奥様の誕生日 後編
ロルフ様とゆっくり過ごして、ちょっとうたた寝したりもして……気が付けば、夕日が窓から差し込んで頬を撫でる時間となっていました。
「……日が暮れてきたな」
「そうですね……一日部屋に居ましたけど、良かったのでしょうか」
ロルフ様は許可を取ったとの事ですが、アマーリエ様にだけ家事を任せるのはちょっと申し訳なかったりします。幾らメイドさんが居るとはいえ、アマーリエ様は基本的に自分がしたがるので……。
私もお手伝いすべきだったのでは、とちょっぴり罪悪感を感じていたのですが、ロルフ様は「気にする事はないぞ」と何でもなさそうにしています。
……そりゃあロルフ様は家事が全く出来ないので、アマーリエ様にお任せしてるからですけどね? 家事をする者としては一人に任せきりというのは……。
「寧ろ此処に居てくれた方が助かったのだぞ、今日は。……そろそろ良かろう」
「え?」
「さて、行こうか」
ちらりと時計を見たロルフ様。
……そろそろ良かろうって? という疑問が湧いたのと同時、私は立ち上がったロルフ様が膝裏と背中に手を回して軽々と持ち上げられてしまいました。
所謂お姫様抱っこというものです。それはまあ、ちょっぴり恥ずかしいですが良いとして……何故、今のタイミングで?
「えっ、ろ、ロルフ様?」
「……主役は遅れて登場するものらしいぞ?」
「へ?」
「用意はしてある。後は、私とエルだけだ」
「は、話が見えないのですが……?」
「良いから。……行こうか」
行くって何処に? と口に出して問うものの、ロルフ様はちょっと悪戯っぽい笑みで「お楽しみというやつだな」と優しく囁くのです。
戸惑う私なんて気にせず部屋を出て何処かに向かうロルフ様に、私はどうしたものかと唸りながら、運ばれるがまま。
そして、広間の扉をロルフ様が肘で開けて……照明が落とされ薄暗い廊下から、眩い光が視界に飛び込んでくるのです。
「……え?」
目を疑ったのも、仕方ありません。
だって、目の前に広がるのは、明らかに立食スタイルのご馳走と、本来は此処に居る筈のない人達なのです。家族は良いとして、金髪の美女……いえ美男と、緑髪の男性。つまり、ヴェルさんとマルクスさん。
私達の登場に、ヴェルさんは口元を綻ばせ、マルクスさんはヒュウっと囃すように口笛を一つ。
「おやおや、大胆な登場の仕方で」
「まあ良いんじゃないの? サプライズって事で」
「エルちゃんにサプライズだけどな。ほら、何が何だかって顔してる」
……え、え? 何で、うちに?
訳が分からなくてコルネリウス様に視線を投げると、ゆったりとした笑みで迎えてくれます。とても、優しい眼差し。それは、この場に居る全員が私に向けてくれていて。
「そりゃ内密に事を進めてたからね。と、言っても閉じ込めておいたらバレると思ってたんだけど……ロルフ、珍しく誤魔化しきってくれたね」
「抜かりないぞ」
「あ、あの、ロルフ様……?」
私を下ろしたロルフ様の自慢げな表情に困惑するしかありません。……ロルフ様もグルだったのですね……!?
「何にせよ、誕生日おめでとう。馬鹿ロルフをよく好きになってくれた!」
「何故お前に馬鹿呼ばわりされなければならんのだ」
「ロルフが馬鹿だから」
「……あの……」
……もしかして、皆でお祝いしようと、してくれていたのですか?
