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第10話 アイドル化、再び

 

 立ったまま失神(していたらしい)セリスが復活した後、次は防具屋兼服屋に向かった。っていっても隣なんだが。


「よし、セリス!次は防具を新調するぞ。いい加減お前のその格好は何とかしないといけないと思う」


「ふぇ?私は神聖魔法でラオムを援護する後衛だからこのローブでもいいと思うのだけど?そんなに変かな?みんな何も言わなかったよ?」


 そう、セリスはもともと神聖魔法主体の冒険者を目指していたようでローブに肩から羽織るケープという服装に弓を持っていたのだ。

 これまでは良かったかもしれないが今後は弓も神聖魔法もガンガン使わせて後衛らしからぬ後衛になってもらいたいので各種LV.をあげてもらうつもりだ。

 なのでローブでは動きにくいだろうと思うので武器同様、新調した方がいいと思うのだ。


「変、と言うか、これからはもっとセリスも動く必要が出てくるだろうからローブではなく、動き易い服装の方がいいと思う。俺には女の子の服装は分からないから防具屋のおねーさんと相談してセリスが選んでくれ。あ、予算は1,000,000リアルくらいまでで頼むな」


「ふわぁぁ、そ、そんな金額の服なんで買った事ないよ〜。な、何を選べばいいか、頭がま、真っ白になって・・ふわぁぁ・・・!?」


 おっと、またセリスが失神するか?と思ったら店の1番奥にいたはずのお店のおねーさんがいつの間にかセリスの背後にいて、セリスの両肩をガシッと掴む。


「・・・お嬢様、宜しければワタクシが御手伝い致しましょうか?」


「ふわぁぁ、ぜ、是非お願いします!」


「それではこちらへどうぞ。お連れ様をお借り致します。申し訳ございませんがしばらくお待ち下さいませ」


 ワタワタしているセリスを連れておねーさんは奥に行ってしまった。

 じゃあ俺は今後の旅に必要な衣類を選んでおくかな。今までは1人だったから何とでもなったけど、これからはセリスも一緒だからな。野宿用の毛布だとかタオルだとか追加しておかねば。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 必要な物はあっと言う間に揃ってしまい、余った時間を『魔力制御』の訓練に費やしていると、


「お待たせ致しました。お嬢様の服を何セットか見繕いましたので御確認下さいませ」


 そう言って奥の試着室前に連れて行かれる。


「それではまず、こちらをご覧下さい」


 試着室のカーテンがゆっくりと捲られる。

 そこには蒼く腰まである長い髪を肩から優雅に垂らしている1人の美少女がいた。


「えと、この美少女はどなたですか?」


 シャッ!


 そう声をかけた瞬間、美少女は真っ赤になって試着室のカーテンを戻して引きこもってしまった。

 おねーさんはニヤニヤしながら


「お嬢様にとって、最高の褒め言葉でございました。ありがとうございます」


 と口にする。


「えっ?もしかして、今のがセリスなの!?ものすごく可愛かったんだけど・・・」


「・・・・・・ホント?私、変じゃない?可愛い?」


 カーテンの隙間からセリスが顔だけ出して聞いてくる。


「お嬢様、変では御座いません。大変可愛らしくなって御座いますので自信をお待ち下さい」


 おずおずとカーテンを開き、セリスが恥ずかしそうに出てくる。

 改めて見るとエルフがよく着ている服装に似ている。


 ホルターネックながら胸元が開いて胸を強調されつつ、さりげなくフリル付きの服に二の腕まである手袋。

 膝上丈のフリル付きミニスカート。

 腰の両サイド部分はミニスカートの上にホルターネックの上着の延長のような生地がローブ同じ長さまで伸びていた。

 どれもセリスの髪の色と合っていてとてもよく似合っていた。


 まじまじと見つめ、一言呟く。


「・・・いいね」


「やったぁ、嬉しい!」


 見つめ合っているとおねーさんが割って入ってくる。


「お楽しみのところ失礼します。他にも選ばれておりますのでそちらも御確認下さいませ」



 そうして俺はセリスのファッションショーを楽しんだ。

 どれもこれも素敵な服装ばかりで目移りしたが、1番最初に見た服装の印象が強かったのとセリスに似合っていたので結局、1番最初のにした。


「こちらの服にはエルフの加護がかかっており、『耐火』『耐風』『神聖魔法強化』が備わっております。こちらの服装一式、お値段しめて1,200.000リアルですが、本日はお嬢様の素材が良く私も非常に楽しませていただきましたので1,000,000リアルとさせていただきます」


