メール
暗い部屋の中に、一台のパソコンと、黒い髪を伸ばしっぱなしにして、尚且つ、アフロヘアーのようにならないように整えてある、これまた不思議な髪型をした少女がいた。彼女の名前は天野皐月。年齢は15。高校に入学せず、PC越しにできるバイトをしながら、外にも出ずに毎日を過ごしている。
今日も、毎日のように部屋でパソコンを弄っていると、メールの着信を知らせる表示が画面右下に表示された。
(どこからだろう?)
カーソルを移動させ、メールを確認する。
『剣と魔法のファンタジーな異世界に興味はありませんか?』
件名の所にはそう書かれてあった。
暇なので、全文表示と書かれてある部分をクリックする。
『私達異世界旅行センターは、抽選により、あなたを異世界に招待することに決まりました。もし、興味がありましたら、次のページへ進んでください』
誰かのいたずらか、新手の詐欺か。
(仮に嘘でないなら、魅力的かな。ここは騙されたと思って遊びに付き合ってやろう)
私は、この行動に、一生後悔するだろう。だが、ある意味正解だったかもしれない。
私は、次のページへ進んだ。
すると、新しいウィンドウが表示された。
『ダイスをふって、ボーナスポイントをゲットしましょう!』
その文字列から、なるほど、ゲームの宣伝か。と、少し期待を裏切られた気分になった。
私はウィンドウに表示されているサイコロの絵をクリック。サイコロが動き、66という数字が出た。
もう一度クリック。今度は63。もう一度。つぎは23が出た。もう一度。もう一度。もう一度。
どうやら、66より上の数字は無いらしい。そう思いながらクリックする。999。
(お、これは...。よし、決定だな)
ウィンドウ右下の確定ボタンをクリックすると、画面がブラックアウトした。
(は?え、ちょっと待って、え、なになになに?)
唯一の光源だったパソコンの光が消え、部屋が真っ暗になる。
動揺する私。
そして、画面に表示される注意事項。
『これ以上進むと、もとの世界に帰還出来なくなる可能性があります。それでも続けますか?』
絶句。これ以上にない、焦り。そして、ときめき。
「いいねぇ、そこまで私を本気にさせるんだ。だましたら承知しないよ?」
そのセリフを肯定ととったのか。パソコンの画面には、『健闘を祈ります』と書かれていた。
次の瞬間。私は気を失った。