答えは多分、この光景を作り出した原因であろうロルフ様に聞くのが一番正しいと思って、ロルフ様を見上げます。だって、私はロルフ様にしか言っていません。皆さんで何かするなら、ロルフ様が発起人となる筈です。
困惑に揺らぐ瞳を向けると、ロルフ様は穏やかな笑みを形作り、愛おしむように頭を軽く撫でてきます。
「今日は誕生日だろう。皆に協力して貰って、こうして祝いの場を準備した」
「お前何もしてないだろ」
「お前達が何もするなと言ったのだろう」
「まあロルフ張り切ったのは良いけどこういうの慣れてなくて余計な事しかしなかったからね。それならロルフはエルちゃんを引き留める事に専念して貰った方が良いし」
「まあ、ロルフのお陰で隠密に事を運べたよ。……エルネスタ、誕生日おめでとう。昨日ロルフに教えて貰ったから、急いで用意したんだ」
「エルちゃん、言ってくれたら良かったのよ? あなたはもううちの子なんだから、遠慮しないの。誕生日おめでとう、うちの馬鹿ロルフを好きになってくれて、ありがとう」
「……母上まで……」
口々にお祝いの言葉を下さる皆さんに、今更ながらに実感が湧いてきます。……私は、もう鳥籠に居た頃の私じゃないんだって。私は私として、尊重されて、好きになって貰えているんだって。
こんな誕生日初めてで、どうこの感動を飲み込めば良いのか分からなくて、隣のロルフ様の手を握ると、そっと握り返してくれます。
それから、不安を溶かすように何処までも慈しむような穏やかな声で、私の名前を呼んで。
「……エル、お前は一人ではないし、お前の誕生を祝う人が居る。お前は今まで不幸だったかもしれないが、これからを私達で取り戻していけたら、と思う」
「ロルフ、様」
「改めて、誕生日おめでとう。私達は、お前の生誕を心から祝おう」
私が生まれてくれて良かった、そう、言ってくれた皆さんに、簡単に涙腺が弾けて瞳から勝手に涙が零れてしまいます。
ロルフ様に祝って頂けただけで充分に幸せだったのに、皆、私の事を祝ってくれるのですね。……初めて、こんなに祝って貰って、嬉しくて堪りません。
こんなの初めてです、と止まらない涙をそのままに呟くのですが、ロルフ様は泣き出してしまった私におろおろ。まさか泣くだなんて思ってなかったのでしょう。
……私だって、泣くとか思ってませんでした。でも、仕方ないじゃないですか。皆さんが、祝って下さるなんて思ってなかったんですから。
「あーロルフ泣かしたー」
「……これは私のせいなのか? すまない、泣かないでくれ」
「ちが、……ありがとうございます、ロルフ様。それに、皆さんも」
……本当に、ありがとうございます。私、こんなに幸せな誕生日なんて、初めてです……。
どう感謝して良いのか、どう感謝の気持ちを皆さんに伝えたら良いのか。言葉だけじゃ、とても表しきれません。
ぐず、と鼻を啜りつつ涙を拭う私に、皆さんは暖かい眼差しを変えません。
「友人を祝うのは当然だろう? おめでとう、エルネスタさん」
「……はい」
「じゃ、ぱーっと祝うか!」
「何故お前が仕切る」
「こういうのはノリなんだって! ……良いですよね、アマーリエさん」
「ふふ、そうね。じゃあお酒とかも出しちゃいましょうか。料理も冷めない内に召し上がってね」
テンションの高いマルクスさんの一言に、アマーリエ様もいつものしっとりとした微笑。付け足すように「エルちゃんはお酒はダメよ」とちょっぴりからかうように言われて、私もはにかんで頷きつつロルフ様と一緒に皆さんの元に駆け寄りました。
アマーリエ様が張り切って下さったらしいご馳走を頂き、お酒を飲む皆様をのんびり眺めて幸せに浸るのですが……料理もなくなって来た所で、何やら皆さんがごそごそと布をかけてあった何かを取り出しています。
