6.話しました。前編。
「それで、どーしてこうなっちゃったのか、説明してほしいんですけど」
ジト目であたしが言うと、浜野さんが苦笑いをした。
「いや~、まあ……ねえ?」
「誤魔化されませんから。そんな顔されても」
「や、誤魔化す気はないんだけど……うちの子が申し訳ない。てっきり手順は踏んでるものと……え~」
「手順も何も、あの日初めて聞かされましたよ、あたしがタラちゃんの花嫁候補だなんて!」
魔王城の庭。のどかに小鳥がさえずる声が聞こえる。そんな小鳥の歌声をBGMに、美しい花々が楽しめる東屋で、あたしと浜野さんは向き合っていた。
後ろからあたしをがっしり抱き込んで離さない、タラちゃん込みで。
「何とかしてくださいよ、これ! なんなんですか。ついて回られるし、抱きつかれるし、匂いかがれるし、舐め回されるし、変態にもほどがあるって、だから舐めるな~~~~!」
べろりと首筋をなめてきたタラちゃんを、ばこっと殴る。しかしタラちゃんはあきらめない。ぎゅうぎゅう腕の力を強めてくる。
「ぐえ、痛い痛い、痛いって!」
「離しなさい、タラチ! 彼女を殺す気ですか!」
あたしの様子に慌てた浜野さんが言い、手を伸ばしてべしっと角を叩いた。ぐう、と妙な声がして、腕の力が弱まる。
「ああ、透子ちゃん、魔族の弱点、角だから。絶対的な弱点ってわけじゃないけど、びっくりさせるぐらいはできるからね? ほら、タラチ、離しなさい! 女性への礼儀はどこへ行った?」
恨めしげに浜野さんを見ていたタラちゃんは、しぶしぶとした感じで、あたしから腕を離した。
その代わり、体をくっつけてきたけど。東屋の椅子が、なんかぎゅうぎゅうな状態に。
「犬か」
「似たようなものだね」
思わすこぼしたあたしの言葉に、浜野さんがうなずいた。
「サザエの母方の祖先に、炎狼がいたそうだから。タラチにもその形質が出てるらしいよ。目が赤いでしょ」
「へえ、そう……って、ワンコ入ってるの、タラちゃん!?」
だからか。だから、匂いかがれたりしたのか。
「でもなんで、こんなにくっついて……ちょっと、タラちゃん! 説明してもらえない? どうしてあたしが、あんたの嫁候補なのよ!」
するとタラちゃんは、傷ついたような顔をした後、驚愕の言葉を放った。
「最初に申し込んできたのは、トオコの方ではないか」
なんですと?
「あたしが、いつ」
「初めて出会った時だ。そなたは吾に、婚姻の申し入れをしてきた」
なんですと!?
「魔族の王たる吾に対し、一歩も引かず。堂々たる申し入れであった」
……。
「なんですと~~~~っ!!???」




