イケメンを永久追放せよ
とある国にイケメンが嫌いな国王がいました。彼は身も心もブサイクな王様で、身勝手な法案を成立させたりして国民の反感を買っています。
この日もそうでした。国王は秘書と話していました。秘書は国中で一番の美少女であり、彼女とは肉体関係でもあります。
「イケメンが憎い。心の底から憎い」
不細工な王様は言いました。国民を侮辱する身勝手な発言です。
「何故ですか?」
美少女の秘書は指で眼鏡を持ち上げながら問いました。
「ワシより容姿が整っている顔は許せないからじゃ。ただし、女は別物じゃが」
そうなのです。王様は女の子が大好物で、他にも肉体関係になっている女の子は大勢いるのです。
「そうですか」
美少女の執事は、あまり関心が無いようです。
「お前はイケメンは好きか?」
王様は迫真の表情で問いました。
「いいえ、私もイケメンが嫌いです」
これは嘘でした。美少女はイケメンが大好きで、イケメンには目がありません。しかし、国王の機嫌を損なえば粛清されるかもしれないので、嘘を言うしかありませんでした。
「そうか。そうか。それで、ブサイクは好きか?」
「ブサイクは大好きです」
これも嘘でした。美少女は金払いの良い王様と仕方なく寝ているだけです。
「やはりお前は最高の執事じゃ。お前のために特別な法を作ってやろう」
「特別な法ですか?」
「左様。イケメンを永久追放する法じゃ」
「…………」
美少女は言葉を失いました。目の保養がなくなるからです。それでも、王様には逆らえないので作り笑いをしてごまかしています。
「お前の笑顔を見れて嬉しいよ。さっそく議会に提出しよう」
王様は議会に法案を提出しました。王様はイケメンが嫌いなので、議員も全員ブサイクです。議員もイケメンを嫌っている人が多く、法案はすぐに可決されました。これにより、国に住むイケメンは全員国外追放となるのです。
「イケメンがいるぞー!!」
さっそくブサイクな住民は告げ口しました。イケメンに指を差すと、警察が飛んできて、イケメンを羽交い絞めにしたのです。イケメンは暴れますが、抵抗もむなしく国外追放となりました。
「イケメン狩りだー!!」
ブサイクは率先してイケメンを狩猟しました。少しでも顔のパーツが整っている者を国王の元に連れていき、イケメンと認定された者は国外追放となり、イケメンを連れてきた者には貴重な宝石が授与されました。
こうしていくうちに、イケメンは次々と姿を消し、国にはブサイクな男しかいなくなりました。そんな国の現状を見て、国王は玉座に座ってゲラゲラと笑っています。
「最近は全然イケメンを見ておらんの」
「そうですね」
なんと、国民の半分はイケメンでした。よって、国民の半分がいなくなったのです。
「愉快じゃ愉快。これからはブサイクが天下を取る時代じゃ」
自信満々の国王でしたが、国王も予想していなかった事が起こります。なんと、行き場を失くしたイケメンたちが自分たちの国を作り、イケメン王国を建国したのです。
イケメン王国とは文字通りイケメンの国です。女の子はイケメンに飢えているので、皆が望んで亡命し始めました。
「どういうことじゃ! 国から女の子が消えていくぞ」
王様は御立腹の様子です。
「隣にイケメン王国が建国され、我が国の女の子はイケメン王国に亡命している模様です」
秘書は報告しました。
「なんじゃと。そんな事が」
項垂れる王様です。
「大丈夫ですか?」
「しばらく考えさせてくれ」
なんと、王様は秘書に時間を与えてしまいました。王様が休憩している内に、秘書も亡命してしまいました。王様は行き場のない怒りに燃えます。
「女の子が……女の子が!!」
時間が経つにつれて、国の女の子は全て亡命してしまいました。女の子はイケメンが大好きなのです。ブサイクしかいない国に用はありませんでした。
やがて、二つの国は『イケメン王国』と『ブサイク王国』と呼ばれるようになりました。どちらが人気のある国か、言う必要もありません。