あれは何なのだろうと思いながらも眺めていたのですが……今、その正体が判明しました。というか、笑顔で皆さんが此方にやってきては私に差し出すので、鈍い私でも何なのか、くらいは察する事が出来ました。
最初に私に差し出したのは、ヴェルさん。手には、重厚な革製の表紙の分厚い本。十字にリボンがかけられていて、蝶々結びに小さな花が添えられてます。
「はい、これは私から」
「……これは……」
「プレゼントなんだけどね、実用的なものが良いかなって……治癒術の本。無難なので悪いけど」
「い、いえ! ありがとうございます!」
まさか祝って下さるだけでなくて贈り物を頂けるなんてちっとも想定してなくて、ぶんぶん首を振って頂けるだけで感激ですという意を表します。
私の為を思って贈って頂ける、これだけで私は充分に幸せです。……本当に、嬉しい。
「アクセサリーとか考えたけど、本命の為に開けておこうかと思って」
「本命……?」
本命って何が、と聞こうとしたのですがロルフ様がヴェルさんをこれでもかと睨んでいるので、ちょっとびっくりしてそれどころではありません。当のヴェルさんは楽しそうに笑って「おお怖い怖い」と茶化してますけど。
「それじゃあ次は俺ね。はい、これ」
何だかロルフ様の様子がおかしいのですが、それを流すように今度はマルクスさんが私に手渡したのが……リボンがかかった瓶で。
「これは……?」
「お酒」
「おい。エルは得意ではないぞ」
「や、エルちゃん弱いって聞いてるんだけどさ、これ甘くて美味しいやつでさー。ちょっとずつなら多分大丈夫かなって」
「ちょっとマルクス」
「大丈夫大丈夫、奥さんだから」
……何だかヴェルさんが何か言いたげで色々と不安になりますが、危ないものではないでしょうし、嬉しいです。甘くて美味しいって聞くと飲みたくなってしまいますし、ちょっとずつなら、大丈夫ですよね?
「あ、ありがとうございます。……美味しいなら楽しみです」
「何を企んでいるのだ、マルクスは」
「いーやー? 美味しいものを分かち合おうと思ってな。それに、ロルフにも悪くない話だと思うんだよ」
「どういう事だ」
「後で分かるさ」
にやにや、と笑うマルクスさんに何だか一抹の不安を覚えたものの、ロルフ様と一緒に飲んだら問題ないですよね、と納得しておきます。……こ、今度は、ふにゃふにゃにならないように気を付けて飲まないと。
飲んでも呑まれるなという前回の教訓を今一度胸に刻む私に、コルネリウス様達が近付いてきます。手にしているのは、ちょっと大きめの袋。こちらもリボンで飾られているので、その、私への贈り物……なのでしょうか。
「次は私達からだよ。私が帽子、父上は靴、母上は服。似合うと思って選んできたんだけど……」
「そうそう、エルちゃんに似合うと思ってね。エルちゃんはあんまりおめかししたがらないでしょう? 勿体ないもの」
「皆さん……」
「ロルフをめろめろにしてしまえば良いと思うよ」
「いつだってエルは可愛いし愛らしいぞ。何もせずとも首ったけだ」
「ろ、ロルフ様……」
それをそこで言いますか、と一気に顔が赤くなる私。聞いていた皆さんは、にやにやと私達を微笑ましそうに見つめてくるのです。
「おおっと、此処でのろけか! 部屋でやれー」
「部屋でもするぞ?」
「……ぅ」
「……ああすまない、部屋だけの約束だったな。エル、後でじっくり褒めるぞ」
「も、もう、ロルフ様! そういう事は今は良いですから!」
いつも甘い言葉を囁いてくれるのは良いですけど、それを皆さんの前で言わないで欲しかったというか……!
案の定皆さんはとてもにやにやして私達を見守っています。……こ、こうなるのが分かっていたので、二人の時しか言わないで欲しかったんですけど……!