「ありがとうございます。大事な使わせてもらいます」


「・・・嬉しいけど。だからなんでそんな簡単に大金払えるのよ〜〜〜〜!」



 セリスの叫びは無視して、さくっと服の代金を払って店を出る。

 これで所持金は8,700,000リアルくらいか。まだまだ余裕があるな。


「装備も新調したし、このパーティーって言っても2人だけど、そろそろ迷宮でどこまで行けるか試してみるか。戦力強化で次にどんな人を入れたらいいかの判断材料を得る為にも行ってみたい」


「私はこのままずっと2人きりでも、全く全然爪の先ほども困らないけど、ラオムがそう言うなら行ってみるのもいいよ」


 次の行動についてどうするかを歩かながら話しあっていたのだが・・・さっきからどうにも視線を感じる。

 んー?視線の先は俺ではない?これは・・・セリス、か?


 そう気が付いて周りの男どもを見てみるとセリスを舐め回すように見ている。

 そしていくつかのパーティーが何やら相談を始めたと思ったら、


「君、よかったら俺たちのパーティーに入らないかい?俺たちはミザールの迷宮19階層まで行っているから君にも満足してもらえると思うよ」


 セリスがパーティーの勧誘を受けた。

 1人のキザな男が声を掛けてきたのを皮切りに負けるものかと周りの男どもが一斉にセリスに声を掛け始め、囲まれる。

 俺は早々に囲みの外まで押し出された。


「こんな可愛い娘は初めてだ!是非うちのパーティーに!」

「いやお前のところは1人女の子がいるじゃないか!うちには女の子がいないんだ!うちに来るべきだろう!」

「あんたら何言ってんの!?バカじゃないの!?頭わいてるの!?死ぬの!?そんな野獣どもの中にこんな可愛い娘を入れられる訳ないでしょう!?私達のような女子だけのパーティーにこそ、来てもらわなくては!」

「君達のような粗野なパーティーでは彼女に相応しくない。我々のような高貴で気品溢れるパーティーにこそ相応しい!是非我らのパーティーに!」

「あの胸、あの足!あのさ・こ・つ!あーーー、た、たまらん!たまらんっ!フォォォォーー!」


 当のセリスの意見は無視され、自分達のパーティーに入ってくれるものとして全員が会話を進めようとしている。


「はぁ、アールボーでも人気があったが王都に来てまでこんな事になるとはな。服装が地味だったから目立っていなかったのがさっきの店で服装を新調した事で元々の素材の良さもあって一気に注目を浴びてしまった訳か」


「あわわわ。い、いえ、私は1人では。すみません。パーティーには入れ、あ、そちら喧嘩しないで、あう、ごめんなさい!ラ、ラオム助けて〜!」


 人混みの真ん中で様々な人に声を掛けられ、慌てているのでまともに返事が出来ていないな。

 さて、そろそろ助けないと騒ぎが大きくなりすぎて不味いな。

 どうやって助かるかなぁ。ちょっとリスクがあるけど、アレをやるか。


 冒険者ギルドや武器屋防具屋があるのは大通り。

 セリスを勧誘せんとする人だかりも大通りだが元々端っこに近いところを歩いていたので中央は空いており、時折馬車が通る。


 俺は常時発動している『身体強化』の下半身に『魔力制御』で魔力を追加して脚力を強化させる。


「お、ちょうどよく馬車が通るな。アレを利用して・・・」


 ヒュッ、タンッ、ヒュッ、スタッ!


 通りがかった馬車がセリスに群がっている人だかりの横を通る時に馬車の荷台に足をかけ、三角飛びの要領でセリスの目の前、交渉の為に人が1人の入るくらいのスペースに着地する。


「「「「 !? 」」」」


 いきなり目の前に降って現れた人物にセリスを含めた全員が驚きに硬直した隙を突いてセリスをお姫様抱っこして、垂直にジャンプする。普通なら当然そんな事で逃げられるわけないのだが、空中に突如として存在する2つの足場に足を掛け、一歩二歩と更に真上に上昇し、人垣を超える高さまで到達する。


