アイの架け橋。
私は恋のキューピットだ。
愛と愛を結ぶ、架け橋。
私には恋人がいた。
高校にはいって初めて出来た私のとても大切な人。
告白はあっちから。その時は少し驚いた。同じクラスだったけどそんなに会話をした事はなかったから。
この想い、受けるべきか数日考えた。私は彼をそんな風には思っていなかったし、かといって嫌いでもなく、はっきりいえば満更でもなかったのだ。
正直彼の事はよく知らない。でも、付き合ってみるの悪くないかも、そう考えた。そこから好きになっていくかもしれない。恋愛に興味があったし、彼氏という存在が欲しかったのだ。
私の予想は運よくも、的中した。
最初は拙く、二人で帰りにどこか寄り道する程度。
この漫画面白いんだ、とか。この曲いいから聞いてみなよ、とか。
別に他の友達と同じような会話、行動。
でも、彼が隣にいるとまた違った。なぜか心が揺れた。
ある日の帰り道、夕暮れの公園で私達は初めてキスを交わした。
始めは触れる程度、段々回数が増え、長さも増した。
心臓はとんでもないほど鼓動を繰り返し。
この日から私は彼をもっと好きになった。
でもこの幼い恋は長くは続かなかった。
何ヶ月後だろう、最初のように頻繁に連絡を取らなくなり、私の方からしか接点を持たなくなっていた。たまに会っても、決まったように場所は彼の家。すぐに体を重ねると、どこにもいかずに私は彼の自宅を出て帰宅した。
その頃は冬の訪れを待つ季節。辺りは薄暗かった。
そんな中星だけはいつも綺麗で、それを見てると、なぜか涙が流れていた。
ある日、友達が教えてくれたのだ。
私の彼が別の女性といたって。
聞きたくなかった。うすうすそんな感じはしてたんだ。でもどうしても認めたくなかった。
だから私は蓋をして視界を閉じていた。
なのに。
このままじゃいけない。そう言い聞かせた。
現状を変えなければ、私はただただ惨めになる。
一晩考えて、考え抜いて、私は答えを出した。
相手の女を調べた。別の学校の生徒、名前も知った。とても可愛い名だ。
ネットが簡単に詳細を教えてくれる。
顔も分かった。
彼、言ってたな。髪が長い子が好きだって。
私もそう聞いてから伸ばし始めたけど、元々短かったから、まだ肩くらい。
でも、その子は腰まで綺麗に落ちていた。
それだけで締め付けれる、心臓が潰れるかと思うほど。
彼女の通学路を特定し、人気のない場所で待ち伏せた。
通りかかった彼女に声をかける。
彼の名前を告げると、ふと笑った。
どうやら、知ってたみたい。彼に私という彼女がいるって。その上でちょっかい出してたんだね。
ちゃんと話をしようと、連れ出す。
もう用意は出来てる、彼も待ってるからといってあの場所に誘う。
そこは町外れの工場跡。
彼女はここに来る間、彼はもう貴方を好きじゃないわよ、私と付き合ってるのよ、もう諦めて関わらないで、そう何度も似たような事を繰り返し言っていた。
私は無言で俯いていただけだったけど。
こうして、人気のないこの場所についた途端、私は行動を起こした。
彼はどこ、まだ来てないのと、キョロキョロと首を左右に振る彼女。立てかけておいたスコップを手に取る。私はその後頭部目掛けて、振り上げた両手を力いっぱい叩き付けた。
バランスを崩した人形のように、面白いように簡単に彼女は斜めに倒れた。
地ベタに寝そべる彼女に、私はまた何度も何度も両腕を振り下ろす。
痙攣こそしていた彼女が、もうピクリともしなくなった。
肩で息をしながら、呼吸を整える、でも簡単には戻らない。もう自分がどうにかなりそうだった。
でも、まだ終わりじゃない。やることは残っている。
数日かけて掘った穴に、彼女を引きずりながら落とした。
彼女の制服から携帯を取り出すと、それを使って文字を打ち込む。
当たり前のように、彼との会話記録があった。その内容を、見ても今はもう動揺はしなかった。
ここで私なりのチャンスを与えたつもり。
この携帯で彼を呼び出した。
貴方には彼女がいるよね、もし私を本当に好きで私を選ぶというなら、○○に来て。
そう伝えた。
微かな望みを託したのだ。
脳には、彼との思い出が蘇り、グルグル回る。
よく彼は冗談をいう、私もよく笑った。
私はよく泣いた。彼はいつも慰めてくれた。
人を好きになるってこういうことなんだって、彼が教えてくれた。
それなのに。
それなのに、彼はこの場に現れた。
隠れていた私は、そっと背後から近づく。
彼はずっとあの子の名を呼んでいた。
いい加減、耳障りになった私は、鞄から取り出した包丁を手に。
彼の首に横から先端を突き刺した。
驚く間はない、振り向く余裕もない、後はもう私は目につく場所、どこだろうが構わず滅多刺しにした。彼は気づいただろうか、最後に目が合ったような気もした。
それがまだ生きていた時か、もう死んだ後なのかは知るよしもない。
最後の言葉を交わすことなく、私はまた同じように死体を引き摺り穴に放った。
重なる二人。まるで抱き合ってるかのよう。
長くは見たくない。早く土をかけよう。
後は、二人の携帯でそれっぽい会話を交わして、それを持って川にでもいこう。
これで足取りや既読を調べられても大丈夫。
流れの速い場所に電源を切って投げ捨てれば良い。
勿論、私の携帯は自宅に置いてきたし。
穴に土を戻しつつ、二人に声をかける。
「良かったね、これで二人ずっと一緒だよ」
そう、私は恋のキューピット。