ロルフ様は実にしれっとしていますが、口説かれる方は恥ずかしくて仕方ありません。本人としては、本音で口説いてるつもりはないのでしょうが……。
「……いやはやほんといちゃいちゃに磨きがかかってきたね」
「か、からかわないで下さいコルネリウス様……」
ロルフ様は正直な方ですので誉め言葉は全部本音だって分かってるから、余計に恥ずかしい。多分ロルフ様が甘い言葉を囁いて私が羞恥で悶える様は、他人からすればいちゃついているように見えるのでしょう。……実際いちゃいちゃに分類されるとは、思いますけど。
流石に人前でこういう会話をするのにはかなり躊躇いがあるので隣のロルフ様の指をちょっと強く握るのですが……それには反応を返してくれません。いえ、ぎこちなく私を見ています。
先程まで自信満々に私に睦言を囁こうとしていたのに、どうしてか、緊張が混じったような強張りのある表情に。
「さて、私達の贈り物は終わったよ。ほらロルフ」
「わ、分かってる」
「え?」
こほん、と自信を落ち着かせるように咳払いをしたロルフ様は、私の指を優しくほどき、それから向かい合って落ち着かなさそうに視線をさ迷わせています。
「……その。私からもプレゼントがあって、だな。……エルはあまり装飾品は欲しがらないと聞いたから、その……喜んで貰えないかもしれないが」
やや躊躇いがちに呟き、いつの間にか後ろ手で隠し持っていた箱を、私に見せるように差し出して来ます。
装飾品を入れる為の箱は開かれていて、中には丁寧に一つのペンダントが仕舞われています。
清廉な輝きを放つ白銀のチェーンに、飾りとして親指の爪程の大きさの、鮮やかな翠の煌めき。花と蔦をモチーフにしたシンプルで可愛らしい装飾のなされた、翠玉のトップが、チェーンを飾っています。
その翠が馴染み深いと思ってしまったのは、毎日似たような色を鏡で見ているからでしょうか。
「……これを見た時、エルが浮かんだんだ。エルの瞳の色そっくりの、綺麗な翠で。だから、これが良いと思った。似合うと思う。指輪は私の都合で選んだから、一つくらいエルに似合うものを選んであげたかった」
「ろ、るふ様」
「しかしながら私にはこういったものを選ぶ事がなかったしお前の趣味に合わないかもしれない。だから、お前が喜んでくれるか分からなくて不安だったのだが……それでも、贈りたい。受け取って、くれるだろうか?」
自信なさげに窺うロルフ様はきっと、沢山悩んで、これを選んでくれたのでしょう。恐らく、ヴェルさんやマルクスさんと相談して。私の為に、悩んでくれたのです。
それだけでも充分に幸せなのに……こんな、綺麗なペンダントを選んで下さるなんて。
滴りそうな程に瑞々しい翠緑。その翠に、一滴、雫が零れ落ちます。ああ、泣いてしまったらまたロルフ様を心配させてしまうと分かっているのに、嬉しくて、涙腺が指示を聞かないのです。
だから、私はロルフ様に心配をかけないように精一杯笑って、ありのままの気持ちを表す事に決めました。心から嬉しいのだと、笑顔に乗せて。
「……はい」
頷くと更に落ちる涙ですが、今度はロルフ様が拭ってくれて、それから安堵したような微笑みを浮かべます。そっと箱を私の掌に乗せて、優しく頬に掌を添わせます。
きっと、二人きりならこのまま口付けて下さったのでしょう。それは寝室までお預けで、今は嬉し涙を瞳から流す私をただ優しく見詰めてきました。
「まるでプロポーズみたいだな」
そんな私達に、マルクスさんは小さな呟き。
……ロルフ様の口から婚姻を申し込まれた事はないですが、それでも、私は今幸せです。たとえ始まりが擦れ違っていても、今の私達は想いを重ねて夫婦で在るのですから。
「こらマルクス、茶化さないの」
「あー、この際もう一回結婚式挙げても良いんじゃないの? あの頃のエルちゃん見てられなかったし」
箱を胸に抱いて微笑む私に、コルネリウス様は結婚式の事を思い出したのか苦笑い。