「こんな人混みで使いたくはなかったが仕方ないな」


 俺は自分の足元を固定し、固定した箇所を滑らせるかのように移動させ、馬が全力で駆けるのと同じくらいの速さであっという間に人混みが見えなくなるくらいの距離を放し、路地裏に着地する。

 取り囲んでいた人々はあまりにあっという間の出来事だったのて夢でも見ているかのようで何も行動する事が出来ないでいた。

 のちにこの時の一連の出来事は、蒼き女神を取り囲むと風の王が一瞬にして攫って行くという都市伝説になるのだがそれはまた別の話。



「ふ〜、危ないところだったな、セリス。怪我はないか?」


 声をかけながら、お姫様抱っこしていたセリスを降ろす。


「ふわぁ、どうしよう!?私のラオムにして欲しい事リストの1つがまた叶ってしまったよぉ、どうしよう〜」


「ていっ!」


 またセリスが自分の世界に旅立とうとしていたのを頭に手刀を軽く打ち込んで現実に引き戻す。


「あいたっ!・・・痛いよラオム」


 叩かれたところを自分で撫りながら軽くこちらを睨まれる。


「うるさい、ちゃんと話を聞け。この後はミザールの迷宮に行こうと思っていたけど、この時間は王都の中心にあるせいなのか、ものすごく人が多く混雑している。今行けばさっきと同じことになる可能性が高いと思う。セリスもまた囲ませるのは嫌だろう?」


 今はお昼を少し過ぎたくらいだが、朝の混雑を避けたパーティーが迷宮に挑む第2の混雑時間となっている。

 セリスも先ほどの状況を思い出しているようでコクコクと頷いて同意してくれる。


「だから人目を避ける為に夕方から迷宮に行こうと思う。夕方は迷宮から帰ってくる人の方が多いみたいだからな。すれ違った人もみんな疲れていてセリスどころではないだろ。で、それまでの時間潰しは予定を繰り上げて北の方にある奴隷市場へ行ってみようと思っている」


「ん?戦力強化は奴隷を入れるの?他の冒険者じゃなくて?」


 冒険者だけのパーティーも多いが元々他人が信じられない人や魔物使い、迷宮内で所属していたパーティーから何らかの理由で裏切られたり、見捨てられたりする人もたまにいる。

 そういう人は他の冒険者が信じられなくなり奴隷や魔物で構成されたパーティーを組む事が多い。


「セリスへのあの勧誘を見るとパーティー募集をかけたらすぐに集まるとは思うけど、それ目的で集まった奴らに背中を預けられるか?セリスは後衛だし、アールボーで同じのような事の経験があるからわかるだろうけど、本気で迷宮攻略しようとしていた奴がいたか?どいつもセリスにアピールする事が目的で迷宮攻略なんて二の次、大して進まなかったんじゃないか?」


「実はそうなんだよね、みんな張り切ってはいたんだけど、何かあればケンカばっかりして全然前に進まなかったんだよね。だから固定パーティーなんて決めなかったんだよ。私もああいうのは疲れるからもういいよ。・・・あっ、なるほどだから奴隷なのか」


「そういう事だ。別に奴隷でなくても魔物でもいいんだが、やっぱり会話が出来た方がいいだろ?」


「うん、わかった。そういう事なら私もそれでいいよ。モフモフな魔物も捨てがたいけど行くのが迷宮だから会話が出来ないのはねぇ、あっ、でもまだ奴隷は買わないんだよね?もう少し2人きりでいたいなぁー、なんて」


 両手で頬を挟みながらモジモジしているセリスは華麗にスルーして話を進める。


「売っている奴隷次第、だな。今の俺たちになにが不足しているか分からないから選びようがないって言うのが正直なところだ。ピンとくる奴がいると面白いんだけど。まぁ、行ってからだな」


「ラオムゥ~、スルーしないでかまってよぉ~」


 涙ながらに訴えるセリスの頭をポフポフしながら歩き始める。

 セリスが目立たないように出来るだけ人の少ない大通りから外れた道や路地を通って俺たちは奴隷を扱っている区画、奴隷市場へと向かうのだった。


  ちなみにセリスを助け出した方法については、セリスから言及がなかったのでスルーしておくことにした。

可愛い女子を書くのって難しいです。

自分の引き出しの少なさに今更ながらガッカリしている日々です。


何かいいアドバイスをいただけたら嬉しいです。

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