冬馬の悩み
「おー!なかなか大きい街だな」
森を出発してから2日ほどたち、俺らは デマイド に着いた。
デマイドは、結構大きい街なためか街の周りに大きな外壁が作られている。
そのため、入り口は東、西、南、北、の4つしかない。俺らは今西にある門の前に立っている。
「君達、身分証は持っているのかい?」
と、門の前にいた兵士に声をかけられた
「いいえ、持ってないです。俺たち田舎の方の村から出て来たばっかりなので」
「そうか長旅ご苦労様。
疲れている所すまないが、こっちに来てもらってもよろしいかね?」
そう言って兵士は、門の左側にある小さな小屋に俺たちを案内した。
「今から君達の身分証を作るんだが、手数料として1人銀貨1枚が必要なんだけど持っているかい?」
「はい。あります」
俺は袋から銀貨2枚を取り出して兵士に渡した。
「それじゃあ、この書類に君達の名前と年をかいてくれ」
俺とフューリは書類に名前と年をかいた。
「それじゃあ今から君達の身分証を作るから少しだけ待っててくれ」
兵士はそう言うと奥の部屋へと、入っていった。
「なぁフューリ、この街には学校や冒険者ギルドはあるのか?」
「え?えーと確か学校も冒険者ギルドもあるけど、なぜ学校なの?」
「いや、俺はこの世界の基本的な事は知っているけど詳しい事は何も知らないし、フューリも人族の大陸の詳しい事は知らないんだろ? だったら2人でこの街の学校に入って勉強するのが一番手っ取り早いんじゃないかと、思っただけだ」
「2人で一緒に…それはいい考えね。でも学校に、入るなら住む所やお金が必要よ、それはどうするの?」
「それなら冒険者にでもなって、魔物の素材を売ったりすればいい。幸いフューリと戦った時に倒した魔物の素材が腐るほどあるからな」
「そうだったわね。あの魔物達程の素材が約1万ほどあるのだから困る事は、確かにないわ。」
「待たせたね。出来たよこれが冬馬君のでこっちはフューリさんのだ。
ちなみに、この大陸内の街ならどこでもこれを見せれば通してくれるはずだよ。
失くした場合は、再発行のため1人銀貨2枚が必要となる。
説明はこのくらいかな、それじゃあ デマイドに入っていいよ。あと君達、この街には貴族の方々もいるからその方達には気をつけてね」
「分かりました。ありがとうございます」
俺は兵士にお礼を言って、小屋を出た。
外にいた、他の兵士に身分証をみせて俺たちは デマイド の中に入った。
デマイドの中では多くの人々が賑わっていた。近くには美味しそうな食べ物を売っている店があったり、宿があったりといろいろな店が並んでいる。
俺たちはまず、自分達が住む所を探す事にした。が、
「ねぇ、冬馬あそこのお店に入らない?」
フューリが指を指しているのは、飲食店だ。
「うーん、そうだな。俺も少し腹が減ってきたし店員にもオススメの宿なんかを聞いてみるか」
「なら決まりね」
どうやらフューリもお腹が減っていたみたいですぐに店の中に入っていってしまった。
俺もフューリの後を追って店に入るととても美味しそうな匂いが漂ってきた。
フューリを探すと、右にある窓の前の席に座っていた。俺もフューリの前の席に座ると背後から視線を感じたが気にすることなく店員に注文をした。
15分ほどして、注文した品が運ばれてきたフューリも俺も腹ペコだったのですぐに食べ終わった。
フューリが最後にデザートを食べて席を立った。金を置いて近くの店員にいい宿屋はないか?と聞くと。
「オススメの宿屋ならありますよ。紅の宿 という所です。金額は少しだけ高いんですが、朝と夜の食事付きで、お風呂がありますよ。
彼女さんとならなおさら、オススメです」
ん?…彼女?フューリは奴隷だぞ?どうゆう事だ?
俺は困惑しながも店員に礼を言って外に出た
外に出て紅の宿を見つけるまで俺はずっと考えていた。
「………ま………冬馬…冬馬!!」
「ん?な、なんだ?」
「なにぼーっと、してるの?着いたわよ」
いつの間にか、紅の宿に着いていたらしい。
宿の中に入ると、受付にいた俺と同い年位の女がこちらに寄ってきた。
「いらっしゃいませ。ようこそ 紅の宿 へ
私は受付をしている、テーラといいます。
本日はお泊まりですか?それとも食事を食べに来られたのですか?」
「今日はこの宿に泊まりに来た。」
「お泊まりですね。お二人は同室で構いませんか?また、期間はどのくらいにしますか?」
「あぁ同室でいい、期間はとりあえず、1ヶ月で頼む」
「承知しました。お一人様1ヶ月で金貨5枚です」
安いな。そう思いながらテーラに金貨10枚を渡した。
「お客様のお部屋は2階の204号室です。
なにかお困りな事がありましたら、いつでもお呼びつけください」
「ありがとう。助かるよ」
俺はそう言って、フューリと部屋に向かった
部屋はとても綺麗で、中々の広さだった。
俺は部屋に入ると、今まで気になっていた事をフューリに聞いた。
「なぁ、フューリ俺はこの街に来る前悩んでいたことが、1つあった。それはフューリがこの街に来た時、奴隷だからと言われ軽蔑されるんじゃないかということだ。姿は人間にしか見えないから魔族という事で恐れられることはない。しかし奴隷はお前に聞いた限りだと酷い扱いをされているとしか思えない。
だが、フューリと俺が主従関係にあるような目で見られた事は今日1度もなかった。逆に俺が奴隷のフューリに優しくしていても変な目で見られる事さえなかった。
ましてや、あの飲食店では彼女だと思われていた。これじゃあ完全にお前は周りから奴隷として見られていない。これはどういう事なんだ?」
「っ……!!
…………やっぱりバレてしまったのね。そうよ…私は冬馬の奴隷にはなってないわ。」
「それは、どういうことなんだ?」
「1年前に冬馬と交わしたのは、主従関係になるという契約ではなかっの。私と冬馬が交わしたのは……私が奴隷になるという契約ではなく……私が人間になるという契約だったの。」
「人間になるだって?つまりフューリは俺の奴隷じゃない、しかも魔族でもなくなっていたそういう事だな?」
「ごめんなさい。私どうしても元の家には帰りたくなくて…」
「いや。別にいいよ
てか、それならそうと言ってくれれば良かったのに。」
「え??」
「いや、だっていろいろと教えて貰ったし、てゆうか、俺別にフューリが奴隷にならなくたって普通に助けてたよ?むしろ奴隷じゃないと分かってスッキリしたよ」
「え?じ…じゃあこのまま、私は冬馬の側にいていいの?」
「そんな当たり前な事きくなよ 笑」
「ありがとう……」
「おいおい。泣くなよ…」
そう言って俺は、フューリの涙をぬぐってやった。
そんなこんなで、俺の悩みは晴れ風呂に入って飯を食べて、すぐにベッドに入った。
久しぶりのベッドだったらかすぐに寝てしまった。