「まああの時のロルフは無愛想で仕方なくしてたものね」
「ほんと見てられなかったよ。エルちゃんロルフに嫁いで大丈夫なのか心配だったし」
「本当にな。あの頃のエルネスタには申し訳なさがあったよ」
ぐさっ。
空耳だとは思いますが、何か刃物が突き刺さったような鈍い音がしました。但し、それは私からではなくロルフ様から。
恐る恐る見上げると、ロルフ様がとても苦渋に満ちた顔というか、ありったけの悔恨を顔面にぶつけられたような厳めしく渋いお顔です。次いでぎりり、と歯を食い縛るような音。実際、頬の筋肉が引き攣って強張っていました。
あの、と声をかけると小さく「あの頃の私をどうしたらぶん殴れるだろうか」という呟きが届くので、ロルフ様もどうやら当時を思い出したようです。
「話し掛けても無視されて悄気るエルネスタには此方が涙を飲んだよ」
「そうねえ、今だから笑い話で済んでるけど」
「いやはや、私も二人の事が旅先から心配だったんだよ。だってこの朴念仁で研究馬鹿なロルフだよ、さぞやエルちゃんが無視されるんだろうなあと……」
「さ、三人とも、ロルフ様沈んでますから!」
三人が口々に当時の心境を語るものですからロルフ様が懺悔しそうな勢いで凹んでいるので、私は慌てて手を振って三人のお話にストップをかけます。
「その、私は今とっても幸せですから! 結婚出来て良かったと思ってます!」
「エル……私をぶってくれても良いのだぞ?」
「私にそんな趣味はありません!」
「しかし、イザーク達には」
「あれは例外ですから! ロルフ様には、その、叩くよりぎゅっとしたいです」
あの時のあれは正当な仕返しでやっただけで、私自身は乱暴なんて以ての他です。戯れでぽこぽこする事はあっても、本気で人を叩いたりする筈がありません。そんなの痛いだけだって、私はよく分かってますから。
そんな事をするくらいだったら、私はロルフ様にくっついてその頃の寂しさの分を取り戻します。その方が誰も傷つかないし幸せですもん。
だからそんな事はしません、と力説すると、何故かロルフ様が瞳をちょっぴり潤ませて、感極まったのか私を腕の中に収めて来ます。
むぎゅ、と包まれて幸せですが、そのまま口付けを施そうとしてきたので人前では嫌だと拒もうとして頭突きしてしまいました。……違います、これは不可抗力ですロルフ様。
地味に痛かったらしく少しばかり眉を寄せたロルフ様にごめんなさいと謝ると、ロルフ様は気にした様子はなくてそのまま抱き締めるだけに留めて下さいました。
私は、そのままロルフ様の腕の中で心地好さを味わって……。
「ほらロルフ、いちゃいちゃするのは良いけどペンダント着けてあげなよ」
そこで、一瞬人前だという事を忘れていた事に気付かされ、急に恥ずかしくなって腕の中から訴えると、ロルフ様は思ったよりもあっさりと離してくれます。
それから、ロルフ様は私が大切に抱き締めていたペンダントの箱に指を沿わせ、ペンダントを取り出します。
揺れる翠の美しさは、思わず見とれてしまう程。
「エル」
甘い囁きが耳に届いた頃には、ロルフ様の指先が首筋に伸びていました。
丁寧な仕草で私の髪を軽く払い、静かな動作で両掌で首を左右から包むように回す。ひやりとした感触が首筋に触れて思わず体を揺らしてしまうのですが、しゃらりという貸すかな鎖の音を聞いて、動きは止まります。
鎖骨の間くらいの場所に、少しだけ塊の感触。服越しですので正確には分かりませんが、きっと此処にペンダントトップが来ているのでしょう。
「……ん、やっぱり似合うな。見立て通りだ」
満足げに微笑むロルフ様に、私はいつ見ても慣れない笑顔に暴れだす鼓動を抑えるように胸を押さえ、同じように飛びきりの笑顔を返します。
「……ありがとうございます。大切に、します」
今日は今までで一番幸せな誕生日なのだと改めて実感しながら、私はもう一度ロルフ様の腕の中に収まるべく身を寄せました。




