〜10階層に当たるもの存在しない。1階層なのに他の迷宮の11階層並みの魔物が出現する。

そのため事前に下調べせずに挑戦した駆け出し冒険者が何人も餌食にあっている危険な迷宮なのだ。

 また他の特徴としてはアンデッド系の魔物が多く出現することが有名である。その為、神聖魔法や火魔法、それに属する武器が非常に有効となっている。



「お、大きいねー。まさか入口がこんなに大きいとは思わなかったよ、他の迷宮の入口はもっと小さいのになんでこんなに大きいんだろうね?」


 セリスが1人迷宮の入口を見上げながら呟く。

 周りには珍しいことに誰もいない。ちょうど谷間の時間だったようだ。


 迷宮入り口前の広場は閑散としている。ポツリポツリと屋台も出ているが今はそのほとんどが終了している。冒険者が迷宮に行くピークは朝から昼過ぎまでなのでこんな夕方から迷宮に行こうとする冒険者の方が珍しいのだ。

迷宮はその入口を大きく開き、何時なんどきでも数多の冒険者達を受け入れるかのようにどっしりと佇んでいる。

 その内部は石造りのしっかりした造りで人造物であるかのように見える故に恐怖感は少なく、まるで危険ではないかのような錯覚を感じさせられる。

 迷宮内部ははっきりとした光源は無いもののぼんやりと光っており、一応明かりが無くても問題ない。


「ここの迷宮は大昔から存在していて、王都ができる前は深層から大型の魔物が出てくる事もあったみたいで迷宮が魔物を外に出せるように大きくなったのではないか?って言われているぞ。まあ、ここ数百年は冒険者が定期的に魔物を狩っているから出てきたことなんてないらしいけどな」


「ふわぁ、ラオムは物知りだなぁ。すごいなぁ。でもこんな大きな入口でないと出れない魔物なんて遭遇したくないよねー」


「他の冒険者の受け売りさ。深層の階層主ともなればあり得る大きさみたいだぞ。俺たちもいつかは戦うことになるさ。おっとお客さんだぞ!」


 迷宮をのんびり歩く俺たちの前方からグールが3匹現れた。


「ゾンビの上位種グールだな。神聖魔法が効くはずだ。まだ距離はあるし、グールの動きも遅いからセリス、やってみろよ」


「えっ?まだ神聖魔法の射程距離外だよ?届かないよ!」


 やれやれと肩をすくめる。


「セリス、お前の武器はなんだ?武器屋でやった事を思い出してみろよ。焦る事はない。危なくなったらフォローしてやる」


「・・・武器屋。あっ、そっか!わかった、やってみる!」


 理解してやる気になったセリスが左手に魔力を込めて、魔弓「混沌の蒼穹(カオティックブルー)」を出現される。

 そして神聖攻撃魔法を唱えながら弓を構える。


「我が前に立ち塞がりし不浄なものどもよ、気高き光の前で塵となれ、聖光の煌めき(バニッシュ)!」


 蒼白く光る魔弓から魔法陣が現れ、弓を引き絞るセリスの右手に通常は蒼い矢が現れるが今回は白い矢が現れる。

 そして放たれた矢は一直線に真ん中のグールの眉間に命中し、グールはその場に倒れ込み、魔石と化した。


「やるじゃないか!初めて実戦で使うとは思えないな。っと感心している場合でもないか」


 残ったグール2匹に向かって走りながら、武器防具を『空間魔法』で装備する。

 槍の攻撃範囲に入る。

 グールは緩慢な動作で俺に攻撃しようとその腐りかけの腕を振り上げる途中で俺の槍が首に刺さる。

 そのまま槍は水平に振り抜かれ、残ったグールの首はあっけなく宙を舞い、地に落ちる前に魔石となる。


「うん、グール如きじゃ、余裕だな。セリスの武器や魔法も相性良さそうだしこれは思っていたよりも行けるかな?」


 セリスが追いつくなり、


「うわー、うわー、グールなんて初めて見たけど気持ち悪い、気持ち悪いよぉ〜。あんなのが続くと思ったら早くも帰りたくなってきたぁぁぁぁ」


 自分の身体をさすりながら早くも帰りたいと言い出すセリス。


「いきなりグロいのに遭遇したからなぁ、他に出てくるのはスケルトンだとかゴーストだから、それならなんとかなるだろう?ほら、グールの魔石と素材回収してさっさと行くぞ」


