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愛娘と伯父

前話から数年後のお話です。

「コルおじさまー」


 きゃっきゃっ、と喜色も露に、義兄であるコルネリウス様に抱き付くのは愛娘。

 娘であるリーゼロッテは、コルネリウス様の事がいたく気に入ったというか大好きみたいで、コルネリウス様がアトリエから出てくる度に構って貰いに行くのです。


 因みに、ロルフ様のお顔がちょっぴり複雑そうです。すっごくコルネリウス様にリーゼロッテはなついていますからね。


 どうやら庭で栽培しているハーブを収穫しにきたらしく、ついでに庭で遊んでいたリーゼロッテの様子も見に来てくれたようで。


 満面の笑顔でくっつくリーゼロッテに、コルネリウス様は穏やかな笑みを以てして受け止めます。


「ロッテ、危ないから走って突撃したら駄目だよ?」

「コルおじさまがきたんだもん」

「そうかいそうかい、それは嬉しいけど、転んだら痛いだろう?」


 落ち着きを持ってね、と宥めながらも高い高いをしてあげるコルネリウス様。リーゼロッテも嬉しそうです。


 ……ロルフ様、それくらいで拗ねないの。

 ロルフ様が今ベンチで私を膝に乗せてるから動けないんでしょうに。私を下ろせばリーゼロッテに構えますから。私から離れたくないのも分かりますけどね?


 コルネリウス様もロルフ様がちょっぴりやきもちをやいているのに気付いたらしくて「ほらロッテ、お父さんが拗ねてるよ?」と囁いています。

 ……お顔はとても楽しそうなのですけどね。


「おとうさま、すねてるの?」

「そうそう、リーゼロッテが好きすぎて私と仲良くするのが複雑みたいなんだ」

「おとうさま、だいじょーぶ、うわきはしてないよ!」

「兄上、変な言葉教えてませんよね!?」


 何処で覚えたのやら、ちょっと子供らしからぬ発言にロルフ様が目を剥いています。ちょっと使い方を間違えている気がしますけどね。


 私としては義兄と仲良くしてくれるのは嬉しいですし、そう何か口出しするものでもないと思っているので気にしないのですけど。

 まあ、変な単語をあまりにも教えるようでしたら、ゆっくりと腰を据えてお話し合いをするべきだとは思っております。


「これは私じゃないからね。言っとくけどマルクスだよ。『浮気の心配もない良い夫婦だな』って呟いたらリーゼロッテが興味示しちゃったらしくて」

「マルクス覚えてろ……と言いたいが、褒め言葉は受け取っておこう。浮気なんてする訳あるまい」


 疑うか? と膝の上の私を抱き締めて膨らんできた腹部を撫でながら囁くロルフ様。

 ……ロルフ様が浮気なんてまず有り得ないと思っているので、微笑みながら首を横に振るのですけど。


 というか、万が一、というか億が一にもないでしょうけど、浮気をしたとして。


 娘と息子が居るというのに他の方に情を移す、なんて事をした暁には、多分私より家族がキレます。子持ちで浮気とは何事だ、と。

 まあ前提からして有り得ないでしょうけどね。ロルフ様は、私の事をとても愛してくださっていますから。


 じゃなきゃ、こんなにも大切にしてくれませんもの。


「相変わらず熱いねえ」

「あつあつー。おとーさまとおかーさまはおしどりふーふ、っていうの、マルクスおにーちゃんからきいたの!」

「……そうだな」


 何だかんだマルクスさんもよく訪ねてきてリーゼロッテと遊んでくれるので、リーゼロッテはマルクスさんもかなり好きみたいです。


 今回はロルフ様もマルクスさんのお言葉に怒るつもりはないらしく、寧ろ嬉しそうに「分かっているではないか」と微笑んでいました。

 ……そういうところはロルフ様って単純ですよね。


 ついくすっと笑みが漏れてしまって、ロルフ様が不思議そうな顔を浮かべるのですが……内緒にしておきましょう。また拗ねちゃう。


 代わりにロルフ様を宥めるように軽く頬に口付けると、ふやけたようにまろやかな笑みが浮かび、そのままロルフ様もやり返してきます。

 人前では唇にはしないで下さいね、と厳命しているので頬に留めてくれたロルフ様。実にご満悦そうです。


「あーあー、お熱いねえ。見てるこっちが火照ってしまいそうだ」

「兄上も相手を見付けたら良いでしょう、そうしたら慣れますよ」

「そう簡単に出来る訳ないだろう、全く」


 無茶振りしないでくれ、と苦笑いのコルネリウス様。

 ……それはその通りなのですけど、でも、コルネリウス様にも良縁があればな、というのは私も思っております。


 私達の事をずっと見守ってきてくれた、コルネリウス様。

 今度は、コルネリウス様が幸せになるべきなのだと思うのですが……。


 恋の気配なんて欠片も見せないコルネリウス様は、ただ私達に慈しむような微笑みを向けるだけ。

 ロルフ様がクラウスナーを継ぐ事になった以上、結婚は本人の自由ではありますし、本人が望まないなら、私達からどうこう言うのは良くないとは分かっているのですが……。


 口を噤んだ私。

 リーゼロッテは、私の様子を見て、それからコルネリウス様に抱っこされていた状態から、顔をコルネリウス様に近付けて。


 それは、子供の戯れなのでしょう。

 寝る前の挨拶として私達にもする事。けれど、決して私達以外にはしなかった事でもあります。


 頬に唇を寄せたリーゼロッテに、コルネリウス様まで度肝を抜かれたようで固まっています。ロルフ様は、かなり衝撃を受けたようで目を剥いて硬直していました。


「もしコルおじさまがおよめさんをもらえなかったら、わたしがおよめさんになってあげるね」


 純粋な笑顔での言葉に絶句したのはロルフ様の方です。

 大きくなったら結婚するの、という父親期待の言葉をコルネリウス様に取られてしまったロルフ様。物凄いショックを受けております。心なしか瞳が潤んでいる気が。


 わなわな、と唇や体を震わせるロルフ様に流石のコルネリウス様も気の毒に思ったらしく、困ったような曖昧な笑みを浮かべてリーゼロッテの顔を除き込みます。


「おや、ロルフのおよめさんにならなくてもいいのかい?」

「おとーさまにはおかーさまがいるもん」


 どうやら気遣ってくれたらしいリーゼロッテ。子供ながらに賢い子で親としては嬉しいのですが、ロルフ様はちょっと期待していたらしくて結構に愕然としています。

 でも理由が理由なのでショックから立ち直ったロルフ様。ちょっと強張っていますが優しげに笑みを浮かべて。


「リーゼロッテ、兄上とは結婚できないぞ? 血縁関係にあるからな、駄目だぞ?」

「えー。じゃあマルクスおにーちゃんにする」

「もっと駄目だぞ!?」


 マルクスさんは嫌なのか慌て出すロルフ様。


 その慌てように、私とコルネリウス様は『将来お嫁に行く時はどうなるか想像出来るなあ』と顔を見合わせてひっそりと苦笑しました。

やっぱり親馬鹿なロルフです。

そのうち何か記念で企画でもやれたらなあとか思いつつ何しようか迷っています。

人気投票とかリクエスト企画とか何か出来たらな、と思います。(人気投票とか票が集まるのか心配)


あと土偶がヒロインな乙女ゲームに転生した女の子の短編投下しました。もし良かったら読んでみてください、全力でネタに走りました(ささやかに宣伝)

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