表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

童話

イケメンを永久追放せよ

作者: 千路文也


 とある国にイケメンが嫌いな国王がいました。彼は身も心もブサイクな王様で、身勝手な法案を成立させたりして国民の反感を買っています。


 この日もそうでした。国王は秘書と話していました。秘書は国中で一番の美少女であり、彼女とは肉体関係でもあります。


「イケメンが憎い。心の底から憎い」


 不細工な王様は言いました。国民を侮辱する身勝手な発言です。


「何故ですか?」


 美少女の秘書は指で眼鏡を持ち上げながら問いました。


「ワシより容姿が整っている顔は許せないからじゃ。ただし、女は別物じゃが」


 そうなのです。王様は女の子が大好物で、他にも肉体関係になっている女の子は大勢いるのです。


「そうですか」


 美少女の執事は、あまり関心が無いようです。


「お前はイケメンは好きか?」


 王様は迫真の表情で問いました。


「いいえ、私もイケメンが嫌いです」


 これは嘘でした。美少女はイケメンが大好きで、イケメンには目がありません。しかし、国王の機嫌を損なえば粛清されるかもしれないので、嘘を言うしかありませんでした。


「そうか。そうか。それで、ブサイクは好きか?」


「ブサイクは大好きです」


 これも嘘でした。美少女は金払いの良い王様と仕方なく寝ているだけです。


「やはりお前は最高の執事じゃ。お前のために特別な法を作ってやろう」


「特別な法ですか?」


「左様。イケメンを永久追放する法じゃ」


「…………」


 美少女は言葉を失いました。目の保養がなくなるからです。それでも、王様には逆らえないので作り笑いをしてごまかしています。


「お前の笑顔を見れて嬉しいよ。さっそく議会に提出しよう」


 王様は議会に法案を提出しました。王様はイケメンが嫌いなので、議員も全員ブサイクです。議員もイケメンを嫌っている人が多く、法案はすぐに可決されました。これにより、国に住むイケメンは全員国外追放となるのです。


「イケメンがいるぞー!!」


 さっそくブサイクな住民は告げ口しました。イケメンに指を差すと、警察が飛んできて、イケメンを羽交い絞めにしたのです。イケメンは暴れますが、抵抗もむなしく国外追放となりました。


「イケメン狩りだー!!」


 ブサイクは率先してイケメンを狩猟しました。少しでも顔のパーツが整っている者を国王の元に連れていき、イケメンと認定された者は国外追放となり、イケメンを連れてきた者には貴重な宝石が授与されました。


 こうしていくうちに、イケメンは次々と姿を消し、国にはブサイクな男しかいなくなりました。そんな国の現状を見て、国王は玉座に座ってゲラゲラと笑っています。


「最近は全然イケメンを見ておらんの」


「そうですね」


 なんと、国民の半分はイケメンでした。よって、国民の半分がいなくなったのです。


「愉快じゃ愉快。これからはブサイクが天下を取る時代じゃ」


 自信満々の国王でしたが、国王も予想していなかった事が起こります。なんと、行き場を失くしたイケメンたちが自分たちの国を作り、イケメン王国を建国したのです。




 イケメン王国とは文字通りイケメンの国です。女の子はイケメンに飢えているので、皆が望んで亡命し始めました。


「どういうことじゃ! 国から女の子が消えていくぞ」


 王様は御立腹の様子です。


「隣にイケメン王国が建国され、我が国の女の子はイケメン王国に亡命している模様です」


 秘書は報告しました。


「なんじゃと。そんな事が」


 項垂れる王様です。


「大丈夫ですか?」


「しばらく考えさせてくれ」


 なんと、王様は秘書に時間を与えてしまいました。王様が休憩している内に、秘書も亡命してしまいました。王様は行き場のない怒りに燃えます。


「女の子が……女の子が!!」


 時間が経つにつれて、国の女の子は全て亡命してしまいました。女の子はイケメンが大好きなのです。ブサイクしかいない国に用はありませんでした。


 やがて、二つの国は『イケメン王国』と『ブサイク王国』と呼ばれるようになりました。どちらが人気のある国か、言う必要もありません。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

宜しければ【評価】【感想】【お気に入り登録】をいただけると嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 街や村なら兎も角、王様が生きてるうちに新たな国を建国出来るって凄くねww
[一言]  最初のほうは自分の感情ですか?すみません、失礼なこと言ってしまいました。  前作の『視聴者と生公論』同様、勢いがあってとても読みやすく、なかなか面白い内容でした。  頑張ってください! …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