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愛娘の教育について

「やだ、しないもん! おとーさまのばか!」


 ああ、ロルフ様にリーゼロッテの言葉がクリーンヒットしてしまいました。


 一生懸命にロルフ様はロルフ様なりにリーゼロッテの事を気遣ってきましたし、将来の事を思ってちょっとずつお勉強をさせていたのですが……まだ遊びたい盛りのリーゼロッテには、お勉強が嫌だったらしく。


 そして冒頭の言葉に繋がります。


 言葉を受けて、ロルフ様は分かりやすくショックを受けております。

 それはもう、泣きそうな顔で。……ことリーゼロッテに関しては、本当に涙腺が弱いというかリーゼロッテにとても弱いんですよね、ロルフ様。


 対するリーゼロッテは頬を膨らませてぷいっとそっぽ向いております。

 私としては、リーゼロッテの気持ちはよく分かります。まだ実家に居た小さい頃、計算の勉強をさせられた時は何でこんな事させられるんだろう、と思っていましたから。


 ロルフ様は自ら興味で学んだから楽しかったのでしょうが、リーゼロッテはまだその興味すら示せていないのです。

 無理強いするつもりはないようですし簡単なものから始めているみたいなのですが、リーゼロッテはお気に召さなかったようで。


「リーゼロッテ、お父様に馬鹿って言ったら駄目でしょう?」

「だって」

「リーゼロッテはお勉強したくないのは分かるけど、暴言は吐いちゃ駄目よ?」


 子供の気持ちも分かるので、お勉強をしたくないという気持ちは優先しますが、言葉の使い方に関しては注意をしなくてはなりません。


 ぷりぷり怒っている、というより不機嫌そうなリーゼロッテを抱き寄せて一緒にソファに座ると、私には素直に甘えてくるリーゼロッテ。

 ロルフ様はそわそわあわあわしていますが、落ち着いて。何もリーゼロッテはロルフ様の事を嫌いになった訳じゃないのですから。


 私と同じ色の瞳を覗き込むと、リーゼロッテは少しだけたじろいだように瞳を揺らします。

 ほら、本気で思ってる訳じゃないって直ぐに分かります。ちょっと反抗したかっただけですもんね。


「リーゼロッテ、素直にならなきゃ駄目よ? 本当はお父様とも遊びたいのにお勉強ばかりちくちく言ってくるからちょっと嫌になっただけでしょう?」


 ロルフ様、溺愛してるけど教育パパになりそうな感じは元からありましたからね。

 勿論強制させるつもりはなさそうですけど、やっぱりロルフ様の血を濃く引いて魔力に富んだ体に生まれたリーゼロッテに、魔術を覚えて欲しいのでしょう。


 ロルフ様は、自分基準で考える癖が中々抜けませんねえ。大分緩和されましたが、魔術に至ってはやっぱり自分に基準が近付いちゃうから。

 教師には向いていない、というコルネリウス様の言葉を思い出して苦笑するしかありません。


 私の言葉は正しかったのか、むすっとしていたのが困惑の表情に。


「……おかーさまは、べんきょうしろっていわないよね」

「ゆっくりで良いですもの。本音を言えばリーゼロッテが魔術を使うところは見てみたいのだけど、リーゼロッテがしたくないなら無理強いするつもりもないわ」


 私としては、したくなったらすれば良いと思います。

 家的な立場だと子供の内の誰かには家を継いで貰わなくてはなりませんので、誰かにはしっかりと学んで欲しいのですが……出来るだけ、本人の意思で選ばせたくはあります。


 でも、ロルフ様の気持ちも分からなくはないのです。

 魔術の楽しさを知って欲しい、というのと……リーゼロッテの掴める未来の幅を増やす為にも。


「リーゼロッテ。お勉強がしたくないなら強制はしないわ。でも、ちょっとだけでもお父様の気持ちを考えてあげてね」

「おとーさまの……?」

「お父様は、リーゼロッテが大きくなった時に何がしたいか、何が出来るか、という選べる幅を増やそうとしてるの。リーゼロッテにはちょっとまだ難しいかもしれないけど……」


 リーゼロッテが家を出て誰かに嫁ぎたいとか働きたいというなら、それを止めるつもりはないです。

 その選択肢を増やしてあげたいだけなんですよね、ロルフ様は。


 魔術を扱えたなら就職の幅はぐんと広がるし引く手あまたなのです。

 好きな事を見つけて好きにさせてあげる為に、ロルフ様は今からお勉強は、ちょっとずつさせてあげようとしているのです。


「リーゼロッテが大きくなった時に好きな事を出来るように、お父様は今からちょっとずつ教えていこうとしてるの。お勉強が嫌なのは分かるし無理にさせるつもりはないけど、全部拒まないであげてね」

「……おとーさま、ほんと?」

「……リーゼロッテが嫌なら、無理にとは言わないが」


 ロルフ様は少し困ったように眉を下げましたが、否定はしません。

 けどそれで悟ったのか、賢いリーゼロッテは「むー」と声を上げつつも表情はいつも通りに。


「……おとーさま、さっきはごめんなさい」

「リーゼロッテ……!」

「でもおべんきょうはコルおじさまにおしえてもらうから、おとーさまのはいい」


 あっロルフ様喜んだのにまた泣きそうに。

 そんなロルフ様に、リーゼロッテはにっこりと微笑んで。


「だから、おとーさまはわたしともっとあそんでほしいの。おとーさま、しごとあるから、あそんでくれないし、いえにいてもおかーさまといちゃいちゃしてるし」


 これには私も苦笑いしか返せません。

 何処でリーゼロッテはそんな言葉を覚えてきたのでしょうか。コルネリウス様か、マルクス様か。別に良いのですけど、もう少し言葉を選んで欲しいというか。


 けど、これでリーゼロッテの気持ちもはっきりしましたね。

 本当に勉強が嫌だった訳ではなくて、折角夜やお休みの日にロルフ様と接する機会があるのに、お勉強で時間を奪われるのが寂しかったのでしょう。


 ロルフ様も意図は理解したらしくて、ちょっぴり複雑そうな顔をしたものの次の瞬間には穏やかな微笑みを浮かべてリーゼロッテを挟むように腰掛けます。

 そうして、小さな体を持ち上げて、膝の上に。


「すまないな、寂しい思いをさせただろう。……そうだな、沢山遊ぼうか。遊んで学べる事も数多くあるのだ」

「……またおべんきょう?」

「おにごっこやかくれんぼもおべんきょうだぞ」

「ならする!」


 わぁい、と素直に喜んでいるリーゼロッテに私もロルフ様も微笑んで、二人で可愛い子供を抱き締めました。

 旦那様は魔術馬鹿をお読み頂きありがとうございます。

 旦那様は魔術馬鹿の発売日が決まりましたので、ご報告させて頂きます。

 発売日は来年1/6になります!

 イラストレーターはまち様にご担当頂きました。素敵なイラストに仕上がってますよ!

 詳しくは活動報告に書いてあります。カバーイラストも公開してますのでご覧になって頂ければ幸いですー!

 それではこれからも旦那様は魔術馬鹿をよろしくお願いします!

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