 そうして俺達は現れる魔物を難なく撃破し続け、難なく10階層に辿り着く。

 他の迷宮に比べて難度が高いとは言え、基本的に1〜10階層まではその迷宮のお試しコースでしかない。

 10階層の階層主を倒して11階層に足を踏み入れて、やっとその迷宮の冒険者と呼べるのだ。


「さて、ここの階層主はスケルトンロードだ。だいたい他の冒険者が討伐していてお目にかかれることは少ないが・・・」


 そう言いながら迷宮の石壁な通路に鎮座する扉を開けはなつ。


「あ、いた。珍しい」


 そこはこれまでとは打って変わって石壁ではあるがとにかく広い空間であった。その空間の中央にはこれまでの道のりにいた如何にもスケルトンといった風貌ではなく、それなりの地位にある者が亡くなってスケルトン化した、という事が納得できる腕が4本ある魔物、スケルトンロードが仁王立ちしていた。


「これは運が良いな。スケルトンロードはたまに質のいい武器を落とすらしいからな。セリス、あいつは魔法は使ってこない。物理攻撃で押してくる。俺が引きつけて壁をやるからセリスは隙を見て攻撃してくれ。俺の方でも隙は作るが攻撃のタイミングは任せる」


「わかった。やってみるよ」


「よし、行くぞ!」


 扉を完全に開け放ち、俺とセリスは勢い良く部屋内に飛び込む。

 セリスは入口に近い位置で攻撃準備、俺はスケルトンロードに襲いかかる。


「さて、お前も俺達の糧になってもらおうか!」


 繰り出した槍の鋭い一撃は相手の二本の剣で叩き落される。

 たたき落とされた勢いをそのまま利用して縦に回転し、槍を相手の頭に叩きつけるように振り落とす。

 スケルトンロードは残った二本の腕で受け止めるが、その骨の腕では完全に受け止めることが出来ずにバランスを崩し、たたらを踏む。


「よしっ!ここでセリスから弓の援護が・・・来ない!?」


 チラリと後ろを見るとセリスが入ってきた時のままの位置で弓を構えたまま困惑顔で待機していた。

 アールボーの今まで同行した冒険者パーティーなら今のタイミングで援護が入っていたが、どうやら俺がセリスの射線上にいるから打てなかった様だ。

 いかんな、これはこの階層まで問題無く来れてしまった為に起こった弊害だ。

 確かに連携らしい連携の練習が出来てなかった。


「これは俺が悪いな。なら・・・スケルトンロードさんよ、セリスの練習台になってもらうぜ?」


 そうして体勢を立て直したスケルトンロードに向かって牽制をはじめ、セリスに向かって声を出す。


「セリス!こいつは俺が牽制して抑える。セリスはとりあえず攻撃しろ。なんとかするから俺のことは構うな。こいつで連携の練習をするぞ!」


「ごめん、ラオム!射線上にラオムがいると思うと当たるんじゃないかと思って・・・。でも、わかった。私のタイミングで攻撃するから頑張って躱してね!」


 俺は後ろから無造作に飛んで来る矢を回避しつつ、スケルトンロードに隙を作らせる。隙が出来たところにセリスの矢が的中する。何度か同じような状況を繰り返して、それで感覚を掴んだのか、俺に向かって飛んで来る矢の本数が減り、スケルトンロードが隙を作った時に飛んで来る矢の回数が増えた。

 それを更に数度繰り返せば、無駄な矢は激減し、援護と呼べるタイミングで矢が来る様になった。


「いいぞ、セリス!そろそろ仕留めるぞ!スケルトンロードの頭を狙え!」


 セリスに向かって叫びスケルトンロードの足を薙ぎ払う。

 膝から下を薙ぎ払われ、動けなくなったところにセリスの白い矢が眉間に刺さる。


 ビクッと一瞬身体を震わせた後、スケルトンロードは魔石になった。その後には2振りの刀が落ちていた。


「やったな!セリス!バッチリのタイミングだった!」


「えへへ〜、ありがとうラオム!ラオムが上手く隙を作ってくれたからだよ。でも初めての階層主戦で緊張したぁ〜。上手くやれてよかった。そういえば、武器を落としたね」


「あぁ、階層主も落とすには落とすけどかなり珍しいって話だぞ。・・・これは刀だな。この形状は独特で好んで使用する人がいると聞くからいい値段で売れそうだ」


 スケルトンロードの魔石と2振りの刀を収納して11階層へと続く階段へと歩きだした。


「セリス、次の11階層からが本番だからな気合入れて行くぞ!」


「うん、任せといてよ!」

来週より更新ペースが落ちるかと思います。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